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マイナビ将棋BOOKS すぐ勝てる!右四間飛車 |
[総合評価] C 難易度:★★★ 〜★★★☆ 図面:見開き4枚 内容:(質)B(量)B レイアウト:A 解説:B 読みやすさ:B 中級〜上級向き |
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【著 者】 中川大輔 | ||||
【出版社】 マイナビ | ||||
発行:2012年10月 | ISBN:978-4-8399-4478-0 | |||
定価:1,575円(5%税込) | 232ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
△四間飛車vs▲右四間飛車の解説書。 右四間飛車は、「勝てる戦法」である。基本的に自分だけに仕掛ける権利があり、初級〜中級レベルなら圧倒的に勝ちやすい。また、有段者〜高段者レベルでも「最善を尽くして互角」であり、居飛車にも対応できることから、得意戦法にするには一押しの戦法である。似た特性の棒銀と比較しても、かなり勝ちやすいといえるだろう。 本書は、△四間に対する▲右四間の勝ち方を指南した本である。 右四間では、基本は攻め。プロでは、仕掛けずに▲6六歩〜▲6七銀と引いて、固め合いからの作戦勝ちを狙うケースもあるが、本書では基本的に攻めを狙っていく。 【各章の内容】(チャート付き) 第1章は、△四間vs▲右四間+舟囲いの急戦。古典定跡に加えて、中川の独自研究(おそらくp63〜)が追加されている。厳密には先手無理筋の結論が出ているが、ほとんどの変化で先手圧勝形を得られる。逆にこの変化を知っておかないと、四間飛車を指すこともできない。 ▲2五桂に△1五角の有名な変化(p45〜p51)は、『これにて良し? 四間飛車VS急戦定跡再点検』(野秀行,MYCOM,1999)も参照しておきたい。『三浦流右四間の極意』(三浦弘行,木屋太二,MYCOM,2002)にも載っているが、あまり詳しくはない。 p61の「旧定跡」では▲5五桂△4四飛▲6三桂成以下で先手良しだが、実際は▲5五桂△4四飛▲6三桂成△7四飛!がある。本書では後手良しになっているが、『これにて良し?〜』のp216〜p221では本書の変化に加えてずっと詳しく書かれており、互角の形勢になっている。このあたりは比較検討しておきたい。 p63以降の「新定跡」は、▲5五桂に替えて▲9五歩を入れる。この変化で先手良しなら、右四間は急戦だけでいけるはずなのだが…? 第2章は、△四間+銀冠vs▲右四間+居飛穴。右四間急戦(第1章)が無理筋で、相穴熊(第3章)が後手つまらないとなれば、必然的にこの展開になりやすい。 第1節では、後手が高美濃を経由して銀冠に組む展開に絞って解説。なお、後手が△5二金のまま片銀冠を急ぐ展開については触れていない。 第2節では、穴熊完成前に後手が銀交換を挑んで戦いを始める展開。右四間穴熊は組めてしまえば作戦勝ちになりやすいので、後手としてはここに活路を見出したいところ。銀交換のタイミングはいろいろあるが、本節ではp225のS三段戦がベースになっている。 p106参考25図の形勢は、本文中では「後手敗勢」とあるが、後手ももうひとがんばりできそうに思える。激指8六段で検討してみたところ、評価値-82で互角(ごくわずかに後手有利)だった。コンピュータの判断を単純に信用するわけにはいかないが、少なくとも「敗勢」というほど大差ではないと思われる。 第3章は、△四間vs▲右四間の相穴熊。基本的に「相穴熊は、右四間飛車側が作戦勝ちしやすい」(p224)とのことで、実戦例は多くない。右四間側が常に仕掛けの権利を持っているため、後手は反発力のある陣形を取りにくいのが原因だろう。 先手は、後手の左金の位置によって仕掛け方(特に角交換後の打ち込み場所)を変えていくとよい。後手の対策は難しいが、△5二金型で△6五銀と出て銀交換を挑むくらいだろうか? 第4章は、中川八段の実戦譜。プロ公式戦5局と奨励会1局のあわせて6局で、戦型はすべて右四間+居飛穴。このうち、第3局と第4局は矢倉模様の△右四間から先手が5七銀型四間飛車に変化したもので、定跡編には載っていない展開。右四間使いの人は、居飛車戦でも右四間を用いることが多いと思うので、参考にしてほしい。 全体的に、玉側の端の攻防に関する記述が多い。実戦の中盤以降で必ず課題になってくるところなので、何度も並べて感覚をつかもう。 【総評】 全体的な文体が古風で、最近の棋書とは違う雰囲気が漂っている。特に第1章は、まるで『将棋大観』を読んでいるような錯覚さえあった。個々の単語も最近あまり使われないものがあり(「ひっきょう」(p116,p134他)など)、若い将棋ファンには読みにくいかもしれない。 レイアウトにも多少違和感があった。典型的な「マイナビ将棋BOOKS」のレイアウトでは、ページの左側に図面2つで、ページ右上に棋譜部分があるのだが、本書では棋譜部分が上下バラバラになっているので、飛ばしてしまって「あれっ?」ということが何度かあった。 個人的には、「理屈抜きでそういうものと覚えてほしい」(p99)といった類の表現が好きになれない(p99には一応理由は書いてある)。本書の対象棋力は中級〜低段なのだから、難しい部分ほどある程度納得できる理屈で説明してほしい。このあたりは人によって感じ方は違うと思う。 また、中終盤のココセがいくつか目に付いた。p24の△6五銀(直後に角で狙われている)、p82の△4六角(直後に飛で切られている)など。他に替わる手が難しければ、解説を打ち切ってもよいかと思う。 他書の方が詳しくて分かりやすい部分が多かったこともあり、Cにさせていただく。 ただし、右四間視点での実戦譜が載っている本は意外に少ないので、第4章は大いに参考にしてほしい。 ※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): p81 △「第10図以下の指し手」 ○「第10図以下の指し手@」 p87に「第10図以下の指し手A」がある。 p226棋譜 △「△5二金」 ○「△5二金左」 |