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詰将棋一丁目三番地 1手・3手詰将棋+上達アドバイス |
[総合評価] A 難易度:★☆ 〜★★☆ 見開き2問 内容:(質)A(量)S レイアウト:A 解答の裏透け:A 解説:B 初級〜中級向き |
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【著 者】 森信雄 | ||||
【出版社】 実業之日本社 | ||||
発行:2014年10月 | ISBN:978-4-408-33313-7 | |||
定価:1,080円 | 408ページ/16cm |
【本の内容】 |
・1手詰=120問 ・3手詰=240問 ・【コラム「将棋上達のアドバイス」】 (1)打ち込みの攻め、ガツーン! (2)殴り込みの攻め (3)六枚落ちの端攻め (4)歩を打たれた瞬間に攻める (5)角のにらみは怖いぞ! (6)終盤は「玉に迫る」感覚を身につける (7)一歩の力で攻めがパワーアップ (8)破壊力抜群!金の打ち込み (9)飛車の打ち込み場所 (10)寄せのテクニック!頭金の詰みを狙う (11)執念深く!竜とと金の攻め (12)必勝!詰めろをかける@ (13)守りの駒をはがす!打ち込みの攻め (14)攻め一本!詰めろをかけるA (15)終盤の寄せ、状況を知る (16)必至=実戦での微妙な差 (17)終盤のアヤ、臨機応変に! ◆内容紹介 『逃れ将棋』(2014.01)で第26回将棋ペンクラブ大賞を受賞した著者の最新作。1手・3手の詰将棋に上達のアドバイスを加えた新趣向の本。 実戦に出てくる「1手3手詰め」は詰将棋の5手7手9手に匹敵する。確実に1手3手詰めを詰ませるようになれば、実はかなりの棋力。詰将棋は解くものだが、(1)考えて解く(2)見て解く(3)見る前に解く(!?)の三段階のレベルがあり、スタートは(1)考えて解くからだが、 徐々に(2)(3)の段階に移っていくのが理想。将棋の醍醐味は「新たな遭遇」の中で「自分なりの解決法を見出す」こと。詰将棋はそういう将棋の思考法のトレーニング。 本書は入門から初級向けだが、中級以上の方にも十分楽しめる要素もある。出題は2題で1問という新工夫をし、2題解いて思考のスイッチを切り替えられるようになっている。明快でやさしい問題も多いので、指導者用のテキストにも最適である。また、前半が1手詰60問(120題)、後半が3手詰120問(240題)とボリュームたっぷりの出題量も本書の特徴の一つである。 問題10問ごとに全部で17ある「上達のアドバイス」も掲載。次の一手問題が3題1組で出題されており、「将棋は一歩ずつゆっくり歩くように指すのがいいのだが、それは序盤から中盤にかけてのことだ。中盤から終盤にかけては、攻めは激しく、守りは自信を持って指す」「攻めはやや無理気味っぽいくらいがちょうどいい」「駒はぶつかったときに存在感がある」「駒をぶつける、その瞬間に勝負の火花が散る」「角の斜めの攻めは受けにくい」などのアドバイスが詰まっている。 |
【レビュー】 |
1手・3手の超短手数詰将棋問題集。 本書の特徴は、形が非常によく似ていて詰め方の違う問題が2問一組になっていること。『逃れ将棋』(森信雄,実業之日本社,2014.01)などで採用されたものだ。ほとんどの駒の配置は同じで、持ち駒も同じなのに、わずか1〜2ヶ所の違いがあるだけで詰めて順が全く違うものになるという、詰将棋の面白さの一角をガッツリと堪能することができる。 下図2つは、その一例。持駒なしで、攻め方の馬や銀、玉方の玉の位置などは同じで、唯一の違いは△1三歩のみ。これだけで詰め方は全く変わってくる。 詰将棋の難易度は、1・3手詰めとしてはオーソドックス。10段階でいうとLv.3〜5くらいか。並べ詰めのような易しすぎる問題や、著者の森が得意としている大駒大転回系のような難しくて不安定感の強い問題は本書にはほとんどない。 なお、両王手や合い利かずは普通に出てくるので、「詰将棋はまったくの初めて」という方は、さらに易しい本から始めたほうが良いかもしれない。 通常であれば、上級者以上にはかなり易しく感じるだろうが、本書では2問一組の構成が効いていて、1問目の詰め方が頭に入っている状態で解くため、2問目で「んんっ!?」となることは結構ある。 本書のボリュームは、全360問とたっぷり。普通の構成であれば「飽き」が来てしまうが、本書では10組(20問)ごとに「将棋上達のアドバイス」というコラムが2pずつある。つまり、詰将棋と併せて411問の大ボリュームとなる。コラムには、詰将棋以外で実戦に役立ちそうな易しい手筋や考え方などが各3問ずつ載っている。「飽きてきたな」or「疲れてきたな」と感じても、「次のコラムまで頑張ろう!」となりやすいのが○。 まえがきには、初心者から中上級者まで対応している旨が書かれていて、まさにその通り。初心者は、盤に並べて、駒を動かしながら詰みを確認していこう。少しできるようになったら、図面だけを見て頭の中で考えてみよう。中級者以上は、タイムアタックをしてみるなど、できるだけ速く解ける練習をしてみよう。有段者からアマ強豪クラスでも、時間制限をきつくすることによって対応できる。例えば、大会に出向く途中の電車の中で「次の駅でドアが開くまでに○問解く」などと設定してみるとよい。 また、これもまえがきに書かれているが、子どもたちへの指導者用の教材としてもオススメ。似た形が1セットなので、まず上段の形を並べて解かせ、「じゃぁこれは?」とちょっと形を変えるという使い方ができる。前の手順が頭に残っているので、「同じじゃん……あれ?」となりやすく、興味が持続するだろう。 詰将棋本では、万人向けの本を作るのは難しいと思っていた。過去の(別の著者の)本では、1手詰から9〜15手詰くらいまでを一冊に収めて「初心者から有段者まで」としているケースが非常に多かったからだ。しかし、本書のような工夫をすることで、幅広い層に“本当に”対応している詰将棋本が作れたのだ。 編集思想には著作権はないので(たぶん)、今後の他書でも大いに真似ていただきたい。あっ、森先生には「これ良かったのでウチでも使わせてください」の一言くらいは入れたほうがいいですよね、大人の対応として。(2015Feb26) ※誤字・誤植等(初版第一刷で確認): p182 問題78-2 解答の不詰め手順で、△2一歩があるのに△2四歩合で詰まないとある。実際は△2四桂合などで詰まないので、問題は成立している。(MIOさんご指摘thx!) p342コラム解説 ×「▲2二金」 ○「▲2二金打」 |