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東大将棋ブックス 横歩取り道場 第四巻 8五飛戦法 |
[総合評価] A 難易度:★★★★☆ 図面:見開き6枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:B+ 読みやすさ:B 有段向き |
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【著 者】 所司和晴 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:2003年1月 | ISBN:4-8399-0900-8 | |||
定価:1,200円 | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||||||||||
◆内容紹介(MYCOMホームページより) |
【レビュー】 |
横歩取り△8五飛戦法・▲5八玉型の定跡書。 タイトルからは、これ一冊で8五飛戦法を網羅しているような印象を受けるが、本書では先手の玉の位置を▲5八玉型に絞っている(※▲6八玉型は第五巻に掲載。また▲5八玉型の特殊な型も第五巻)。 ▲5八玉型は昔からあり、横歩取りでのもっともオーソドックスな玉型。一般的な金開き型の他に、右金が浮かないようにする▲3八銀-▲4八金型など、少しずつ形の違いがあり、それによって戦い方も違ってくる。 本書が出版されたころの▲5八玉型の状況は、以下の通り。 ・中座本から約2年が経過。 ・▲3五歩に△同飛と取る発想が登場。(角交換から▲4六角の飛香両取りがあるが) ・丸山が横歩取りメインで名人2期。 本書の内容を、チャートを交えながら紹介していこう。なお、東大将棋ブックスシリーズでは、第1章に全体像がまとめられているので、第1章のみチャートとコメントを表示し、第2章〜第7章のチャートはリンクにしておきます。(第1章チャートの下部に掲載) |
このころの横歩取りは、△3三角戦法で戦う場合は△4一玉まではほぼ一本道。そこで先手が玉の位置を明らかにするが、後手は中原囲い〜△7四歩〜△7三桂の流れは定番だった。 金開きから▲3七桂というもっともオーソドックスな形が第2章。互いに自然な駒の活用だ。そこで後手は、△1四歩と待つか、△9四歩と待つか、△8六歩▲同歩△同飛と横歩を狙うかの三択になる。 △7三桂▲3七桂の交換を入れずに△2五歩▲2八飛と飛の頭を叩いていくのが第3章。△2五歩はいずれ取られてしまう歩だが、一時的に先手の飛の動きを悪くさせる効果がある。先手は、横歩(7六歩)を守らず、▲4六歩で△4五桂を防ぎ、▲4七銀型の好形を目指すのがメイン。 金開きで桂跳ねの前に▲1六歩と様子を見るのが第4章。△8五飛戦法の初期のころに多かった指し方で、飛の横利きを通したままにしておくのが狙いだが、手は遅れやすく、右桂が使いづらいという欠点がある。後手の対応は3択で、▲1六歩に△7三桂or△5四歩は、▲1六歩を緩手とみて積極的に動く指し方。▲1六歩に△1四歩と受けるのは、将来角交換から△4四角〜△1五歩と端攻めをする狙いとなる。 ▲3八銀・▲4八金と金銀の位置を通常と逆にするのが第5章。金開きと違って離れ駒が少ないのがメリット。2八に隙があるのがデメリットで、飛を移動する(させられる)ときに角交換から△2八角への警戒が必要となる。後手は、△8六歩▲同歩△同飛▲3五歩に、△2五歩で先手の飛の動きを打診するか、△8五飛で3五歩を狙うか、またはすぐに△8六歩▲同歩△同飛と行かず、△1四歩or△9四歩と間合いを計るか。 ▲3七銀〜▲4六銀と制空権を取りに行くのが第6章。後手に無理な動きを指せれば先手の成功。後手は、△8六歩▲同歩△同飛と動くか、△7五歩から動くか。 最後は、▲3八銀型の低い構えで▲3五歩と突き出すのが第7章。これを△同飛と取ってしまう(角交換から▲4六角と飛香両取りに打たれる)のが当時の最新形で、少し前の『△8五飛戦法』では、まだこの歩を取る考え方はなかった。他の指し方は、飛の動きを打診する△2五歩と、力を溜める△7三桂。 第2章チャート完全版 第3章チャート完全版 第4章チャート完全版 第5章チャート完全版 第6章チャート完全版 第7章チャート完全版 「東大将棋ブックス」は、考え方や登場順、重要さに関する記述は少ないので、定跡を学ぶには読みづらい本だが、変化を調べるには適した本であり(チャートを作成していて作りやすいと思った)、横歩取りの当時の状況を知るには、次の第五巻と並んで貴重な資料であると言えよう。 ※誤字・誤植等(第1刷で確認): p178棋譜部 ×「△7四歩 ▲4六銀 △8六歩」 ○「△7四歩 ▲3七銀 △7三桂 ▲4六銀 △8六歩」(2手抜けている) |