zoom |
マイナビ将棋BOOKS 横歩取りで勝つ 攻めの最強手筋ガイド |
[総合評価] A 難易度:★★★☆ 〜★★★★ 図面:見開き3枚 内容:(質)A(量)B+ レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 上級〜有段向き |
||
【著 者】 高橋道雄 | ||||
【出版社】 マイナビ出版 | ||||
発行:2017年7月 | ISBN:978-4-8399-6219-7 | |||
定価:1,663円 | 224ページ/19cm |
【本の内容】 |
第1章 序盤編 第2章 中盤編 第3章 終盤編 第4章 次の一手10題 ◆内容紹介 プロ・アマ問わず大流行が続いている横歩取り。しかし、大駒が激しく乱舞する将棋に難しさを感じている方や、いまいち上達の実感を感じられない方も多いのではないでしょうか? 横歩取りは一手一手の価値が高い戦法ですが、戦いが一段落したときや中終盤にかけて何を目指して指せばよいかわからない局面がよく現れます。ここで何を指すかで勝敗が分かれます。 そんなときに役に立つのが手筋です。手筋を知っていれば、その局面が現れたら手筋を指せば良いですし、現れていなければその手筋が実現するように指せば良いので、常に戦いの指針を示してくれます。 本書ではそんな横歩取りの実戦に役立つ手筋をたっぷりと紹介する一冊です。 序盤編は、基本的な序盤の知識を。そして中盤編と終盤編においては、横歩取りを指すうえで、これはぜひとも覚えておきたい手筋を計16項目用意しています。 まず最初に部分図で手筋を分かり易く紹介。続いてそれに関連したプロの将棋を載せています。部分図+実戦解説で手筋の理解を深めてください。 横歩取りの将棋は日々定跡が進化していますが、基本的な狙いとなる手筋は変わりません。本書の手筋をしっかりマスターして、横歩取りの達人を目指してください。 |
【レビュー】 |
横歩取り特有の手筋を解説した本。 わたしが将棋にハマり出したころ、一心不乱に棋譜並べをしていた次期がある。特に戦型の偏りなく並べていたので、横歩取りの将棋もよく並べた。他に、手筋の本や定跡書も読んで、四間飛車や矢倉はだんだん分かるようになっていたが、横歩取りだけは(特に序中盤の指し手を)なかなか理解することができなかった。(超急戦系は大丈夫だったのだが) 棋譜をたくさん並べ、定跡書も読んでいたので、見よう見まねで横歩取りを指すことはできたが、意思を持たずに指していたので、途中からよく分からなくなっていた。 皆さんも、こういった経験はないだろうか? 原因の一つとして、手筋をあまり理解していなかったことが挙げられる。手筋の本はたくさん読んでいたじゃないかって?その通り、わたしは「手筋大好き人間(笑)」なのだが、横歩取りには横歩取り特有の手筋がたくさんあり、その特有手筋はあまり棋書では(まとまった形では)解説されてこなかったのである。身体では覚えていても、頭が理解していなかったのだ。 本書は、そのような「横歩取りの指し手の意味がよく分からない」という方のために、横歩取り特有の手筋に絞って解説した本である。 著者の高橋は、昔は矢倉の大家だったが、現在では横歩取りの大家。以前は横歩を取る側だったが、1998年12月22日以降、横歩を取らせる側になった。現在では先手でも横歩を取らず、後手に取らせるほど「横歩取らせ」に傾倒している。 本書で掲載されている手筋は16種類。どのような手筋が解説されているか、順番に見ていこう。 第1章は、序盤編。横歩取りという戦型の概要、考え方、形、注意点などが解説されている。 p9 「いつでも角交換になる」(特徴) p11 「できる限り、二つの持ち歩はキープする」(考え方) p15 「相手が飛車の形を決めれば、こちらも同様に決める」(考え方) ・△3三角型の注意点 ・玉型(先手・後手) ・先手は3筋の歩を伸ばしたい(考え方) ・△7四飛として▲3六歩を牽制するのは有力 第2章は、中盤編。といっても、横歩取りでは中終盤の境目が非常にあいまいなので、第3章の終盤編と併せて考えてよい。ここでは、まずテーマごとに手筋の基本を解説し、その後プロの公式戦でその手筋がどう使われたかを解説していく。 (1)△8六歩 ▲3六歩で先手の飛の横利きが止まった瞬間に、△8六歩と併せて後手が横歩を狙う。△8五飛型では△2五歩を絡める手段もある。▲3六歩△8六歩▲同歩△同飛▲3五歩△8五飛▲7五歩…といった、一見不思議な手順も謎が解けるだろう。 (2)▲2三歩(△8七歩) 銀の頭を叩いて形を崩させる。 (3)▲5六角(△5四角) 左右をにらみ、桂頭を狙う。 (4)▲6六角(△4四角) 飛を狙いつつ、2方向をにらむ。 (5)両桂の跳躍 横歩取りでは「攻めは飛角銀桂」ではなく、「攻めは飛角桂桂」。左右の桂が中央に向かって跳ねられるように意識したい。 (6)飛車のぶっつけ 飛交換を挑むときは、互いの陣形の隙をよく確認しよう。端歩が詰まっていたり、突き合っているときは、突き捨てから潜在的な隙が顕在化して、飛の打ち場所が現れることがあるので特に注意したい。また、△2三銀型での△2四飛のぶっつけの成否は近年の重要テーマとなっている。 (7)▲5六桂(△5四桂) 玉頭の歩の上に捨てる桂ではなく(それもよく出る手筋だが)、次に4四や6四を狙う控え桂。横歩取りでは△5二玉-△3二金(△7二金)の形になっていることが多いので、▲5六桂が好位置になる。同様の意味で▲7六桂や▲3六桂もある。 (8)(7筋の)突き捨てからの攻め 後手専用の手筋。△7七歩と打てるようにするのと、△7五歩▲同歩△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△7六飛と歩の背後に回れるようにするのが主な狙い。桂の活用が間に合わなさそうなときに、先に動くための一手段でもある。 (9)▲3三歩(金頭へのたたき) △3二金の形は安定感が高いので、それをタタキの歩で崩す。 (10)▲2一角(△8九角) △3二金に斜め下から働きかける。端を絡ませることも多い。4三にも利かせている。序盤の重要変化でもよく出るし、終盤の寄せの手筋としても使われる。 第3章は、一応終盤編。 (11)飛車切りからの角のつなぎ打ち △8八飛成(角を取る)▲同銀△5五角打などで、△1九角成などと△8八角成からの二枚替えを狙う。わずかな形の違いで成否が変わるような急戦定跡もある。飛を渡すリスクは常に考慮しよう。 (12)△8八歩(桂頭へのたたき) 金銀などで取らせて陣形を乱す。玉の退路を断つ効果が高い。 (13)挟み撃ち どの戦型でも有効だが、玉が中央付近にいる横歩取りでは特に意識したい。 (14)▲6一角 対△4一玉型(主に中原囲い)専用で、退路封鎖の必殺手筋。この手を意識しておくだけで勝率が上がるかも? (15)△9五角(端角) ほぼ対▲6八玉型専用。単純な王手が意外と受けにくいことが多い。▲8六銀などで遮断されないように、相手の持駒には注意する。 (16)高橋ブロック 著者の名前が付けられている。高橋独自の駒組みで、中原囲いを発展させる。手筋というよりは、中盤での考え方の一つ。△4二金寄と△3一玉を状況に応じて使い分け、戦いながら玉を固めていく。狭い意味では、△4二金寄〜△5二金寄で金2枚のブロックを作ることをいう。 第4章は、第2章〜第3章で学んだ手筋の復習問題。題材はいずれもプロ公式戦で、第2章・第3章では未登場の新規のもの。10問しかないので、16個の手筋すべてが登場するわけではないが、第2章・第3章をちゃんと読みこんだ人なら、読み切れなくても正解手に目が行くはず。手筋を覚えるというのはそういうものだ。正解手に目が行かなかった人は、まだちゃんと内容を理解できていないので、該当手筋をしっかり読み直そう。 個人的には、本書を読んだことで(1)△8六歩の合わせ、(8)7筋の突き捨てからの攻め、(14)▲6一角、(15)△9五角などが、ちゃんと言語化できるようになったのが嬉しい。 なお、本書の評価はAとしたが、これは他書との複合的な効果を期待したものである。本書だけを読んでもおそらく横歩取りが指せるようにはならない。定跡書、棋譜並べ、詰将棋などもバランスよくこなし、頭と身体の両方で理解できるようにするのが良いだろう。すでに何冊かの定跡書を読み込んでいる人にはかなり効果的だと思うので、お試しあれ。 ※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): p11下段 ×「形成を損ねる…」 ○「形勢を損ねる」 p19上段 ×「先手玉は詰されてしまう…」 ○「先手玉は詰まされてしまう…」 p35上段 ×「△8六同飛のときに▲7五歩と突き…」 ○「△8六同飛のときに▲3五歩と突き…」 p80第36図 ×「後手番(3手)」 ○「先手番(3手)」 p133下段 ×「▲1二歩成」 ○「▲1一歩成」 |