受けの手筋を解説した本。NHK「将棋の時間」で2009年4月〜9月に放送された「橋本崇載の受けのテクニック教えます」から、4月〜7月の内容を加筆・再構成してまとめたもの。
本書の対象棋力は中級〜上級。初歩的な「数の受け」(相手の攻め駒の数に負けないように受け駒を増やす)や「一手前に受ける」(たとえば飛先の歩を切られたとき、垂れ歩をされる前に歩を受ける)などの「受けの原則」はすでにマスターしていることを前提としている。
本書の解説はとても分かりやすい。テクニックや手筋だけでなく、受けの「考え方」や「思想」を噛み砕いて解説している。ときどき格言を交えてある(格言は太字ゴシックで強調されている)のも○。
各節の構成は次の通り。
(1)1ページ目 テーマ図として、各節の代表的な図を掲示
(2)2ページ目 各節テーマに沿った考え方・思想の解説
(3)3ページ目以降 具体例の解説。各節2つ〜5つのサブテーマ。基本的に見開き2p完結だが、2pで足りない場合は4pや6pになる。
各章のサブテーマをすべて書き出しておこう。※印の部分はわたしの補足コメント。
一章 終盤編
・守りの大切さを知ろう
受けの3つのパターン/速度を変える受け
※「持駒を使う」or「玉を逃げる」or「盤上の駒を使う」をここでマスターする。
・切り返して先手を取ろう
大駒をはじく/「中合い」で手番を握る/「連打の歩」で手番を握る
・玉の早逃げをしよう
早逃げの感触を確かめよう/態勢を入れ替える/端に早逃げする手筋/入城の手筋
・底歩の形をつくろう
金底の歩、岩より固し/底歩の天敵/底歩を打つ準備
・相手の玉を利用して守ろう
大駒の威力でピンチ脱出!/絶対にあきらめない
※捨て駒の王手で玉を露出させ、飛角の両取りで敵の拠点を取り除くテクニックを学ぶ。
・犠打で手を稼ごう
銀の犠打/敵玉を利用する犠打/金の犠打/速度計算を見につけよう
・合駒を工夫しよう
歩の合駒でしのぐ/敵の持駒に注意!/大駒で合駒/逆算法で考えよう/「移動合い」でしのぐ
※詰みを逃れて1手稼ぐ、いわゆる「凌ぎの手筋」。
・リスクを恐れず踏み込もう
玉で当たりをかける/大駒の死角を目指す/反則を利用(?)して受ける/玉を広いほうへ逃がす
※p83 怖そうなときの3つの考え方は必見。良いのは1つだけ。 |
二章 中盤編
・歩の手筋を使おう
強く迎え撃つ/歩越し銀には歩で対抗/自分の主張を通す
・軽くさばいて守ろう
角による軽い受け/桂による軽い受け/飛車による軽い受け
※いわゆる振飛車のカルサバ(軽く捌く)。
・自陣を補強しよう
銀打ちで補強する/主張がある受け/最高の形を目指そう
※これができるようになると立派な有段者。
・離れ駒を活用しよう
急所の駒にぶつける/金、銀を寄せる/手順に金を寄せる
・争点を消して受けよう
手堅い受けで争点を消す/歩越し飛車をとがめる/玉の早逃げで争点を消す
・厚みを築こう
敵の手に乗じる/銀冠をさらに厚く
・端攻めの対応を覚えよう
端攻めへの基本的な対応/持ち駒に注意/穴熊への端攻め
※自陣が美濃囲いor穴熊のときの端攻め対処方法。端攻めを解説した本では成功例だけが書かれていることが多く、端攻めを受ける側の手筋はなかなか載っていない。必見。
・自陣飛車・自陣角で守ろう
自陣のスキを消す/わずかな形の違いに注意/自陣角を放つ |
第三章 問題編
※一章・二章の応用問題もあるし、一章・二章の部分図では解説できなかったテクニックの解説もある。一章・二章と同様、基本的に見開き形式(問題テーマ図、解説が同じ見開きにある)。
体を入れ替える受け/合駒請求の手筋/受け手筋の複合形/「逆王手」はじつに爽快/玉のそばの位は駒損でも死守/玉周辺は手厚く受けよう/離れ駒に活を入れる/上部の駒を生かす早逃げ/厚みで押しつぶす/端を突いた穴熊/玉を大胆に動かそう/自陣角で模様を取る/厳しく先手を取る/「犠打」で手を稼ぐ/うまい「合駒」でしのぐ |
ハッシーといえば、金髪ゴリラに代表されるような「奇抜な」イメージがあるが、棋風は比較的堅実で、本書も読み手の対象棋力をうまくつかんだ丁寧な作りになっていると思う。AかBで悩ましいところだが、あと少しボリュームがあれば…というところでBにした。個人的には『不思議流 受けのヒント』(中村修,創元社,2006)よりもオススメ。(2010Sep14)
※誤植・誤字・脱字(第1刷で確認)
p83 ×「再度3図をご覧ください こういう局面では〜」 ○「再度3図をご覧ください。こういう局面では〜」
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