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■森安流四間飛車

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森安流四間飛車
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森安流四間飛車 [総合評価] A

難易度:★★★★

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:B+
上級〜有段向き

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【著 者】 森安秀光
【出版社】 日本将棋連盟
発行:1983年10月 ISBN:4-8197-0103-7
定価:1,800円 243ページ/22cm/H.C.


【本の内容】
講座 左美濃攻略法   13p
第一部 急戦編 第1局 石田和雄七段戦
第2局 板谷進八段戦
第3局 加藤一二三王将戦
第4局 木村義徳七段戦
第5局 青野照市七段戦
第6局 米長邦雄棋王戦
第7局 田中魁秀七段戦
第8局 二上達也棋聖戦
第9局 板谷進八段戦
第10局 淡路仁茂六段戦
第11局 桐山清澄八段戦
第12局 米長邦雄棋王戦
第13局 加藤一二三名人戦
第14局 中原誠棋聖戦
108p
第二部 持久戦編 第15局 勝浦修八段戦
第16局 高島弘光七段戦
第17局 米長邦雄九段戦
第18局 宮坂幸雄七段戦
第19局 大山康晴十五世名人戦
第20局 石田和雄八段戦
第21局 東和男四段戦
第22局 関根茂八段戦
第23局 有吉道夫九段戦
第24局 加藤一二三九段戦
第25局 大山康晴王将戦
第26局 田中寅彦五段戦
第27局 大内延介八段戦
第28局 米長邦雄棋王戦
第29局 米長邦雄棋王戦
第30局 加藤一二三十段戦
第31局 森けい二八段戦
第32局 二上達也棋聖戦
第33局 中原誠前名人戦
第34局 米長邦雄棋王戦
第35局 中原誠棋聖戦
132p

◆内容紹介(はしがきより抜粋)
振り飛車の中にもいろいろあるが、四間飛車は一番オーソドックスで振り飛車の王様だと思っている。

振り飛車の特長は何といっても駒組がやさしく玉が堅いので、強引な荒捌きが成立する。華麗なテクニックで勝ったときの快感は何ものにもかえがたいものがあり、振り飛車に病みつきになった方も多いと思う。しかし最近は対振り飛車戦法も幅広くなり「イビアナ」「左美濃」等、振り飛車以上に玉を固める戦法などが出現し、とまどいを覚える方も多いのではないだろうか。

本書は昭和53年から58年(中略)から35局を選び、急戦から持久戦までを解説した。


【レビュー】
四間飛車の自戦記集。昇降級リーグ1組(現在のB級1組)に昇級して七段になった頃から、初タイトル(棋聖)を獲得するまでの実戦から、四間飛車で戦った将棋を計35局自戦解説している。すべて森安の勝局となっている。


森安の四間飛車は、はしがきにあるように「中盤以降のネジリ合い、そして瞬発力」(p2)が特徴である。定跡どおりに斬り合うことはあまりなく、金銀が意外なところへ出張することがある。

現代の棋士でいえば、久保利明九段が最も森安の将棋の影響を受けているように思う。久保といえば「捌きのアーティスト」であるが、やや悪くなった時の粘りがよく似ているように感じた。

現代では「堅さは正義」の度合いが出版当時(1983年)とは比べ物にならないくらい強まっているため、本書の将棋がそのまま通じるわけではないが、四枚穴熊を打ち砕いた将棋もある。中終盤までもつれさせてチャンスを待ち、最後に抜き去る感覚は、本書の35局から十分に学べると思う。


本書は、[講座]、[急戦編]、[持久戦編]の三部構成になっている。各部の内容を、紹介していこう。


〔講座 左美濃攻略法〕
四枚左美濃の攻略方法の講座。

p18第1図(下記チャート参照)で、次に△4三金と組まれる前に▲4五歩と仕掛ける。△4三金▲4四歩△同銀の局面(p19基本T図)で、(1)▲4五銀(強攻策) (2)▲4五歩(自重策) のどちらでもよい、というのが本講座の骨子。

ただし、現代では、〔基本T図〕の形に組まれる前の△3三銀引に▲4五歩とする指し方が一般的になっている。

なお、この講座の指し方を採用した実戦譜は、残念ながら本書には載っていなかった。(そもそも左美濃戦が35局中2局しかない)



〔第一部 急戦編〕
多い戦型は、▲5七銀左型からの棒銀。特に、棒銀から手損して4五歩早仕掛けとか、棒銀から手損して左4六銀など、「手損してでも、四間飛車に形を決めさせてから、別の仕掛けにスイッチする」という作戦がいくつか見られた。近年の定跡書にはあまり載っていないので、「理論よりも、自分の得意な戦型で戦いたい」という居飛車党には一考の価値あり。
  対戦相手 (主に)居飛車の作戦 対局日 棋戦 コメント
第1局 石田和雄 ▲3八飛 1978.11.09 名将戦 ▲4五歩早仕掛け狙いで▲4六歩→△3二金と備える→▲3八飛にスイッチ。本局直前まで、石田には何と11連敗。
第2局 板谷進 △棒銀模様 1979.06.12 連盟杯 △7三銀〜△6四歩〜△6五歩〜△6二銀引で、△6五歩早仕掛けにスイッチ。
第3局 加藤一二三 △棒銀 1979.08.31 十段戦 △1四歩を突かずに仕掛け。手の渡し合いで、先に四間の方が有効な手待ちが無くなった。決め手を与えず、粘って逆転。終盤の2筋の攻め方が参考になる。
第4局 木村義徳 △左6四銀 1980.03.25 昇降級リーグ1組 棒銀から△6四銀左〜△6二銀と2手損の左6四銀にスイッチ。△7三銀引の準急戦に対し、▲4七銀〜▲3五歩〜▲3八飛と袖飛車で反撃。
第5局 青野照市 △6五歩早仕掛け 1980.08.07 十段戦 先手は左金を一段金のまま待機し、袖飛車狙いで▲4七銀。変則的な形で△6五歩早仕掛けになった。
第6局 米長邦雄 △山田流7五歩 1981.03.27 王位戦 先手は歩を突き切った状態での仕掛け。
第7局 田中魁秀 ▲山田流3五歩 1981.12.15 王位戦 先手は9筋を詰め、後手は高美濃の状態での仕掛け。
第8局 二上達也 △棒銀〜6五歩早仕掛け 1982.01.07 名人挑戦リーグ戦 第2局と同様に、棒銀から△6五歩早仕掛けへスイッチ。
第9局 板谷進 ▲腰掛銀+3八飛 1982.02.04 棋王戦挑決 先手の素早い動きに、後手は端を手抜きして金美濃で対抗。互いに馬と龍を作って、長い長い中盤戦。
第10局 淡路仁茂 ▲3五歩 1982.02.19 棋聖戦 △7一玉型、△4一金型など、現代なら藤井九段がやりそうな陣立て。本局の狙いの一つは、3筋を軽く受け流しての袖飛車。
第11局 桐山清澄 ▲棒銀 1982.09.10 名人挑戦リーグ戦 ▲3五歩△5一角▲4五歩△同歩▲2四歩が桐山の新手。
第12局 米長邦雄 ▲棒銀 1982.10.01 十段戦 第11局と同じ仕掛けだが、端歩の関係が異なる。
第13局 加藤一二三 ▲棒銀 1982.11.02 棋聖戦 第11局・第12局と同じ仕掛けで、ついに▲1五銀が登場する。ただし、この手自体は第11局の感想戦で挙がっていた。
名人とA級の対局でも軽口が飛び交っている様子が、現代から見ると微笑ましい(笑)
第14局 中原誠 △棒銀 1983.07.05 棋聖戦第3局 △5三銀左保留型の棒銀。



〔第二部 持久戦編〕
多い戦型は、意外にも5筋位取り。急戦・持久戦のどちらもある。また、居飛穴も流行が始まりつつあった。本書では、藤井システム型の牽制なしで居飛穴を撃破した将棋が8局ある。
  対戦相手 (主に)居飛車の作戦 対局日 棋戦 コメント
第15局 勝浦修 △5筋位取り 1979.05.11 十段戦 後手の4筋歩交換に▲4八飛から激しく反発。
第16局 高島弘光 △5筋位取り 1979.07.06 王将戦  
第17局 米長邦雄 △玉頭位取り 1979.07.10 十段戦 ▲6六銀型から▲7五銀〜▲9七桂と動いた。
第18局 宮坂幸雄 △1三角 1979.09.11 昇降級リーグ1組 △1三角の山田定跡狙いに対し、△5九角と狙いを外す。
第19局 大山康晴 △5筋位取り 1979.10.04 十段戦  
第20局 石田和雄 △左美濃 1979.10.23 オールスター対抗勝抜戦 中盤以降は玉頭戦で、飛角の捌きはほとんどなく決着。
第21局 東和男 ▲5筋位取り 1979.10.26 王位戦 先手の6筋歩交換にすぐ反発。
第22局 関根茂 △左美濃(2二玉型) 1979.11.09 オールスター対抗勝抜戦 相銀冠の持久戦から△棒銀に。
第23局 有吉道夫 △居飛穴 1980.05.01 棋王戦 序盤に先手の左金が▲2五金と出ていくのが珍しい指し方。
第24局 加藤一二三 ▲矢倉引き角棒銀 1981.02.26 名人挑戦リーグ戦
第25局 大山康晴 △玉頭位取り 1981.03.16 名人挑戦リーグ戦 高田流のような出だしから、結果的に玉頭位取りへ。
第26局 田中寅彦 ▲居飛穴 1981.06.09 オールスター対抗勝抜戦 序盤で振飛車側から角交換挑戦。角交換後、互いに角を打ち合い、▲5五歩と止めた。
第27局 大内延介 △腰掛銀 1981.07.13 名人挑戦リーグ戦  
第28局 米長邦雄 △居飛穴模様 1981.09.18 十段戦 序盤で角交換挑戦。互いに金銀が玉から離れる不思議な将棋。(※森安の将棋は美濃囲いの金銀が玉から離れていくイメージがあるが、この将棋はそれが顕著)
第29局 米長邦雄 ▲玉頭位取り 1981.10.19 将棋連盟杯  
第30局 加藤一二三 △居飛穴 1982.02.10 名人挑戦リーグ戦 加藤は対振飛車は急戦オンリーのイメージがあるが、居飛穴もやってたんですね…
第31局 森けい二 ▲居飛穴 1982.07.02 王位戦 角交換挑戦から早い仕掛け。
第32局 二上達也 △5筋位取り 1982.07.02 王位戦 △6四歩型で仕掛けを狙い急戦型。
第33局 中原誠 △居飛穴 1982.09.24 十段戦 四枚穴熊を打破。ジリジリした持久戦を▲2六銀で打開、居飛穴の攻めを凌いで、最後は端への猛攻。
第34局 米長邦雄 △居飛穴 1982.12.03 将棋連盟杯 穴熊ペースの猛攻を凌いだ。
第35局 中原誠 △居飛穴 1983.08.04 棋聖戦第5局 森安が初タイトル獲得を決めた一局。



講座の内容が実戦に反映されていないのが残念で、ABかで迷ったが、やはり35局の並べ甲斐はあったので、Aとしておきたい。

※誤字・誤植等(第3刷で確認):
p4目次 「森安秀光八段記録……245」とあるが、見当たらない。本編はp243までで、そのあと奥付が1pあるだけ。
p6目次 ×「東  和四段戦」 ○「東  和四段戦」
p104 ×「6二成香となったとき」 ○「6二成桂となったとき」
p146 ×「東 和夫」 ○「東 和男」
p172 ×?「4七金(5六銀)は何かのときに銀が引けない」 ○「4七金は何かのときに銀(5六銀)が引けない」



【関連書籍】
 『
疾風 谷川将棋
 『
青野流近代棒銀

[ジャンル] 
自戦記
[シリーズ] 
[著者] 
森安秀光
[発行年] 
1983年

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