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マイナビ将棋BOOKS 攻めて勝つ!三間飛車の心得 |
[総合評価] B 難易度:★★★★☆ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:B 有段向き |
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【著 者】 小倉久史 | ||||
【出版社】 マイナビ出版 | ||||
発行:2018年12月 | ISBN:978-4-8399-6800-7 | |||
定価:1,663円(8%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
ノーマル三間飛車の指しこなし方を解説した本。 本書で扱うのは、主に「角道を止める三間飛車」。序盤・中盤・終盤と3つに分けて、ノーマル三間飛車ならではの手筋や考え方など、心得(格言風)を解説していく。特に、三間飛車での居飛車作戦として出現度が高く、強敵の居飛穴をテーマとした局面をかなり多く扱っている。 各章の内容を抜粋しながら紹介していこう。 第1章は、「序盤編 いろいろな三間飛車」。序盤の作戦について解説する。 〔抜粋〕 ・角道を止めない三間飛車の紹介 本書のメインは角道を止めるノーマル三間飛車なので、角道を止めない三間飛車は紹介のみとなる。 ・心得1〜4では、▲4八玉の時点で▲3八銀と美濃囲いに決めて、居飛車の作戦を見極める。 −急戦を感じたら、玉の入城を急ぎ、▲5八金左として角交換後(▲7七同銀)の6七のスキをなくし、桂跳ねには▲8八飛と先に備えていこう。 −ナナメ棒銀系には、▲6七銀で角頭を守る。 −先後での違いにもときおり触れてある。 −▲6七銀や▲8八飛のタイミングには注意。 −居飛穴模様には、攻撃態勢の構築を優先。「トマホーク」を14pにわたって解説している。玉頭銀・端桂・角のニラミを使いこなして、左右を絡めて攻めよう。 −左美濃で妥協してくるなら、▲6七銀から石田流へと組み替えよう。また、△5三銀と浮きあがった形には急戦向かい飛車への転回が、△6二銀と低い形には玉頭銀の揺さぶりが有力。 ・心得5は、相穴熊。漫然と組み合うと作戦負けになりやすいので、袖飛車や石田流から動いていこう。と金を意識し、「飛角は捨てる駒」と心得よう。 第2章は、「中盤編 駒の特性」。駒の特性や手筋、戦い方などを実戦ベースで解説していく。失敗例もある。難易度はやや高めで、★4.0〜4.5程度(アマ三段〜五段くらい)。「中盤編」とあるが、実際は中盤から最終盤までを扱っていく。 〔抜粋〕 ・香を重ね打ちして、端の制空権を握る。戦力を溜めてから一気に攻めよう。 ・桂を持ったら、▲2六桂を考える。 ・中盤以降にじっと端歩を突いて手を渡すのも考えてみる。 ・すぐにと金に成れなくても、垂れ歩は効果的。 ・駒得をしていたら受けている方が楽。受けるときは徹底的に、受け切ったら攻める。 ・居飛穴が未完成なら飛交換を狙う。 ・金の頭を叩いて、一段金の形を崩す。 ・居飛穴の急所は3三X。 ・飛交換後の飛の打ち込み場所は、よく考えて打とう。細かい損得が勝負を分けることもある。 ・石田流からの幽霊角▲9五角と、▲4六角の覗きは狙っていこう。基本的には飛交換を狙う。 ・渋い手の積み重ねが大事。例えば、香を一段目で取らせない▲9八香など。 ・玉の早逃げで1手稼ごう。 ・銀のルートがいろいろあるのは三間飛車ならでは。 −玉頭銀(▲5六銀〜▲4五銀) −角道を止められた場合の▲5六銀〜▲6五銀 −▲5五銀〜▲4六銀(歩越し銀)で相手の右銀を引き付けて四枚美濃を構築するなど。 第3章は、「終盤編 速度計算」。本章も実戦ベースで、1手違いの局面で手を稼いだり、好手を逆転させるコツなどを解説する。 〔抜粋〕 ・金底の歩で竜の横利きをシャットアウトする ・と金で攻める ・端玉には端歩 ・駒得のときは受けに徹する ・受ける時は徹底的に ・▲5九金打で外堀を築く ・桂の王手を掛けられそうなら、玉を早逃げする。さらに、もとにいた場所に▲2八香と打つのが美濃囲いの裏ワザ。 ・美濃囲いでの▲2六歩もぜひ覚えたいワザ。 【総評】 タイトルには「攻めて勝つ」とあり、戦型的には三間飛車が主導権を握ろうとする作戦を多めに扱っていた。特に左銀の使い方や、石田流本組への組み替えからの狙い筋は三間飛車特有の内容なので、参考にしたい。ただし、コーヤン流、真部流、三間飛車藤井システムなどの、もっと攻撃的な作戦は扱いがなかった。 一方、扱っている内容は、丁寧に受けて、しっかり受けてから攻める展開がかなり多かった。「攻める」とは言っても「攻めつぶして勝つ」のはなかなか難しく、ノーマル三間飛車で勝つにはとにかく丁寧に丁寧に指し回す必要があると認識した。 また、タイトルからは「初段前後向けの内容なのかな?」と思っていたが、実戦ベースのせいか難易度は結構高めで、「すでに三間飛車を実戦である程度指している有段者向け」だと思う。そういう人ならば、本書を読んで「あっ、こういうところではこのような考え方で指すのが良かったのか!次からはこうしよう」と目からウロコが落ちたような感覚になるだろう。(実はわたしは20年近く前にこういう三間飛車をよく指していたので、結構参考になりました。) ただ、中盤編や終盤編では、「三間飛車戦で特有の局面」というのはそんなに多く扱われていない印象だった。(※わたしの経験値不足であればごめんなさい。もっと強い人なら「いや、大半は四間飛車では現れないだろ!」と思うかもしれません)逆にいえば、四間飛車をメインで指している人でも、三間飛車に振り直して組み替えるケースも多いので、読んで損はないと思う。 ※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): ・誤字は特に見当たりませんでした。 ・p114〜115限定で、なぜか「詰めろ」のことを「次に詰める手」と表現している。3回も出てくる。 |