■一撃!対振り飛車へなちょこ急戦 |
マイナビ将棋BOOKS 一撃!対振り飛車へなちょこ急戦 |
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著者 | Sugar |
出版社 | マイナビ出版 |
発行年月 | 2024年4月 |
ISBN | 978-4-8399-8209-6 |
定価 | 1,848円(10%税込) |
ページ数 | 318ページ |
本の高さ | 19cm |
[総合評価] | A |
難易度 | ★★★★☆ |
対象棋力 | 有段向き |
図面 | 見開き4〜5枚 |
内容 | (質)A(量)A+ |
レイアウト | A |
解説 | A |
読みやすさ | A |
【本の内容】 |
序章 へなちょこ急戦とは | 10p |
第1章 対三間飛車 ・最序盤で意識したいこと [1-1]基本図から△5二金左 @素直に応じる△4五同歩 Aカウンター狙いの△3五歩 B数で受ける△4三銀 [1-2]基本図から△4三銀 @いちばん自然な△4五同歩 A△3五歩の反発 B受けに徹する△2二飛 [1-3]基本図から△2二飛 @桂を取りにいく△4四歩 Aしっかり受ける△3二金 B最後の砦、△6四角 [1-4]三間飛車穴熊対策 @うかつな△4二銀 A穴熊を完成させる△7一金 [1-5]後手番の場合 ・対三間飛車のまとめ |
110p |
第2章 対四間飛車 ・基本図までの注意点 後手の速攻策@ △4五歩 後手の速攻策A △5四銀 対四間飛車の基本図 [2-1]基本図から△4三銀 @玉を固める△5二金左 A右辺に手厚い△3二金 [2-2]基本図から△5二金左 へなちょこ急戦改 へなちょこ急戦act2 [2-3]四間飛車穴熊対策 へな急腰掛け銀 ▲4五歩速攻作戦 [2-4]後手番の場合 ・対四間飛車のまとめ |
112p |
第3章 対中飛車 ・対後手中飛車の基本図 [3-1]基本図1から△5二飛 [3-2]基本図1から△3二金 @苦労の多い△4四角 A中飛車にしにくい△2二角 [3-3]後手5四歩型 ・対後手中飛車のまとめ ・対先手中飛車の基本図 [3-4]基本図2から▲5六銀 [3-5]基本図2から▲3八玉 [3-6]基本図2から▲7八金 ・対先手中飛車のまとめ |
60p |
第4章 対向かい飛車 ・序盤の駒組み [4-1]基本図から△5二金左 [4-2]基本図から△3二金 ・対向かい飛車のまとめ |
20p |
・【コラム】(1)戦法名の由来 (2)自己紹介 (3)YouTuberとしての生活 (4)不思議な縁 (5)お気に入りの時間 ◆内容紹介 本書で紹介する戦法は、単純明快な駒組みから速攻を繰り出して、振り飛車を一気に攻略するものです。 その名も「へなちょこ急戦」!! ……弱そうな名前ですが、頼りないのは名前だけ。一度覚えてしまえば、勝ち星を量産できる対振りのドル箱戦法です。 著者はYouTuberのSugar氏。本戦法の創始者で、急所を知りつくしています。 ぜひ本書を読んで、「へな急」をレパートリーに加えてください。 |
【レビュー】 |
「へなちょこ急戦(へな急)」の戦術書。 |
序章は、「へなちょこ急戦とは」。 角道を止めた振り飛車に対し、最小限の駒組で急戦を仕掛ける作戦である。〔下図〕がその一例。 ・どの振り飛車に対しても、▲3七桂〜▲4五歩の仕掛けを狙う。 ・必ず右桂が捌ける。(→将来の端攻めを狙える) ・囲いは舟囲い。 ・5筋の歩は保留する。(※対四間飛車では後から突く) ・AIの評価値も良く、すでにプロ公式戦でも登場している。 「舟囲いの薄さで逆転負け」がよくあるのが実戦的な弱点。なので、本書では形勢が良くなってから勝ち切るまでもしっかりと解説していく。 |
第1章は、「対三間飛車」。 ・▲3六歩は早めにつく。居玉のまま突いてもOK。 ・玉側の端歩は突いておく。中盤以降の端攻めで必要となってくる。(へな急では桂歩の入手がしやすく、端攻めが重要) ・▲4六歩〜▲3七桂で駒組完了。〔下図〕 ・飛角桂歩で攻めをつなげる。 (1)△5二金左には▲4五歩と仕掛ける。〔下図〕(もう1手待つと仕掛けにくくなる) @△同歩▲2四歩△同歩▲3三角成△同銀▲4五桂… 対抗形の急戦らしい激しい寄せ合いになる。 A△3五歩… 三間飛車からの怖い反撃。桂を敢えて取らせて右銀で押さえ込む変化(「モリモリ銀」)と、一直線に斬り合う変化がある。 B△4三銀▲2四歩△同歩▲4四歩△同銀▲2五歩… 継ぎ歩攻め。出現率が高く、居飛車が分かりやすい。 (2)△4三銀にはやはり▲4五歩と仕掛ける。〔下図〕 4筋を厚くしてるが、あたりが強くなっている。 @△同歩▲2四歩△同歩▲3三角成△同桂▲2四飛… A△3五歩▲同歩△4五歩▲3三角成△同桂▲3四歩… B△2二飛▲4四歩△同銀▲5六歩〜▲5七銀… △2二飛で受けに徹してきたら、銀も繰り出して第2ラウンド。 (3)△2二飛にも▲4五歩と仕掛ける。以下△同歩▲同桂△8八角成▲同銀。〔下図〕 @△4四歩▲4三歩… A△3二金▲2四歩△同歩▲4四角… B△6四角▲7七角… △2二飛と先に受けられていても、仕掛けは成立する。 (4)三間飛車穴熊対策 穴熊は組みあがるのに手数がかかるので、美濃囲いよりもむしろ仕掛けやすい。基本的な駒組みと仕掛け方は同じ。〔下図〕 @△4二銀▲4五歩… A△7一金▲4五歩△同歩▲2四歩△同歩▲4五桂… 対穴熊では、後手から角交換させるのが良い。 ただし、対穴熊では端攻めがない(まだ端を詰めていない)ので、中盤の攻め方にはひと工夫が必要。飛車の成り込みか、▲5三桂成のどちらかを実現させよう。 (5)後手番の場合 後手番でもへな急の駒組は同じ。〔下図〕 先後の1手の違いは意識すべきだが、だいたい△6五歩の仕掛けができる。仕掛けに自信がなければ、持久戦に切り替えて、左美濃や居飛穴に組んでもよい。 |
第2章は、「対四間飛車」。 四間飛車は▲4五歩の仕掛けにやや強いが、それでも「へな急」は4筋から仕掛けていく。 ・相手が飛車を振ったら▲3六歩。 ・対四間では、▲3七桂〜▲4六歩の順で。四間側からの速い動きを警戒する。 ・後手の速攻策は大丈夫。 ・△4三銀型か△3二銀型かで指し方を変える。 ・対四間では、攻め筋をつくるために5筋の歩を突くべし。 ●後手の速攻策@ △4五歩 ▲4六歩と突く前に△4五歩〔下図〕と来られたら、角交換せずに▲5六歩と突いておく。後手の歩交換に乗じて▲4六歩〜▲5五歩と5筋位取りにするのがよい。 ●後手の速攻策A △5四銀(玉頭銀) 後手が「玉頭銀」〔下図〕で来たら、すぐに▲4五歩と仕掛けよう。ただし、直線的な捌き合いは避け、▲4六歩と桂を支える手をしっかり覚えよう。 (1)基本図から△4三銀 △4三銀には、へな急らしい仕掛けができる。〔下図〕 @△5二金左▲5六歩… 2筋継ぎ歩攻めは実戦的に勝ちやすいが、正確に対応されると先手が良くならない。「へな急時差仕掛け」を狙って、いったん▲5六歩〜▲6八金上〜▲1六歩と駒組みを進めよう。振り飛車陣に隙ができたら一気に仕掛ける。 A△3二金▲4四歩… △3二金は四間側の本気の守り。一気の攻略は難しいが、進展性に乏しいので、陣形に隙ができるのを待とう。例えば、▲4六歩で桂跳ねの土台を確保して、△5四歩を待ってから▲4五桂と跳ねていく。 (2)基本図から△5二金左(△3二銀型) △3二銀型〔下図〕は、居飛車の早仕掛けを阻止する形。 確かに▲4五歩からの仕掛けはできず、持久戦へのスイッチもあまりメリットがない。 この場合、別の仕掛けを狙う。有力策は2つ。 @へなちょこ急戦改 ▲6八金上〜▲4七銀〜▲6六角〜▲8八銀〜▲7七桂から地下鉄飛車を狙う。〔下図〕 後手が地下鉄飛車を警戒した駒組みなら、▲5七角〜▲2四歩〜▲4五歩と右辺から仕掛ける。〔下図〕 Aへなちょこ急戦act2 5筋位取り〔下図〕から▲5六銀〜▲4五歩と打開を図る作戦。 あくまで囲いは舟囲いのままで行く。有力だが、仕掛けが複雑で居飛車がミスしやすいのが難点。繰り返し読み込んで指し手の意味を理解しよう。 ●後手、5筋位取りを拒否 △5四歩〔下図〕と5筋位取りを封じてきた場合は、へな急改(地下鉄飛車)にするか、△6四歩を待ってから▲4五歩と仕掛けるのが有効。 (3)四間飛車穴熊対策 四間穴熊には「へな急改」「へな急act2」も有効だが、さらに対四間穴熊専用の作戦が2つある。 @へな急腰掛け銀 シンプルな舟囲い+腰掛け銀〔下図〕から▲4五歩と仕掛ける。 狙いは角交換ではなく、▲7七桂!右桂と連動して5三を狙うだけでなく、端攻めも狙っている。端攻めで桂or香が手に入れば、今度は右辺の攻撃に使える。 A▲4五歩速攻作戦 対四間穴熊での先手番専用の作戦。端の打診すらもそう略して▲4五歩〔下図〕と仕掛ける。 8三に隙がある瞬間のみ成立する。 (4)後手番の場合 ▲四間△へな急でも基本の駒組みは同じ。振り飛車が1手多く指している分だけ後手にとって条件が良くなる場合もある。 |
第3章は、「対中飛車」。 まずは後手中飛車。△中飛車にもへな急で仕掛けられる。〔下図(基本図1)〕 (1)基本図1から△5二飛 後手が飛車を振った途端に、いきなり▲4五桂!〔下図〕と居玉のまま仕掛ける。 機を見て▲5六歩!と居飛車側から5筋をこじ開ける。桂損〜銀損と駒損が拡大しても、いつの間にか先手勝勢という恐ろしい筋がある。 (2)基本図1から△3二金 先手の仕掛けを警戒して△3二金にも、▲3五歩△同歩▲4五桂〔下図〕と仕掛けられる。 @苦労の多い△4四角 3筋の突き捨てを入れたのは、△4四角に飛車先交換から▲4四飛と切ってしまうため。 ▲5六歩と居飛車側から5筋をこじ開ける手は常に視野に入れておこう。 A中飛車にしにくい△2二角 △2二角には、2筋歩交換。〔下図〕 後手が中飛車に振るなら、5筋の突き上げで位を奪回しよう。 後手がおとなしく△2三歩と打ってくるなら▲3四飛と歩の裏に潜り込もう。この展開は結果的に相居飛車になりそう。 B△5四歩型 後手が5筋の位を取らずに中飛車に振るなら、へな急の仕掛けの形を作って待機し7、△5五歩の瞬間に▲4五桂〔下図〕と仕掛けられる。 ずっと角道を止めてこないなら、玉型を安定させてから▲2四歩〜▲4五桂〔下図〕と角交換を促せばよい。 △4四歩と角道を止めてきても、▲4五歩〔下図〕と仕掛ける。 次に先手中飛車。対先手中飛車では1手の違いが大きい。焦らずに中央を厚くして時機を待つ。〔下図(基本図2)〕 (4)基本図2から▲5六銀 玉寄りより先に▲5六銀。〔下図〕には、先手陣が安定する前に△6五歩〜△8六歩〜△5四歩と角道をこじ開けて仕掛ける。 (5)基本図2から▲3八玉 先に▲3八玉と玉型を安定させてくる手には、後手も歩調を合わせて△3二玉とし、▲2八玉に△1四歩▲1六歩と端を打診してから▲6五歩〔下図〕と仕掛ける。 (6)基本図2から▲7八金 ▲7八金〔下図〕と急戦を警戒してきたら、持久戦にシフトする。▲7八金型は持久戦では使いにくく、居飛車にとって不満なし。居飛車穴熊を目指そう。 |
第4章は、「対向かい飛車」。 対向かい飛車では、後手が角道を止めるまでは陣形整備を続ける。▲3六歩よりも▲4六歩〜▲4七銀を優先し、△4四歩を見てから▲3六歩とする。〔下図(基本図)〕 (1)基本図から△5二金左 △5二金左は受け重視でカウンター狙い。対向かい飛車では、▲3七桂のあと▲2九飛も入れてから仕掛けよう。〔下図〕 △6四銀型にはすぐ仕掛けられないので、銀を引かせてから▲4五歩と仕掛けよう。〔下図〕 (2)基本図から△3二金 △3二金は、飛車先逆襲を狙っている。先手は先ほどと同様に▲3七桂〜▲2九飛で待ち、△2四歩の仕掛けに▲4五歩〔下図〕とカウンターを合わせよう。 後手が△2四歩の仕掛けを見送って△6四歩〔下図〕なら、持久戦にしてもよいが、仕掛けを狙うのもよい。金無双にして待機し、△7四歩を見てから▲4五歩と仕掛けよう。 |
〔総評〕 本書を読んで実戦で「へな急」を試し始めているが、思った以上に勝ちやすいと感じている。序盤で時間を使う必要がなく、難しい終盤戦に時間を取っておけるのが自分に合っているようだ。 本書の発売告知で「へな急」を知ってから、まずSugar氏のYouTubeで勉強して本書を読んだ。動画だと流れがダイナミックに分かるし、書籍では思想や考え方がしっかり分かるように書かれていたので、どちらか一方ではなく、両方観る(読む)のが良いだろう。 ただし、本書は320pとかなりのボリュームがあって、まず読みこなすのは大変。仕掛けが成功してから終盤で勝ちきるまでの部分に多くのページが割かれているので、「へな急」初心者の方はまず仕掛け部分だけをピックアップして先にマスターし、実戦で試して、分からなくなった変化を後から読むようにすると、効率よく「へな急」を理解できると思う。 これまで対振り飛車の作戦に悩んでいた居飛車党にとって、試す価値の高い作戦だ。 (2024Apr17) 【雑感】(駄文) へな急を知った時の私の気持ち。 野球漫画『ドカベン』で、不知火が山田太郎の打撃を封じれず、「速球はダメ、変化球はキレが悪いとホームランボール、どうすればいいんだ…」と悩んだ挙句、「超遅球」という必殺技を開発した時のような、目覚めの感覚を感じました。 ※誤字・誤植等(初版第1刷・電子版ver1.00で確認) p308棋譜・本文(2か所) ×「△7三銀」 ○「△7三銀引」 |