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マイナビ将棋BOOKS 最新戦法 マル秘定跡ファイル |
[総合評価] B 難易度:★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 上級〜有段向き |
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【著 者】 村田顕弘 | ||||
【出版社】 マイナビ | ||||
発行:2012年2月 | ISBN:978-4-8399-4185-7 | |||
定価:1,470円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||||||
・【コラム】(1)失敗は成功のもと
(2)修行時代の思い出 (3)オリジナル (4)自信を持って指そう
(5)狙いを持って新構想を試す (6)相振り飛車の思い出
(7)直感やひらめきも大切に |
【レビュー】 |
定跡最前線の解説書。 村田顕弘は「関西若手四天王」の一角(他は豊島将之、稲葉陽、糸谷哲郎)として知られる若手のホープ。棋戦優勝やタイトル挑戦はまだないため、実績面で他の3人に遅れをとっているが、実力は遜色ない。なお、名前が似ている村田智弘(こちらも若手ホープだ)とは特に血縁関係などはないらしい。 本書は、その村田顕が定跡最前線について記した本である。 各章の内容を、チャートと図面を交えながら紹介していこう。 第1章は、△ゴキゲン中飛車vs▲丸山ワクチン。 現在のプロでは、ゴキゲン対策は▲超速が「寡占状態」といえるほどのシェアがあり、丸山ワクチンはやや減っているが、ゴキゲン登場後の長年にわたって指されており、比較的穏やかで、手が広く力を出しやすいため、これからも指されていくだろう。 本章では、「△2二飛からの急戦対策」と「△2二飛+銀冠の作戦勝ち狙い」を解説している。△2二飛と回るためには、▲5三角の打ち込みをケアする必要があるため、後手がいろいろな工夫をしてくる。対して、△2二飛対策として▲3八銀と上がるのが新型である。 第2章は、△四間飛車穴熊vs▲銀冠。廣瀬章人が活躍して、四間穴熊はかなり復権した。 先手は居飛穴で対抗するのも人気だが、本書では銀冠で対抗する。従来のような銀冠では堅さ負けする可能性があるが、〔右図〕のように、▲8五歩と▲9八玉の組み合わせがポイント。銀冠で必須と思われていた▲9六歩は後回しにする。 ▲9八玉は、角交換から飛先突破を狙うときに、玉が負担にならないようにするため。▲8五歩は、▲8六角の余地を作るとともに、すばやく玉頭攻めができるようにするためだ。 |
第3章は、▲石田流vs△居飛車穴熊。石田流対策はホントにいろいろあるが、本書では居飛穴に絞っている。石田流は、序盤から激しい乱戦の変化をたくさん秘めているのだが、本章のような組み方をされると、現状では居飛穴を阻止できないようだ。本章の先手の作戦は3つで、(1)角交換挑戦、(2)美濃囲いでの仕掛け、(3)相穴熊、となる。 第4章は、△一手損角換わりvs▲早繰り銀。最前線は、〔右下図〕のような大石新手▲6六銀だ。この手は、△5五角や△6五歩〜△6四角を阻止している。ただし、8筋歩交換されるので一長一短だ。 第5章は、横歩取り△5二玉型。新山ア流への対抗策として登場してきた。△5二玉型は、オールドファンなら金開きに構えるところだが、最前線では中原囲いと同じように囲い、展開によっては△4一玉型に戻す。 最前線の詳細は、本書とほぼ同時期に出版された『横歩取り必勝ガイド』(稲葉陽,マイナビ,2012.02)が詳しい。本書では、△5二玉の玉頭を直接狙う「5筋位取り」がメイン。 これは村田顕弘のオリジナル戦法だそうで、▲6九玉型と相性が良く、有力だと思う。もともと、△8五飛戦法の初期には、後手(△4一玉型)が先手(▲5八玉型)の玉頭を狙って△5四歩〜△5五歩と伸ばそうとする作戦があったくらいだ。 第6章は、3手目▲6六歩での相振飛車。△穴熊に対して▲矢倉で戦う作戦と、△美濃に対して▲金無双で戦う作戦の2つ。どちらも、従来は先手の囲いの相性が少し悪いとされていたはず。本章ではそれを覆そうとする指し方が解説されている。 第7章は、2手目△3二飛対策の相振飛車。2手目△3二飛は今やトップ棋士も採用する立派な作戦になった。それどころか、△3二飛封じのために、振飛車党に対しては初手▲2六歩と突く風潮まであるらしい。「相手によって手を変えるのは云々」と言っていた時期があったと思うが、時代が変わったものだ。ちなみにアマではよほど対戦が多い相手でない限り、△3二飛は使いたい放題である。 本章では、△3二飛対策を相振りに限定。相振りの形もいろいろあるが、▲向飛車+▲3八金型の急戦調が本章の骨子。持久戦になると進展性がなく、2筋が激薄だが、急戦なら上部も横もしっかりしている。わたしもこの構えでの経験は多いが、ある程度慣れが必要なものの、かなり有力だと思う。 最近の他の「定跡最前線」の本に比べると、やや解説の難易度が下げてあり、また考え方も多く書かれていて分かりやすかった。特に、結果図からの形勢判断や、その後の狙い筋などの解説は充実している。また、本書に書かれている以外の有力な対策についても、現状や考え方に触れてあるのも良かった。 AかBかでかなり迷ったが、下記にあるようなちょっといただけない誤植があったため、「わずかにAに届かないB」とさせていただく。(2012Mar10) ※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): p142棋譜 ×「△8八角成▲同銀△3三桂▲2八飛△2五歩▲2八飛」 ○「△8八角成▲同銀△3三桂▲1六歩△2五歩▲2八飛」 p177 ×「▲8六歩と突いて」 ○「▲8四歩と突いて」 p193第7図 △2五歩と△3六歩は不要。このままだと2筋は二歩。 |