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別冊宝島(2613) 中学生プロ棋士 藤井聡太 新たなる伝説 「50年に1度の天才棋士」その実力と素顔 |
[総合評価] A 難易度:★ 〜★★★ 図面:見開き7〜8枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 読みやすさ:A 将棋ファン全般向き (指せない人OK) |
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【著 者】 | ||||
【出版社】 宝島社 | ||||
発行:2017年8月 | ISBN:978-4-8002-7585-1 | |||
定価:896円(8%税込) | 111ページ/26cm |
【本の内容】 |
・藤井聡太「29連勝」の衝撃=18p ・藤井四段が塗り替える将棋界と日本の「未来図」(杉本昌隆×森けい二)=8p ・日本が揺れた!藤井「30連勝」ならず!ドキュメント「7・2」(小暮克洋)=10p ・羽生善治三冠が登場!「藤井聡太 炎の七番勝負」全7局“超解説”=8p ・インタビュー・中原誠(十六世名人)=4p ・棋道師範・鬼頭孝生氏が語った 藤井四段のルーツ「板谷一門」の歴史と伝統=8p ・藤井「29連勝」で大注目!「1987年の神谷広志」神がかり28連勝の軌跡(田丸昇)=8p ・「デビュー後」成績に見る藤井聡太の「スケール感」=2p ・小学生で「日本一」の栄冠!プロ棋士たちが分析する藤井四段「驚異の詰将棋力」(相崎修司)=8p ・華麗に決めた「自力昇段」!この日「藤井伝説」は始まった──「史上最年少プロ」誕生のドラマ(相崎修司)=8p ・真価が問われる「順位戦」!藤井聡太「最年少名人」への道(田丸昇)=8p ・あのときみんな若かった!スター棋士たちの「青春時代」一気にプレイバック!=8p ・絶大な経済効果!「藤井メシ」全リストに見る「勝ち」の方程式=6p ◆内容紹介 将棋界の新星・藤井聡太四段。史上5人目となる中学生棋士としてデビュー以来、半年以上「公式戦無敗」の快進撃を続けた実力とスター性は、あの羽生善治の後継者との呼び声も高い。棋譜の裏側に隠された才能の分析と、AI時代に対応した将棋の新たな地平を探索する。また長年将棋界に身を置いてきたプロ棋士、観戦記者たちが見た「平成の天才」の素顔を余すことなく伝えるファン待望の一冊。 |
【レビュー】 |
藤井聡太四段を特集したムック。 藤井は、デビュー以来の公式戦29連勝を達成した。TVのワイドショーやニュースでも大きく時間を割いて取り上げられ、最後の方は速報や号外が出るレベルだった。日本中が藤井に湧き、藤井を応援した。 本書は、藤井について様々な角度から分析・紹介した本である。 写真、文章が多いので、特に将棋の知識がなくても十分読んでいける。盤面図面を使った解説も一部あるが、棋譜や有段者向けのガチ解説はない。わたしの妻(わたしに八枚落ちなら勝てるレベル)は、図面の解説以外の部分を熱心に読み込んでいた。 どのような話題が取り上げられているか、ザッと見ていこう。 ●杉本昌隆七段と森けい二九段の対談 杉本は藤井の師匠として。森は里見香奈の師匠として、“「○○フィーバー」から弟子を守る師匠”の先輩という形での対談。 TV報道ではよく「藤井はAIの申し子」という伝え方がされていたが、師たちがさすがによく見ており、それが誤った捉え方であることがよく分かる。森の話の引き出し方も上手い。 ●30連勝ならず 小暮記者による観戦記。総譜はなく、ルポタージュ形式。「羽生七冠フィーバー」との比較を交えている。 「羽生は握手を求める対象、藤井は声援を送る対象」というフレーズが印象的だった。また、「空メール」のエピソードは、後に語り草になりそうな気がする。 ●野月浩貴八段の語り 野月はアベマTVの企画「炎の七番勝負」の発案者。藤井ブームは公式戦の連勝もさることながら、ここで羽生に勝ったことが着火になったのも大きい。「七番勝負」のメンバリングの舞台裏や、「2勝できたら立派」という関係者の予想などの裏話が聞ける。 なお、杉本とは少し捉え方が違うが、「藤井の強さは読みの力が根底にある」という点では一致。 ●羽生善治三冠による七番勝負の解説 「炎の七番勝負」を一局ずつ解説、というか感想。藤井のコメント付き。ただし、羽生の感想に対するコメントではなく、別録されたもの。比較して感覚の違いを楽しもう。「受けがしっかりしている」が共通項っぽい。(プロや関係者の視点は、TV局の方々の取り上げ方と全然違うのはなぜ…) ●中原誠十六世名人の語り 自身の十代のころと比較しつつ、「今は力を蓄えてほしい」と願う。 ●鬼頭孝生氏の語り 鬼頭氏は東海棋界の生き証人。板谷一門、小池重明、田中角栄、板谷進八段の急死、棋道師範、ふみもと教室(藤井の出身教室)、「無極」の落款(藤井が扇子に使用)、「強くなる」と板谷進、…など、エピソード満載。 ●神谷広志八段の28連勝 神谷は1987年に28連勝を達成。今回の藤井ブームでまさかのクローズアップ。なぜか本人ではなく、田丸昇九段が語る。 神谷と藤井の連勝記録の比較と、なぜかひふみん(加藤一二三九段)のA級時の21連敗も登場。 ●詰将棋解答選手権 宮田敦史六段のすごさと、それを凌駕する藤井のすごさ。二人の解き方は少し違うらしい。 ●三段リーグ 藤井が四段に昇段した時のルポタージュと、過去の三段リーグの数々のドラマを紹介。 ●名人戦 藤井の最年少名人なるか?!という期待が高まっている。とはいっても、名人になるには最低5年かかる、ということは一般にはあまり知られていない&理解されていない。ここでは名人戦の仕組み、過去の名人経験者の昇進速度のデータ、エピソード紹介など。これを知っていれば、藤井が昇級するごとに鼻高々で周囲に解説できる!? ●スター棋士青春プレイバック 有名棋士のBefore-Afterを写真で比較。大山、升田、加藤一二三、米長、中原、谷川、羽生、森内、佐藤康光、渡辺。藤井は将来どんな顔になるのかな? ●藤井メシ TVでは大大大注目だった「藤井の勝負メシ」。棋士なので対局途中で食事をとることは当たり前なのだが、プレイ中に摂食する競技は少なく、一般人的には興味深いかも。対局中は取材できないので、他に取材することがなかっただけかも(笑) 後から思えばたぶん不思議なこのブームを、写真と飯リストを交えて紹介。もしかしたら本書で一番気になるコーナー化も?! だとしたら、写真がモノクロなのが超残念!(本書のカラー写真はp16まで) 「将棋世界」誌やネットなど、一つの媒体を見ているだけではよく分からない部分もあった「藤井フィーバー」。ミーハーな方や、逆にマニアックな方に偏らずに、全体像を上手くまとめあげた本だと思う。他にも藤井本は多数出版されるが、基礎知識として見ておくべき(あえて「読んでおくべき」とは言いません)一冊である。 分量に少し物足りなさもあって、少し迷うところだが、Aあげちゃいます。ムックとしてはこれくらいでちょうどいいのかも。(2017Sep07) |