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将棋最強ブックス 対居飛車 右四間飛車戦法 |
[総合評価] C 難易度:★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)B(量)B レイアウト:A 解説:B 読みやすさ:A 中級〜上級向き |
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【著 者】 屋敷伸之 | ||||
【出版社】 創元社 | ||||
発行:2010年7月 | ISBN:978-4-422-75132-0 | |||
定価:1,365円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
相居飛車戦での▲右四間飛車の指南書。 右四間飛車は、対振飛車だけでなく、対居飛車にもかなり有効な戦法である。特にある一定の棋力までは相当に勝ちやすい戦法だし、高段者にも通用する。さらに、自陣の囲いにはさまざまなバリエーションがあり、銀矢倉などの持久戦へ移行することも可能。逆に対右四間が苦手だという人も多いだろう。 本書は、対右四間が苦手な人には一切の配慮なく(笑)、右四間で攻めつぶす本である。なお、プロの右四間は後手番が多いのだが、本書では後手が4手目に角道を止めた場合の▲右四間である。 自陣の囲いはいろいろある、と書いたが、本書では先手の構えは常にこれ→(右図)。低い構えで飛の打ち込みに強いので、いつでも飛車切りが可能で、攻め筋が分かりやすいのが大きな特徴。『野獣流攻める右四間』(泉正樹,MYCOM,2009)では「かにのほろ酔い囲い」と呼ばれている構えだ。 第1章は▲右四間に対し、△矢倉で受けてきた場合。 A: 後手がおとなしく矢倉を組む展開。 (1)△2二玉: 玉が矢倉に入城。玉が角筋に入っており、簡単につぶせる。右四間の威力を端的に示した展開。 (2)△3一玉型: 後手が対策を知らない場合にはかなりありそうな展開。 B: 矢倉+△6四角型。△6四角のけん制は矢倉の定番だが、右四間には効果が薄い。 (1)△2二玉型: やっぱり簡単につぶされる。 (2)△3一玉型総矢倉: これもよくありそう。金銀3枚で4四の地点を守って堅そうだが、▲4五歩の仕掛けに△同歩とできない(▲同桂で銀の両取り)ので、受けになっていない。 C: △2二角型〜△4二銀左: 一応まともな受けの形。ただし△3三銀を△4二銀左と引くので2手損、反撃がかなり遅れている。角交換後の▲7七角に対し、後手の応手は(1)△4四銀 (2)△3三桂 (3)△1二玉 (4)△3三角 (5)△4四角の5つに分かれる。 第2章は、△矢倉で受けてきた場合に▲3八飛から一歩交換して右四間にする形。3筋の歩を切って1歩持っているので、▲3三歩のタタキが生じており、第1章よりもさらに破壊力が増す。ただし、手がかかっているので後手からの反撃はそれなりにあると思うが、本章でも後手は比較的おとなしく指しているので、ボコボコにつぶせる。なお、この章の構成は第1章とほぼ同じなので省略する。 第3章は、△雁木型で受けてきた場合。最初から雁木を目指した相手に右四間をぶつけるのではないので注意。飛落定跡(下手右四間飛車)とかなり似ているが、本書の展開では▲7一角が切り札になるため、飛落定跡よりも分かりやすい(※飛落定跡では目標とすべき飛がおらず、かわりに△7二玉がいるため、▲7一角は切り札にならない)。 本章でも後手は自然な応対をしているように見えるが、かなりココセが多い気がした。 p168では△4四同角が本筋? p177では△5四金が本筋? p146は▲3一角に△4二飛打? ところで、いつも▲7一角を打たれて困るのなら、飛落上手のように△6二玉型で戦う手はないのだろうか?本書には載っていない。(※『野獣流〜』には載っていた) 第4章は、△一手損角換わりに対する右四間飛車。▲2五歩△8四歩型で有効。▲2五桂の余地がなくても右四間にいけるところが面白い。基本は2つで、 (1)▲3八金と上がる(桂を跳ねた後の△3七角を消す) (2)左銀を▲6六銀〜▲5五銀左と中央に参加させる。 と分かりやすい。この戦型は、一手損角換わりで先手が腰掛銀に誘導すれば実現しやすく、△8四歩留めをとがめる変化も出てくる。p206〜p208の寄せ方を知っていると2〜3勝は違ってくるだろう。 「定跡書」でもなく、「解説書」でもなく、「指南書」と書いたのは理由がある。本書の場合、ほとんどの変化で後手が最善手を指してるわけではない。特に「後手は○○としてきた」という表現が非常に多い。一応、その指し手を選んだ理由は書かれているのだが、「それは後手の自爆では?」という手はかなり多い。 一方、ところどころで分かりやすい言葉を出しているのは○。「△2二角型には角交換」(p35)、「銀には銀、桂には桂」(p37)など。 「分かりやすさ重視」の本なので、級位者〜初段くらいの人なら読んでみるといい。ただし、有段者になると本書のようには潰れてくれないので、鵜呑みにはしないことだ。(2010Jul23) |