棋士
羽生善治 「人類史上、最も深く考える人」の神髄 |
[総合評価] − 難易度:− 写真: カラー143枚 モノクロ104枚 羽生ファン向き |
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【写 真】 弦巻勝 | ||||
【出版社】 双葉社 | ||||
発行:2009年4月 | ISBN:978-4-575-30120-5 | |||
定価:2,940円(5%税込) | 127ページ/27cm/H.C. |
【本の内容】 |
・【巻頭写真】羽生善治という奇跡=6p ・【巻頭対談】羽生善治×渡辺淳一「したたかな鈍感力」=11p ・七大棋戦 羽生善治激闘譜+密着ドキュメント「タイトル戦の1日」(文・椎名龍一)=23p ・揮毫扇子コレクション(文・山田史生)=5p ・【ロングインタビュー】「ゴールがあるかどうかは、わからない。でも、行ってみなくては」=10p ・羽生善治半生記「栄光への道程」=11p ・梅田望夫特別寄稿「現代版・考える人」=7p ・羽生善治をめぐる25の挿話(文・椎名龍一)=39p ((1)羽生の眼光 (2)デビュー戦 (3)八王子将棋クラブ (4)初タイトル戦 (5)村山聖九段 (6)牧場写真 (7)学生生活 (8)阿部隆八段 (9)棋士と観戦記者 (10)先崎学八段 (11)島研 (12)戌年の会 (13)中原誠十六世名人 (14)指し初め式 (15)十五世名人大山康晴 (16)羽生と囲碁 (17)羽生とチェス (18)NHK杯 (19)羽生とCM (20)将棋の日 (21)縁台将棋 (22)谷川浩司九段 (23)百面指し (24)師匠・二上達也九段 (25)将棋の子) ・団鬼六 最後の将棋随筆「名人今昔」=10p ◆内容紹介 カメラマン・弦巻氏が羽生善治の将棋人生を1冊の本に凝縮。 羽生自身のロングインタビューに加え、作家・渡辺淳一との「鈍感力」対談、作家・団鬼六の入魂のエッセイ、 「ウェブ進化論」梅田望夫の特別寄稿など、写真以外も充実した内容。 |
【レビュー】 |
カメラマン・弦巻勝(つるまき・まさる)の写真で綴る、羽生善治の写真集。 棋士の写真集といえば、『棋神─中野英伴写真集』(中野英伴/写真,東京新聞出版局,2007)がある。本書は中野と双璧である将棋カメラマン・弦巻の写真をメインに、羽生の対談、エピソード、寄稿などで綴った「羽生写真集」である。 羽生のデビューから戦勝達成までの写真による記録。大小さまざまなサイズのカラー写真143枚、モノクロ写真104枚(※羽生以外の写真も含む。自分で数えたので誤差がある可能性があります)で、羽生ファンならこれだけでも見る価値ありだ。わたしの好きな写真は「羽生にらみ」の一枚。凄い形相です。 写真以外の部分については、個別にレビューしていこう。 ●【巻頭対談】渡辺淳一×羽生善治「したたかな鈍感力」 渡辺の代表作は『失楽園』(講談社,1997)『愛の流刑地』(幻冬舎,2006)などで、得意分野は伝記、医療、性的描写の濃い男女関係(Wikipediaより)。また、2007年には『鈍感力』(集英社,2007)というエッセイ集を発表し、流行語にもなった。 この対談では、渡辺は強引に(?)「一流人には鈍感力が必要」という話に持っていこうとしているが、羽生は話を合わせつつも「ちょっとしたことに気づく」(敏感力?)、「マイペースを保つ」とあまり噛み合っていない。途中から羽生が気を遣って(?)、渡辺得意の女性の話に誘導している。 羽生語録: 「1000局以上指しているとどうしても類似してくるから実戦的・冒険的にやることはある」 「初心者の女性は駒を取っても使わない=貯蓄する」 男性の初心者もそうなのでは? ●七大棋戦 羽生善治激闘譜+密着ドキュメント「タイトル戦の1日」 タイトル戦の紹介と数々の写真。「激闘譜」と銘打っているが、棋譜はなし。 ●【ロングインタビュー】「ゴールがあるかどうかは、わからない。でも、行ってみなくては」 インタビューア不明。 ・経験を積んでくると無意識のうちに減速している。だからちょっと強めに行くことはすごく大事。 ・集団の中にいることは非常に大事。 ・一手頓死を喰らったことは結構気にしているらしい。 ・羽生はニコニコ動画に結構ハマッているらしい。 ・加藤一二三が1分でみかんを3つ食べるのを間近で見て相当感動したらしい。 ●梅田望夫特別寄稿「現代版・考える人」 梅田はIT企業経営コンサルタントで、『ウェブ進化論』(筑摩書房,2006)などの著作で知られる。近年は熱烈な将棋(観戦)ファンを前面に押し出しており、『シリコンバレーから将棋を観る』(中央公論新社,2009)では「指さない将棋ファン宣言」を提言した。本寄稿は『シリコンバレーから〜』と同様に、さまざまな参考文献や自身による羽生インタビューを引用しながら、羽生という存在を分析している。個人的には割と好き。 ●団鬼六 最後の将棋随筆「名人今昔」 団は官能小説作家で、得意分野はSM。雑誌「将棋ジャーナル」の発行を引き継いだりするなど、将棋界に貢献している。しかし、わたしは彼の文章があまり好きではないです(SMも嫌い)。 ・羽生が22歳で名人位に就いたとき、将棋雑誌に羽生糾弾の記事を書いていたとはね… ・大山が一番好きな食べ物はアンパン、二番目が鯛焼きとはね… 本書に関しては特に評価はしない。文章コンテンツは正直いって蛇足だと思うが、羽生の写真に価値を感じるなら買い。また資料として残しておきたいなら買い。かなりの大型本なので、置き場所には注意。(2009Aug25) |
【他の方のレビュー】(外部リンク) ・将棋雑談アレコレ(SDI) ・Amazon.co.jp: カスタマーレビュー ・棋書評価解説委員会 ・晴彦日記 ・かわちゃんの読書日記 |