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イメージと読みの将棋観(2) | [総合評価] A 難易度:★★★★ 図面:見開きMAX6枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 上級〜有段向き |
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【著 者】 鈴木宏彦 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:2010年5月 | ISBN:978-4-8399-3434-7 | |||
定価:1,575円(5%税込) | 256ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||
【幕間1】(1)詰みor必至 (2)理想の持ち時間は?
(3)序盤力or終盤力 |
【レビュー】 |
トッププロ6人の読み・大局観を詳細に解説した本。『イメージと読みの将棋観』(鈴木宏彦,日本将棋連盟,2008.10)の続編。 あるテーマ局面について6人のトップ棋士がそれぞれ個別に考え、読みや大局観を披露する。超序盤や定跡型に対しては先手勝率イメージをパーセントで答え、実戦の局面に対しては読みや形勢判断を答えていく。棋士によって判断が分かれたり、すでに定説が出来上がっている局面がトップ棋士のイメージと違ったり、昔の棋士と現代の棋士の力を比較したりできるのが本書の読みどころである。 前作が好評だったのを受けて、「将棋世界」誌上で講座「イメージと読みの将棋観」の連載が復活。本書はその連載に書き下ろし部分を加えて単行本化したものである。(なお、わたしは「将棋世界」を定期購読していないので、どれが書き下ろし部分かは分かりません) 基本的なコンセプトや構成は前作とまったく同じであるが、わずかながらいくつか改良された点もある。 (1)レイアウトが改善された。 基本レイアウトは変わっていないが、全体的に図面が増え、最大で見開き6枚になった。また、再掲テーマ図も欲しいときにさりげなく置いてあるので、格段に読みやすくなった。 (2)テーマ数が微増した。 前作の39テーマから44テーマに。ページ数は変わっていないが、前作は谷川vs羽生の座談会でページを占めていた分がテーマ数upになっている。 また、特に面白かったところ、興味が湧いたところをいくつかピックアップしておこう。 ・序盤編-1:「4手目△3三角」は前作にも収録されているが、2年ほど経過して感触が変化している。 ・序盤編-4:「2手目△7四歩」。前作でも散見されたが、羽生と森内の意見が対立することが意外と多い。 ・幕間1-(1):「詰みor必至」 秒読みで長手数の詰みと易しい必至が見えたとき、どうするか? 羽生「読み切れば1分でも詰ましにいきます」 谷川「実際には詰ましにいきます。しっかり読んで。」 藤井「残り1分なら詰ましにいくバカはいません。」 (ノ∀`) アチャー ・幕間1-(3):「序盤力or終盤力」 どちらが欲しいか? 羽生だけが即答で「序盤力」!終盤に自信があるからこそだろうか。「終盤は誰が指しても同じ」と言ったのは羽生だったっけ?あと、谷川が終盤力に自信を失っている発言が目立つ…。(ノД`) ・中盤編-1:大山vs升田 羽生「先手やや不利」 佐藤「先手がかなり悪く見える」 森内「先手がまだ苦しい」 谷川「どう見ても先手が苦しい」 渡辺「わずかに後手良し」 藤井「先手やれる」 ファンタジスタの原因ここにあり? ・中盤編-3:里見香奈vs村山慈明で、先手が石田流本組に組んだが打開できずに千日手になった図。各棋士の評価はかなり辛口だが、「石田流を組むときにやってはいけない手」がズバズバ指摘されていて参考になった。藤井曰く「先手はかなり間抜けな駒組み」は辛辣。 ・中盤編-6,7:一手損角換わり▲棒銀と正調角換わり▲棒銀の比較。正調の方は棒銀の定跡書に幾度となく書かれ、後手が避けてきた局面なのに、判断が大きく分かれているのは不思議。特に羽生・佐藤・渡辺・藤井の先手勝率イメージは40〜48%で相当低い(初期値が先手勝率53%と設定されている)。谷川のみ55%。 ・中盤編-8,9:一手損角換わり▲早繰り銀と正調角換わり▲早繰り銀の比較。こちらも、特に正調の評価が大きく分かれている。正調の棒銀も早繰り銀も、約30年も前に相当に研究された形なのに(『青野流近代棒銀』(青野照市,日本将棋連盟,1983)など)、一手損角換わりの登場によって大局観そのものに変化が起きているというのは非常に興味深い。 ・中盤編-18:渡辺が升田をたたえているが、前作で升田の将棋を「先手(升田)はあまり強くない、陣形的に」とケチョンケチョンにしたことがある。(もちろん対局者が升田とは知らずに) ・終盤編-6:渡辺の待った連発にワロタ。 ・終盤編-7:もう終盤なのに6人の形勢判断が真っ二つ! ・終盤編-8:局面の判断だけでなく、時間切れ・秒読みについてのコメントもあり。 ・終盤編-10:大山の「神技の受け」に対して、対局者名を聞いても真っ向から否定できる渡辺に感動。自分の読みと大局観を信じてるんだなぁ。しかしオールドファンには反感買うだろうなぁ。(笑) 前作は、前評判と事前の期待が高すぎて、高品質だったのに意外と物足りなく感じた。本書は、前作の味のレベルとボリュームを想定して、実際は少しばかり期待を上回っていたので大満足だった。今回は、いわば「さすが“イメ読み”」(=期待を裏切らない)という印象を持った。冷静に比べてみればそんなに大差はないはずなのに、人間とはわがままな生き物である(笑)。 もちろん、さらなる続編を期待しています。(2010Jun28) ※誤字・誤植(初版第1刷で確認) p146右上 ×「コラム1」 → コラムは1つしかなかったので、「1」は変かと……。 |