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東大将棋ブックス 横歩取り道場 第五巻 続8五飛戦法 |
[総合評価] A 難易度:★★★★☆ 図面:見開き6枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:B+ 読みやすさ:B 有段向き |
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【著 者】 所司和晴 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:2003年3月 | ISBN:4-8399-1007-3 | |||
定価:1,200円 | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||
◆内容紹介(MYCOMホームページより) |
【レビュー】 |
横歩取り△8五飛戦法・▲6八玉型と、青野流とその周辺の定跡書。 ▲6八玉型の長所、短所は以下のような感じになる。 (長所)▲7八金にヒモ(▲6八玉)が付いており、浮き駒ではない。 (長所)▲6八玉型では▲3六歩を早く突いていく。仮に3五歩を飛で取られても、金銀が浮き駒ではないのですぐには困らない。 (短所)2八に金銀の利きがないので、飛が移動したときの△2八角などに警戒が必要。 (短所)中央が薄い。特に左銀の応援(▲6八銀)ができない。 よって、▲6八玉型は攻撃重視の布陣となり、激しい戦いになることが多く、終盤の詰みまで定跡化されているものも多い。▲5八玉型に比べ、「定跡を知っている方が有利」な戦型とされる。 ▲6八玉型は△8五飛戦法の初期からあるので、先行する『横歩取り△8五飛戦法』(中座真,日本将棋連盟,2001.02)にも載っているが、何といっても松尾新手△5五飛が登場してかなりの局数が指されたのが大きな違い。本書では第2章第1節という、東大将棋ブックスでは真打のポジションを占めている。 また、本書の後半は青野流。▲3四飛と横歩を取った形のまま、▲5八玉と居玉を避けてから▲3六歩と桂を活用するのが特徴だ。一号局は2002年で、本書出版時はまだできたての戦法である。青野流を△8五飛戦法の一部と分類していいかどうかは微妙ではある。 本書の内容を、チャートを交えながら紹介していこう。なお、東大将棋ブックスシリーズでは、第1章に全体像がまとめられているので、第1章のみチャートとコメントを表示し、第2章〜第7章のチャートはリンクにしておきます。 |
▲6八玉と玉の位置を明示し、▲3八銀と組むのが第2章。そこから▲3六歩〜▲3七桂〜▲4六歩と右辺の駒を活用していく。ここで△5五飛と角の利きに飛を回るのが松尾新手で、本書のメインとなる。他には、定番の仕掛けである△8六歩や△7五歩、5筋の薄みを衝こうとする△5四歩がある。 ▲6八玉の後、▲4八銀〜▲3六歩〜▲3七桂とするのが第3章。▲4八銀型は、次に▲5八金と締まると好形になる。また、この形で玉移動すら省略するのが後の「新山ア流」につながっていく。 青野流が第4章。本書では「▲3六歩早突き型」と書かれている。▲3四飛のまま▲5八玉〜▲3六歩と右桂の活用を図る。1手でも早く右桂を活用したいという考え方になる。なお、▲3四飛+居玉のまま▲3六歩を突くと、角交換〜△3三歩で王手飛車が避けられないので、▲5八玉は省略できない。展開によっては先手から攻勢をかけることのできる数少ない戦法の一つとなる。 その青野流を阻止するのが第5章。青野流狙いの▲5八玉に対してすぐに△8五飛と引く。△2五飛の転換を狙うことで、青野流本来の駒組みをさせない。ただし、後手も定番の中原囲いにするのは難しい。また、△4四歩によって▲8四飛の転回を防ぐのもポイント。 第2章チャート完全版 第3章チャート完全版 第4章チャート完全版 第5章チャート完全版 松尾新手周辺や、青野流周辺ともに、ここから何年もかけて進化していくので、本書の内容はベーシックなものと考えるのがよいだろう。 とはいえ、これらの戦法は後の棋書でも何度も取り上げられていくのだが、本書のレベルでガッツリと変化が書かれたものは少なくなっていく。後の棋書を理解するためにも、資料として重要な一冊である。(2016Oct23) ※誤字・誤植等(第1版で確認): p113下段 ×「(1)▲2五桂には△4五桂が…」 ○「▲2五桂には(1)△4五桂が…」 |