駒の手筋を詳しく解説した本。初段前後向け。
手筋とは何か。本書では、次のように定義されている。
「手筋というのは、元来、大長考したあとに発見するようなものではなく、この形ならこの手が筋だ、手筋とはこうやるものだという第一感が先に働き、そのあとでそれで本当によくなるかどうかを読むという性質のものです。」(p168) |
将棋というゲームは、無効な手も含めて読みを入れると、あっという間に変化の量が発散してしまう。しかし、手筋を知っていれば、有効な(可能性の高い)手にすぐ絞ることができ、あとはその確認をすればよい。特に級位者クラスから初段くらいまでは、基本手筋をたくさん知ることで、棋力が大幅アップする。
本書は、基本的な手筋を「攻め」「受け」「寄せ」に分類し、さらに駒別に細分化して詳しく解説したものである。
本書の基本構成は以下の通り。
【基本構成】
(1)[基本](部分図)
部分図を使って、手筋の基本的な狙いと効果を解説。
(2)[基本](全体図)
全体図(実戦図)を使って、手筋がどのように使われているかを解説。
「部分図」と似た形の全体図であることが多い。
(1)と(2)で見開き2ページ。
(3)[応用](全体図)
(2)とほぼ同じだが、プロの実戦で手筋がどのように使われているかを解説。
(3)だけで見開き2ページ。(3)がない手筋もある。
(4)[上級](全体図)
たまに(3)の後ろに追加されている。
内容は(3)とほぼ同じ。
【フォント】
解説の基本フォントは明朝体、本手順は太字ゴシック体で強調してある。 |
さて、読んだ感想を箇条書きにて。
〔良かったところ〕
・全体図を使った解説が充実している。
狙いが端的に実現している例ばかりではなく、相手がどのように抵抗してくるか、いくつかの手筋がどのように組み合わせて使われているかが分かる。
〔物足りなかったところ〕
・手筋の項目数が足りない。
「事典」を名乗るからには、これまで世に出た基本手筋のをすべて網羅しているくらいの勢いを期待していた。
・[基本](部分図)→[基本](全体図)でのジャンプが大きい。
急にレベルが上がる感じがした。
※というか、本書が想定している棋力は、もともと一通りの手筋(例えば「羽生の法則」シリーズくらい)は知っているレベルなのかもしれない。
これまで、手筋がプロの実戦の中でどのように使われているかをガッツリ解説した本というのはあまりなかった。本書の内容は、手筋の習得が必要なレベルの人にとっては少し難しいかもしれないが、多くの手筋を見ることで、今後の勉強(例えば棋譜並べ)などの理解がしやすくなるかと思う。
「有段者に薦められて棋譜並べをやっているが、よく分からない…」という人には、ちょうどいい本だろう。対象棋力とニーズにジャストフィットした人が読めば、Aの価値があると思う。(2011Mar11)
※誤字・誤植等(第1版第1刷で確認)
p41 ×「また△4六玉なら▲4七金△5五玉を決めて、▲5三角成で…」
○「また△4六玉なら▲4七金△5五玉を決めて、▲5三歩成で…」
p69第4図 ×角が3枚ある。(▲8八角+持ち角2枚)→p69第4図の誤植と改善案
p82〜83 ×第1図が2つある ○p83上段図を「第2図」にする
p124 ×「一方向に攻められては」 ○「一方的に攻められては」
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