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とっておきの相穴熊 | [総合評価] A 難易度:★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 上級〜有段向き |
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【著 者】 広瀬章人 遠藤正樹 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:2007年10月 | ISBN:978-4-8399-2622-9 | |||
定価:1,449円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||
・思い出の相穴熊戦 |
【レビュー】 |
相穴熊についてアマとプロのスペシャリストが語る本。 相穴熊という戦型は、わずかに居飛車が有利であると言われている。その理由は、「玉型が同じで堅さが同じなら、飛車先の歩が伸びている分だけ居飛車良し」というものだ。しかし実戦ではそう単純なものではなく、どちらかといえば「相穴熊に熟練した人」「相穴熊独特の感覚を持っている人」の方が勝ちやすい。序盤研究も大事だが、相穴熊感覚はもっと大事なのである。 本書では、その「相穴熊感覚」について、遠藤アマと広瀬五段(出版時)が語る。遠藤アマは「アナグマン」と呼ばれる穴熊スペシャリスト。プロとの対局も多く、何度も勝利を得ている。一方の広瀬五段は出版時若干20歳の若手の有望株。やはり穴熊のスペシャリストで、居飛穴側を持つことも結構多い。 第1章は、序中盤のテーマ図3つ。指し手の候補がいくつもある局面で、遠藤・広瀬が指したい手とその根拠を検証していく。テーマ図は結構メジャーな局面で、有段者の穴熊党なら「ああ、あれか」とピンと来るだろう。しかしそこまでの手順は載っていないので、分からない人は他書(『四間飛車道場 第七巻 相穴熊』など)で補う必要がある。よって本書の中では少し難しい。 第2章は、相穴熊終盤戦の基本的な考え方について。この章は対談形式ではなく、講座。筆者は週刊将棋の講座担当者と思われる。「ゼット」(絶対詰まない形)という超大事な感覚と、同じ玉型での急所について書かれた基礎講座なので、必ずこの章は読んでおくこと。(第3章を読むためには、第1章は読まなくてもよいが第2章は必須) 第3章は本書のメインで、実戦の中終盤をテーマに検討していく。読みがかなり必要ではあるが、感覚も相当大事にされていて、さながら『読みの技法』や「絶対感覚シリーズ」のようである。 第1章と第3章は基本的に対談形式。各テーマ冒頭1ページで、テーマ図とその状況説明が入り、その後だいたい遠藤が切り出す形でスタートする。遠藤が思っている大局観、読みを述べた後、広瀬が詳しい読みを披露して、テーマ図に対する大局観と指し方の指針に結論を出すというパターンになっている。 広瀬の読みの精密さは遠藤を上回っていることが多いが、遠藤もときどき広瀬を感心させるような発言をする。しかし、これは「広瀬>遠藤」という意味ではない。もちろん、プロの舞台で広瀬vs遠藤の相穴熊戦を行えば広瀬が勝ち越すと思われるが、遠藤の感覚はアマの舞台(短時間&一発勝負)に基づいたものであり、我々アマはむしろ遠藤の感覚の方が参考になるだろう。 対談形式なので、かなり読みやすいのは○。発言をそのまま載せているわけではなく、棋書での講座を意識して編集されているので、検討の臨場感はやや失われているが、読みやすさは抜群である。 本書と似たようなコンセプトの本で『秘伝 穴熊王』(美馬和夫,MYCOM,1995)があるが、本書の方が2人分の感覚と読みを味わえるし、個人的には好きだ。ただし、アマ二段〜四段くらいを狙った作りになっているので、ディープな読み合いを期待していた高段者には物足りない感じがするかもしれない。(2008Mar11) |
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