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■コーヤン流三間飛車 実戦編

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コーヤン流三間飛車 実戦編
zoom
新・プロの将棋シリーズ(3)
コーヤン流三間飛車 実戦編
[総合評価] B

難易度:★★★★

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)B
レイアウト:A
解説:B+
読みやすさ:A
上級〜有段向き

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【著 者】 中田功
【出版社】 毎日コミュニケーションズ
発行:2004年9月 ISBN:4-8399-1587-3
定価:1,365(5%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
序章 コーヤン流の確認   8p
第1章 超急戦に対する積極策   22p
第2章 急戦の新研究   66p
第3章 居飛車穴熊の新工夫   26p
第4章 コーヤン流実戦編 (1)「基礎となった一局」 vs日浦市郎七段(2001.05.15,棋王戦)
(2)「十字飛車を狙って捌く」 vs田中寅彦九段(2003.03.24,NHK杯戦)
(3)「高美濃の理想形」 vs関浩五段(2003.08.04,棋聖戦)
(4)「馬をめぐる攻防」 vs石川陽生六段(2002.03.05,C1)
(5)「未知の戦い」 vs中座真五段(2003.07.15,C1)
(6)「順位戦の激闘譜」 vs屋敷伸之八段(2003.11.11,C1)
(7)「3筋に歩が利く場合の攻め」 vs中村修八段(2003.12.12,王位戦)
(8)「端攻めは飛車より角」 vs高野秀行五段(2004.01.30,王将戦)
82p
第5章 思い出の棋譜 ・▲松尾歩△中田功,2003.08.25,棋聖戦
・▲中田功△児玉孝一,2003.06.10,C1
・▲中田功△村山聖,1995.09.05,全日プロ
・▲中田功△塚田泰明,1990.01.12,王位戦
・▲大山康晴△中田功,1989.12.13,王位戦
11p

◆内容紹介
昨年発行されて大反響を呼んだ「コーヤン流三間飛車の極意」の、
急戦編持久戦編に続く第三弾。前作の内容を踏まえつつ、実戦からよりすぐった三間飛車の戦い方の極意を伝授する。


【レビュー】
三間飛車の定跡と実戦を解説した本。『コーヤン流三間飛車の極意 急戦編』(2003.03)と『コーヤン流三間飛車の極意 持久戦編』(2003.04)の続編。

「実戦編」と銘打ってあるが、実際は定跡が五分、自戦解説が五分といったところ。定跡編は、『急戦編』と『持久戦編』を補完しており、特に『急戦編』で書けなかった変化に注力している。そういう意味では、「実戦編」という題は本書を正しく表しているといえない。

また、前述2冊は「プロの将棋シリーズ」だったが、本書は「新プロの将棋シリーズ」でシリーズ名が違い、そのため背表紙やカバーの印象も全く違うものになっていて、3冊並べると姉妹書であるという感じがしない。

この2つの理由から、先行の2冊は買った(または読んだ)が、本書はスルーしていた、という人もいるかと思う。しかし、前述のとおり、本書は先攻2冊の補完になっているので、三間飛車の定跡通なら必ず読んでおくべき本である。


各章の内容をチャートを添えながら紹介していこう。


序章は、コーヤン流の確認。『急戦編』と『持久戦編』のおさらいをしながら、本書の内容にも根付いている「コーヤン流の急所」を解説していく。主な内容は、以下の通り。

・コーヤン流の考え方
コーヤン流では、▲7八飛と振った時点ですでに玉頭戦を意識する。左銀は相手玉への攻めの要にする。
飛は7筋で使うのではなく、「邪魔な飛車を7八までどけた」(p8)くらいの勢い。四間飛車や中飛車と違い、左銀の通り道がスムーズで、▲4五歩〜▲4六銀の好形を作りやすい。飛は将来▲5八飛と使い、「コーヤン流中飛車」になり、中央突破と玉頭戦を狙う。

・▲6五歩のタイミング
角道を通す▲6五歩は、形によって使い分ける。

・▲4五歩の位は攻防の最重要拠点
▲4四歩と突き捨てる時はちゃんと読みを入れて。相手の4筋の歩が切れたときの△4八歩にも注意。

・コーヤン流での舟囲い攻略法



第1章は、△三間飛車vs▲超急戦。船囲い基本形から▲4五歩と仕掛け、▲5五歩〜▲3七桂〜▲2四歩と攻めていく。

仕掛け自体は『急戦編』でも解説されていた。三間側の玉型は、『急戦編』では主に△7二玉-△9四歩だったが、本章では△8二玉-△9三歩

△8二玉型では、1手で美濃囲いが完成することと、戦場から一つ遠ざかっているメリットがある。ただし、離れ駒があり、端の懐が狭いことはデメリット。どちらの玉型が良いかは難しい。後の変化が違うので、好みで選ぶのが良い。

本章のメインルートでは、銀桂交換になる。居飛車の右桂が振飛車の銀と交換なら居飛車大成功のようだが、三間側は銀桂交換の代償を△5六歩の垂れ歩と桂の働きに求める。特に本章の▲2九飛に△4五桂と反撃する順は、△8二玉-△9三歩型の方が向いている。

急戦編』と似たような変化が出てくるが、6一金の離れ駒を意識して、途中で▲2四飛を防ぐ指し方がメインルートになっている。

△7二玉型で同じ指し方をすると、最後の方(p34)の▲5四馬に△5六歩は利かない。▲6四桂(玉金両取り)がある。△8二玉型ではその筋は全くない。


第2章は、△三間飛車vs▲3七桂戦法。▲3七桂〜▲5七銀左型〜▲4五歩の本格急戦。本書でのメインコンテンツと言ってよい。(「実戦編」なのにね)

第1章では▲4五歩と仕掛けたところで、▲3七桂と力を溜める。△2二飛は必須(それ以外の応手は、例えば『現代三間飛車の定跡(T)』(中原誠,大泉書店,1976)などを参照)。

▲4六銀にコーヤン流は△5四銀。対して▲5五銀は『急戦編』で解説されており、本章では▲4四歩を詳しく解説する。

▲5五角の飛香両取りに対し、△3三角と合わせて左桂を捌くのが新しい指し方。これで▲5四歩と取り込む形が対策できた。▲5四歩の取り込みが先手の分が悪くなったので、▲4五歩と押さえて△6五銀とかわす形が次のテーマになっている。

なお、コーヤン流では端角の△1五角を常に意識しておきたい。そのため、自分から1筋の歩を突くことはしない。


第3章は、▲三間飛車vs△居飛車穴熊(一直線穴熊)。『持久戦編』で書かれなかった、居飛車△6二銀型を解説。5筋の歩を突かずに(後回しにして)△3三角から一直線に穴熊に組む。最近は、▲三間飛車に対する後手の作戦はほとんどこれのように感じる。

居飛穴が早いので、組まれる前に仕掛けるのはまず無理。

本章のコーヤン流では角の睨みを生かした端攻めを狙っていく。角道を開けるタイミングは形によって使い分ける必要があるが、仕掛けが始まる前からポンと▲2五桂と跳ねておく筋はコーヤン流では頻出する。

先に△7三桂とされている場合は▲6五歩としにくいので、▲4五歩の位取りに方針変更する。盤面左はある程度攻めさせておいて構わないという考え方だ。



第4章は、お待ちかね(?)の実戦編。中田の公式戦から、8局を自戦解説していく。

なぜか本編では序盤の棋譜が省略されており、総譜は巻末にまとめられている。そのため、棋譜並べをする場合は、まず巻末を見て並べ始め、途中から本編に合流して解説を読みながら並べることになるのだが、巻末の棋譜にはどこから本編に合流するか書かれていないので、冒頭の局面を覚えておくか、「なんとなくこの辺かな」というところまで並べてから本編を読むことになる。
なんでこんな構成にしちゃってるんだろう?正直、ここは構成上のマイナスポイントだと思う。

第4章の内容は、ざっくり以下の通り。

@第3章の△三間▲3七桂急戦に沿った内容
A▲三間△腰掛銀急戦。居飛車が腰掛銀から4筋の歩を交換してくる。定跡編にはなかった戦型。
B▲三間△7三桂急戦。先後の違いに注意。△三間と違って、美濃囲いが高美濃になる。半面、▲3六歩を突いているので、4七金を5六に持っていく筋は良くない。また、5八が空いているので、▲5八飛の筋を狙うことが可能。
☆ワンポイント☆ 「6七歩成の威力」:
高美濃に対する△6七歩成は見た目以上に強力。3つのポイントに注意。ここだけは、振飛車党・居飛車党を問わず、必ず読んでおいたほうが良い。
C△三間▲一直線穴熊。講座編とは先後が違う。
D△三間▲串カツ囲い。居飛穴よりも囲いが1手早いので、場合によっては後手が立ち遅れる恐れあり。
E△三間▲一直線穴熊。早めに9筋を詰めて、早めに△8五桂を跳んでおく。P188の「
あう〜。」が可愛い(笑)
F▲三間△一直線穴熊。△6二銀も省略して一直線穴熊に組むのが後手の工夫。
G△三間▲一直線穴熊。中盤で飛を切ってから、角打のスペースを作るために△6五歩が印象的。


第5章は、思い出の棋譜が5局。見開き2pで棋譜と解説。

各局の戦型と短評は以下の通り。

@△三間▲一直線穴熊。第4章Eと同様に、本格的な戦いになる前に△8五桂と跳ねておく姿勢が特徴的。
A▲三間△居飛車穴熊。戦いの前に▲2五桂と跳ねるのは、コーヤン流の特徴の一つ。
B▲三間△居飛車穴熊。こちらは先手が真部流の駒組み。
C▲三間に対し、△7三桂急戦を見せた後で腰掛銀から左美濃にする作戦。
D△三間▲玉頭位取り。後手は石田流にチェンジ。中田が攻め、大山が受け、「
だんだん指導を受けている感じに…」が印象深い(笑)

どういう思い出なのかは書かれておらず、@Aはどちらかといえば「第4章で収録しきれなかった棋譜」という感じ。 Bはトップクラスの村山に勝ったこと、Cは四段で初のリーグ入り、Dは師匠の大山と唯一の公式戦、ということらしい。



シリーズ3冊を本棚に並べても全く美しくないが、内容はちゃんと三部作になっているので、三間飛車を指す人は必ずチェックしておきたい。特に、居飛穴に対して超早めに玉側の桂を跳ねておく指し方は、実戦譜を並べることで感覚を掴んでおこう。(2016Nov15)



【関連書籍】

[ジャンル] 
三間飛車
[シリーズ] 
新・プロの将棋シリーズ
[著者] 
中田功
[発行年] 
2004年

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