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マイナビムック将棋世界Special愛蔵版 高校生二冠 藤井聡太 ─完全収録!第61期王位戦、第91期ヒューリック杯棋聖戦─ |
[総合評価] A (本誌との重複に注意) 難易度:★★★★ 〜★★★★☆ 図面:見開き2〜5枚くらい 内容:(質)A(量)A レイアウト:B+ 解説:A 読みやすさ:B 有段者向き |
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【著 者】 将棋世界編集部 | ||||
【出版社】 日本将棋連盟/発行 マイナビ出版/販売 | ||||
発行:2020年9月 | ISBN:978-4-8399-7453-4 | |||
定価:1,320円(10%税込) | 240ページ/21cm |
【本の内容】 |
※可能な限り、現物の順番通りに記載しました。「目次」の掲載順とは異なります。 ・〔photo〕 第91期ヒューリック杯棋聖戦=6p(カラー) ・〔photo〕 第61期王位戦=6p(カラー) ・藤井聡太『将棋世界』表紙コレクション=3p(カラー) ・藤井聡太二冠 記者会見一問一答=2p ・第91期ヒューリック杯棋聖戦 トーナメント表=1p ・第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負 第3局、第4局(自戦解説=藤井聡太、記=鈴木宏彦)=16p ・第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負 第1局(記=小暮克洋)=6p ・第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負 第2局(記=今井和樹)=8p ・棋聖戦棋譜解説(石田直裕五段)=12p ・棋聖戦将棋めし=1p ・第61期王位戦 挑戦者決定リーグ表・予選トーナメント表=1p ・第61期王位戦七番勝負 第1局(記=小暮克洋)=6p ・第61期王位戦七番勝負 第2局(記=住吉薫)=12p ・第61期王位戦七番勝負 第3局(記=大川慎太郎)=6p ・第61期王位戦七番勝負 第4局(記=大川慎太郎)=12p ・王位戦将棋めし=1p ・王位戦棋譜解説(大石直嗣七段)=11p ・藤井聡太二冠・データ大分析(文=相崎修司)=11p+2p ※同時発売の『写真で追う藤井聡太 最年少二冠までの軌跡』と内容の重複があります。 ・藤井聡太、将棋世界名場面セレクション −新四段誕生(2016年11月号より)=1p(カラー) −現役最年長・最年少対決 藤井聡太四段 デビュー戦を飾る(2017年3月号より)=2p(カラー) −藤井聡太四段 新記録の29連勝達成!(2017年9月号より)=3p(カラー) −藤井聡太七段の昇級昇段を祝う会(2018年8月号より)=1p −藤井聡太七段 史上最年少新人王(2018年12月号より)=1p(カラー) −第12回朝日杯将棋オープン戦決勝 「勝率8割の激突!藤井、圧巻のV2」(2019年4月号より)=1p(カラー) −藤井聡太七段 タイトル初挑戦(2020年8月号より)=1p(カラー) −ドキュメント 藤井聡太四段 -史上最年少棋士はいかにして生まれたか-(文・構成=鈴木宏彦)(2017年1月号より)=12p −AbemaTV特別企画 藤井聡太四段炎の七番勝負 「脅威の新人、藤井聡太 6勝1敗でトップ棋士を圧倒」(2017年6月号より)=9p −〔インタビュー〕藤井聡太四段 「十四歳の地図」(構成=北野新太)(2017年7月号より)=7p −〔ロングインタビュー〕藤井聡太四段 「夏、十四歳の声」(構成=北野新太)(2017年9月号より)=10p −第11回朝日杯将棋オープン戦 「藤井聡太 新伝説の始まり」(2018年4月号より)=9p −〔ロングインタビュー〕藤井聡太七段 「隘路を抜けて」 -ルーキーイヤー回顧-(構成=北野新太)(2018年7月号より)=12p −第12回朝日杯将棋オープン戦準決勝・決勝 「藤井聡太、圧巻の2連覇」(文=渡部壮大)(2019年5月号より)=3p −第16回詰将棋解答選手権戦・チャンピオン戦 「藤井聡太七段、逆転優勝で5連覇」(写真・文=相崎修司、渡部壮大)(2019年6月号より)=7p −谷川浩司の見た藤井将棋 「藤井聡太17歳、最強リーグに挑む(前半)」(語り=谷川浩司九段、構成=野間俊克)(2020年1月号より)=8p −谷川浩司の見た藤井将棋 「藤井聡太17歳、最強リーグに挑む(後編)」(語り=谷川浩司九段、構成=野間俊克)(2020年2月号より)=8p ・【コラム記事】藤井聡太 好シーン(1)〜(5)=計5p ・〔photo〕藤井聡太『詰将棋解答選手権』フォトコーナー=2p(カラー) ・藤井聡太と詰将棋=3p ◆内容紹介 弱冠18歳、史上最年少二冠に輝いた最強高校生・藤井聡太二冠のメモリアルムック。 最年少タイトル獲得となった第91期ヒューリック杯棋聖戦、そして瞬く間に二冠に駆け上がった第61期王位戦は予選から番勝負まで完全収録。タイトル獲得までを詳細にたどり、魅力ある藤井将棋をご堪能いただけます。 特に棋聖戦第3局、第4局は藤井聡太二冠本人による自戦解説。その手を決断するに至った経緯、局面の形成判断、そのときの心情まで、生の声を収録しました。 ほかに藤井二冠が達成した数々の記録を紹介するほか、これまで将棋世界で掲載してきた藤井棋聖に関する名シーンを収録。四段昇段から最年少タイトル挑戦に至るまでを、厳選した記事で振り返ることができます。 今回の名勝負を堪能したい方、これまでの藤井聡太の活躍を改めて追いたい方など、将棋ファンにも藤井聡太ファンにも満足いただける一冊です。 |
【レビュー】 |
藤井聡太の二冠(棋聖・王位)獲得を特集したムック。メインコンテンツは観戦記と棋譜解説。 藤井が棋聖を獲得し、続けて王位も獲得して二冠になったことは、社会的にも大きく取り上げられた。また、ワイドショーやニュースでも将棋の手の内容自体が取り上げられたが、一般人にはなかなか手の意味は伝わりにくく、コメンテーターや解説の棋士は、「他の○○に例えると、△△くらいすごいことなんです」という表現になることが多かった。 本書は、棋譜の内容が分かる人(主に有段者)に向け、棋譜をしっかりと解説することを中心として、藤井の二冠獲得を全般的に取り上げたムックとなっている。 本書の内容を簡単に紹介していこう。 〔概要〕 ・サイズはA5。(いつもの『将棋世界』本誌と同じ) ⇒以前の「将棋世界Special」のようにB5サイズかと思っていたので、ちょっと意外でした。 ・平綴じ。 ・構成自体も、いつもの『将棋世界』とよく似ている。特集の順番ではなく、各記事が割とバラバラに入っている。 −目次はp20〜p21と見つけにくい場所にある。また、なぜかページ順ではない箇所がいくつもある。なぜわざわざ順番を入れ替えているのかは謎。 【巻頭カラー】 ・〔photo〕 第91期ヒューリック杯棋聖戦 ・〔photo〕 第61期王位戦 −棋聖戦五番勝負、王位戦七番勝負の写真を掲載。同時発売の『写真で追う藤井聡太 最年少二冠までの軌跡』(以下、『写真集』)と同じ写真もいくつかあるが、微妙に違うものや、「写真集」にはないものも。 ・藤井聡太『将棋世界』表紙コレクション −これまでの『将棋世界』で、藤井聡太が表紙を飾った号を列挙。ショートコメント付きで、15号分掲載されている。 【棋聖戦特集】 ・トーナメント表 −藤井だけでなく、第91期の全トーナメント表を掲載。 ・第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負 第3局、第4局 −基本的には鈴木宏彦氏による観戦記。文中の解説コメントが藤井によるもの。 ・第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負 第1局 −小暮克洋氏による観戦記。藤井・渡辺双方のコメントを引用している。脇システムは準備不足でしたか。 ・第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負 第2局 −今井和樹氏による観戦記。先手の米長流急戦矢倉に対し、△5四金と△3一銀が大きな話題を呼んだ一局。こちらは渡辺のコメントがほとんど。 ・棋聖戦棋譜解説 −藤井の1次予選から挑決までの11局を石田直裕五段が解説。各1p(挑決のみ2p)で、棋譜の総譜と、急所の手ごとにショートコメントを入れる形式。 ・棋聖戦将棋めし −予選、決勝トーナメント、五番勝負で藤井が選んだメニューの一覧表と、五番勝負のメニューの写真。モノクロなので、「おいしそう感」はイマイチ。同じ写真が写真集の方にもカラーで掲載されている。 【王位戦特集】 ・藤井聡太二冠 記者会見一問一答 −王位を獲得して二冠になったときの、2020年8月20日の共同記者会見から抜粋。モノクロ写真付き。 ・第61期王位戦 挑戦者決定リーグ表・予選トーナメント表 −藤井だけでなく、第61期の予選の全トーナメント表と、挑決リーグ紅組・白組のリーグ表を掲載。 ・第61期王位戦七番勝負 第1局 −小暮克洋氏による観戦記。角換わり腰掛け銀で、△4四歩型から藤井が攻め切った将棋。戦術書にはたいてい「△4四歩型は先攻されて後手が面白くない」とされており、木村が敢えて誘い込んだものの、チャンスがなかった。 ・第61期王位戦七番勝負 第2局 −住吉薫氏による観戦記。相掛かり▲6八玉型で、「藤井の大逆転勝利」とされる将棋だが、「指運だった」との見解が示されている。 ・第61期王位戦七番勝負 第3局 −大川慎太郎氏による観戦記。矢倉▲6七金左型で、藤井が終盤で珍しく大きな読み抜けがあったものの、リカバリーした将棋。(その辺は比較的サラッと書かれている) ・第61期王位戦七番勝負 第3局 −大川慎太郎氏による観戦記。相掛かり▲6八玉型で、封じ手の△8七同飛成(銀を取った)が大きな話題になった一局。 ・王位戦将棋めし −予選、決勝トーナメント、五番勝負で藤井が選んだメニューの一覧表と、五番勝負のうち第2局2日目と第3局2日目のメニューの写真。なぜか王位戦の方はかなり割愛されている…。(なお、写真集の方には4局8食分の写真が全てカラーで載っている) ・王位戦棋譜解説 −藤井の予選、挑決リーグ白組、挑決までの10局を大石直嗣七段が解説。形式は棋聖戦の方と同じ。 【その他の記事】 ・棋聖戦・王位戦の、予選からの藤井の全対局(28局)のスナップショット(モノクロ)が、時系列順に1ページにまとめられている。(p22) ・「藤井聡太 好シーン」は、1p×5のコラム形式で各記事の合間に挟まれている。これまでの藤井の好局のうち、本編で取り上げていないものを図面とともに解説。(棋譜はない) ・藤井聡太二冠・データ大分析 「数字で見る藤井聡太」、「序盤4手チャート」、「藤井聡太二冠公式戦全成績」、「藤井聡太年譜」 −藤井の勝率や年少記録などを他の棋士と比較していく。 −同時発売の写真集と内容は同じ。文体は少し調整してある。ただし、本書では「序盤4手チャート」が追加されており、藤井の序盤の指し手の採用率と勝率が添えられている。 −「藤井聡太年譜」のみ、最終ページ直前に分離されている。 ・藤井聡太、将棋世界名場面セレクション −「将棋世界」のバックナンバーから、藤井の記事をセレクトして再掲。カラー記事は、おおむねカラーのまま掲載。 −初めて読む人は、p21の目次を見ながら、時系列順に読むとよいかも。(なぜか順番はときどきバラバラ) −毎号買っている人にとっては、本書の約半分はバックナンバーからの再掲記事となる。当時を思い出しながら再読しましょう。 −「脅威の新人」は、誤字ではないんですよね。(普通は「驚異の新人」かと) ・藤井聡太『詰将棋解答選手権』フォトコーナー −2010年(7歳)から2019年までの詰将棋解答選手権の写真たち。可愛い… ・藤井聡太と詰将棋 −「将棋世界」の詰将棋サロンに掲載された藤井の詰将棋作品を4作紹介。「藤井聡太の詰将棋驚愕エピソード」も列挙されている。後半がやけに面白い(笑) 〔総評〕 「将棋世界」の棋譜解説は、中継時よりも検討を進めたものや、棋士本人に話を訊いたものもあるため、クオリティが非常に高い。ただし、その分だけ難易度も上がっており、基本的には有段者向けの記事となっている。 本書が他の「二冠獲得ムック」と大きく異なる点は、棋聖戦・王位戦の全8局をしっかりとした観戦記でカバーしているところと、その他の将棋も棋譜を数多く交えて専門的な解説をしているところである。写真もたくさんあるが、基本的には「将棋の有段者向け」のムックとなる。 他のライト層もターゲットにしたムックでは、将棋の内容をここまで深くは考察しないので、有段者が1冊だけ選ぶなら、本書一択となるでしょう。(※ただし、有段者はおそらく「将棋世界」を定期購読している人が多いと思いますが、本書のほぼ半分は「将棋世界」のバックナンバーからの再掲なので、そこは考慮に入れてください。また、前半の観戦記部分も、似た内容のものが「将棋世界」本誌に載ると思います。評価Aは、単行本として見た場合のものです) 逆に、「将棋の内容はよく分からないけど」という人には、本書は難しすぎると思うので、他を当たった方がいいです。「棋譜は分からなくても、『将棋世界』ならではの写真と文章だけ楽しみたい」のであれば、止めません。 (2020Sep04) |