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■振り飛車の新機軸!初手▲7八飛戦法

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振り飛車の新機軸!初手▲7八飛戦法
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マイナビ将棋BOOKS
振り飛車の新機軸!初手▲7八飛戦法
[総合評価]
B+

難易度:★★★★

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)B
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
上級〜有段向き

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【著 者】 門倉啓太
【出版社】 マイナビ出版
発行:2019年3月 ISBN:978-4-8399-6822-9
定価:1,663円(8%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
第1章 ▲7八飛戦法とは   10p
第2章 対△8四歩の戦い方 第1節 角交換型
第2節 角交換拒否型
第3節 無理やり早石田
64p
第3章 対△3四歩の戦い方 第1節 3手目▲4八玉
第2節 3手目▲6八銀
18p
第4章 相振り飛車 第1節 ▲4八玉型 対 三間飛車
第2節 ▲4八玉型 対 向かい飛車
第3節 ▲6八銀型 対 三間飛車
第4節 ▲6八銀型 対 向かい飛車
70p
第5章 実戦解説 実戦譜1 「▲8五桂ポンが決まる」 対藤森哲也四段戦
実戦譜2 「引き角と戦う」 対木下浩一六段戦
実戦譜3 「長手数の戦いを制す」 対増田裕司六段戦
54p

◆内容紹介
「ある対局の前日、作戦に苦慮していました。夜、布団に入ってからもあれこれ考えていたのですが、そんなときふと『初手▲7八飛』を思いついたのです」(まえがきより)

先手番になり、最初の1手を指しただけで使える戦法。それが「初手▲7八飛戦法」です。 この画期的な作戦は門倉啓太五段が編み出したものですが、はじめは門倉五段以外に使う棋士はいませんでした。そこから作戦の優秀性が徐々に認知されるに連れて、久保利明王将をはじめとするトップ棋士も採用するようになり、今では振り飛車党の一つの有力な選択肢として定着しています。

しかし、▲7六歩〜▲7八飛とするのに比べて、先に▲7八飛とするメリットはどこにあるのでしょうか?初手▲7八飛の将棋をよく見るようになったなぁと思いつつ、その真意はよくわからない、という方は多いのではないでしょうか?

門倉五段は初手▲7八飛には3つのメリットがあるといいます。

@角道を開けたまま戦えること
A相振り飛車で主導権を握れること
B絶対に早石田ができること

以上です。すべてに共通することは決して守勢にならず、常に積極的に戦えるということです。

では、初手に▲7八飛とするとなぜこのような3つのメリットが生じるのでしょうか?それを詳しく解説したのが本書です。

この本で初手▲7八飛戦法をマスターして、ぜひ相手をアッと言わせてください。


【レビュー】
初手▲7八飛戦法の戦術書。

「2手目△3二飛戦法」というものがある。初手から▲7六歩に△3二飛!と振る作戦で、「2手目にまだ未採掘の原石があった」「後手番でも石田流ができる」ということで流行した。2008年に単行本化している。(『2手目の革新 3二飛戦法』)

当時、私は「もしかして…これって先手番でもやれるのでは?」と、初手▲7八飛戦法をしばらく指してみたが、いくつかの変化が解決できず、やめようと思っていたところ、門倉啓太四段が初手▲7八飛を指している実戦譜を週刊将棋で目にした。その将棋は、私の課題局面を解決していなかったが、「プロが指すなら成立しているのだろう」と思った。(が、序盤の課題局面と、持久戦時の作戦が上手く行かずに、しばらく指すのをやめていた)

それが、近年になってトップ棋士が初手▲7八飛を採用するのが見られるようになり(直近だと2019/2/24〜25の王将戦第4局・▲久保△渡辺明、2019/3/6の王座戦・▲藤井猛△松尾、同日の王座戦・▲鈴木△郷田など)、注目が集まっている。トマホークや三間飛車藤井システムなどにより、三間飛車全体の価値が高まったことも背景にあるだろう。

初手▲7八飛戦法は、展開によっては石田流やノーマル三間飛車系を選択できて、さらに3手目▲7五歩やノーマル三間飛車にはない利点がある一方、序盤で乗り越えなければならない壁もいくつかある。本書は、そういった他の作戦とは異なる部分を重点的に解説した本となる。


本書の内容をチャートを添えながら紹介していこう。


第1章は、「▲7八飛戦法とは」

・先手番になれば、初手▲7八飛で戦法が決まる。

【利点1】 角道オープンで戦える
・▲7八飛△3四歩▲6八銀△8四歩▲7六歩で、「△4五角問題」を解消している。
・▲7八飛△8四歩にも角道オープンで戦うことが可能。

【利点2】 相振りでも受け身になりにくい
・従来は3手目▲6六歩でも▲7五歩でも、相振りのときに先手が角道を止めた展開になりやすかったが、▲7八飛△3四歩▲6八銀△3五歩▲7六歩なら角道を止めなくても良い。

【利点3】 必ず早石田ができる
・2手目△8四歩や4手目△4二玉だと、従来は早石田にはできなかったが、▲7八飛△3四歩▲4八玉〜▲3八玉〜▲7六歩や、▲7八飛△8四歩▲7六歩△8五歩▲7七飛!で戦える。(※早石田にしない変化もある)

・共通項は「角道を止めない」。


第2章は、「対△8四歩の戦い方」。▲7八飛△8四歩のときの戦い方を解説する。

(1) 角交換型
角道を止めず、△7七角成には▲同桂と対応する。飛先突破や△4五角問題には、▲6五桂の筋などで対策できている。角交換後の持久戦では、美濃囲いに囲った後に「▲8五桂ポン」を狙うか、▲6六銀-7七桂型を作るか。

(2) 角交換拒否型
居飛車が角交換してこない場合も、先手は角道オープンのまま駒組みを進める。後手が角道を止めれば、▲6六銀型の石田流に組めるのが本戦法のユニークポイント。

(3) 無理やり早石田
▲7八飛に△8四歩▲7六歩△8五歩と連続で飛先を伸ばされても、▲7七飛?!で早石田or升田式石田流に持ち込める。ただし、初見ならまず乱戦になるので、しっかりマスターしておこう。



第3章は、「対△3四歩の戦い方」。▲7八飛△3四歩で、後手が居飛車のときの戦い方を解説する。

2手目△3四歩の場合、すぐに▲7六歩とすると、角交換から「△4五角問題」があるので、3手目▲4八玉〜▲3八玉か、3手目▲6八銀としてから角道を開ける。どちらも有力。

(1) 3手目▲4八玉
8筋が素通しのまま駒組みを進めるが、角交換の筋があればたいてい大丈夫。さらに角道も飛先も放置して▲6八銀〜▲7九金が本戦法特有の指し方。

(2) 3手目▲6八銀
3手目▲6八銀ならすぐに角道を開けられるが、早石田にはできないので注意。

(1)(2)どちらの展開でも、後手からの速攻は無理筋なので、駒組みを進めると第2章の展開に合流していく。




第4章は、「相振り飛車」。▲7八飛△3四歩から、後手が相振り飛車を目指すときの戦い方を解説する。先手は3手目▲4八玉or▲6八銀、後手は△三間飛車or△向飛車で展開が変わってくる。

(1) ▲4八玉型 対 三間飛車
4手目△3五歩の時点では、まだ後手が居飛車か相振りかは分からないので、両対応できる▲5八金左を選択したい。その金上がりを生かすなら▲4六歩〜▲4七金の形を、▲7六歩型(▲7五歩と伸ばしていない)を生かすなら▲8八飛〜▲7五銀の攻めを目指そう。

(2) ▲4八玉型 対 向かい飛車
4手目△3三角からの△向かい飛車には、早めに角交換して△3三同桂に限定させるのがポイント。左銀の自由度で差を付けよう。

(3) ▲6八銀型 対 三間飛車
▲6八銀型の場合、△3五歩にはすぐに角道を開けておく。相振りならさっさと角交換して、▲3八金と1手でスキをなくしておくのが良い。攻撃陣は、向かい飛車+早繰り銀が本戦法での定番。

(4) ▲6八銀型 対 向かい飛車
▲6八銀に4手目△3三角からダイレクト向かい飛車なら、すぐに角道を開けて角交換し、互いに馬を作り合う。後手が角道を止めるなら、すばやく7筋歩交換からガンガン乱戦を仕掛けていこう。



〔総評〕
初手▲7八飛戦法は、1手目で先手の作戦が決まり、おおむね4手までで作戦の骨格が定まるため、本書に出てくる局面の再現率は非常に高い。将棋ウォーズで試してみたところ、序盤が本書の通りになる率は、2手目△3二飛戦法よりもかなり高いように感じた。(もちろん、本書には出てこない2手目△3二飛!や△5四歩!などもあったが…)よって、特に序盤の乱戦や相振り飛車については、本書は大いに参考になった。

一方で、本戦法の初出から約10年が経ち、最近になってトッププロが採用するなど、注目が高まっているのにかかわらず、その背景や展開例については言及がなかったのは少し残念。また、実戦例がいずれも2012年とやや古く、また3局と少ないのも惜しい。いろいろと試行錯誤があったはずだし、この7年間で将棋の価値観も大きく変わったはずなので、失敗例も含めて多くの実戦譜とその変遷を見せてほしかった。

前半2/3は非常に有用なので、評価B+は少し厳しいのだが、Aにはわずかに及ばず、といったところです。



誤字・誤植等(初版第1刷で確認):
p90 ×「第5図以下の指し手B」 ○「第5図以下の指し手C」
p92 ×「第5図以下の指し手C」 ○「第5図以下の指し手D」
p157上段 ×「△7六馬は▲6五銀△9四馬▲9五歩…」 ○「△7六馬は▲6五銀△9四馬▲9六歩…」



【関連書籍】

[ジャンル] 三間飛車・石田流
[シリーズ] マイナビ将棋BOOKS
[著者] 門倉啓太
[発行年] 2019年

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