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■逃れ将棋

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逃れ将棋
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逃れ将棋 [総合評価] A

難易度:★★★
  〜★★★★

見開き1問
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解答の裏透け:A
(正解手以外はC)
解説:A-
中級〜有段向き

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【著 者】 森信雄
【出版社】 実業之日本社
発行:2014年1月 ISBN:978-4-408-33306-9
定価:1,050円(5%税込) 412ページ/15cm


【本の内容】
第1章 逃げ方を考えよう=100問
第2章 合い駒を考えよう=100問

◆内容紹介
詰将棋作家として定評のある著者が、満を持して放つ将棋界初の
逆詰将棋問題集にして、勝利に直結する初級・中級者向けの最強の上達本。逃れ将棋は将棋のジャンルではまさしく新分野で、具体的には「王手のかかった局面でどう逃れるか?」の問題集。

著者は著者が開いている将棋教室の入門コースで出題のヒントを得た。将棋の上達法として一般的には「攻めの力」が大切だが、実戦で案外見逃されがちな「受けの力」も必要である。終盤の土壇場でいかに冷静に対応するか、合い駒をするか、それとも玉を逃げるのか、この難しさは勝負の急所でミスれば、即負けに直結する。そんな大事な王手のかかった局面での「鍛えの入ったしのぎパワー」を本書で磨き、なかなか勝てない憎きライバルを倒そう!


【レビュー】
詰みの逃れ方を考える次の一手問題集。

こんな経験はないだろうか。相手の玉に必至をかけたら、自玉への王手ラッシュから華麗に詰まされガックリ…と思ったら、適切に対応していれば詰まなかったことが感想戦で判明。いわゆる「頓死」である。これは、かなり悔しい負け方だ。(このあと、「調子がいいのにウッカリミスで負けた!」とアツくなって連戦してしまい、どんどん指し手が雑になり、気が付いたら2勝8敗くらいで夜明け前、R点はダダ下がり…という展開が必定(笑))

頓死を防ぐには、自玉を正確に読むしかない。しかし、相手玉へ迫る「詰将棋」や「必至問題」の本は世の中に溢れているが、「凌ぎ」の本は非常に少ない。凌ぎ力を付ける訓練法は、「詰将棋を解く」とか、「詰将棋を逆さにして解く」などがあるが、いずれも凌ぎのトレーニングとしては効率が悪かった。

そこで、短手数詰将棋のマジシャン・森信雄が立ち上がった。

本書は、棋書史上初の「王手をかけられた局面からの詰み逃れ」を専門とする問題集である。(類書は『凌ぎの手筋186』(金子タカシ,高橋書店,1990)や『実戦に役立つ詰め手筋』(勝又清和,MYCOM,2008)などがあるが、一冊丸ごとの専門書は初めて)



「逃れ将棋」は新ジャンルということで、ルールは本書独自の暫定的なもの。

〔ルール〕
○自玉に王手がかけられている状態で、詰みを逃れる次の一手を解答する。
  ・正解であれば詰まないので、手順を最後まで当てる必要はない。
  ・解答候補は、合駒(中合いもある)、玉を逃げる、王手をかけている駒を取る、のいずれか。
  ・正解は一つだけ。他の候補は詰む。
   正解手だけ読み切れればよいが、できれば他の応手の詰み筋も確認したい。
○攻め方(逃れ将棋では後手側)の持ち駒は限定されている。
○受け方(逃れ将棋では先手側)は、七色の持ち駒(飛角金銀桂香歩)を持っている。

  ・持ち駒は、各1枚ずつ。
   →このルールは、今後「残りの駒すべて」などに変わる可能性がある。
  ・盤上や攻め方の持ち駒に出尽くしている駒は、受け方の持ち駒ではない。
   (例)金が盤上に2枚、攻め方の持ち駒に2枚ある場合は、受け方の持ち駒に金はない。
○他のルールは本将棋に準ずる。
  ・禁じ手の打歩詰めや、連続王手の千日手に誘って凌ぐパターンが時折出てくる。



詰将棋の出題の場合、平凡な手順は価値が低いとみなされ、どうしても手順に「作品性」を求められてしまう。それゆえ、解く側も詰将棋的な好手・妙手は読めるようになってくるが、俗手を読む力は案外身につかないものである。本書では実戦的な詰み手順が随所に(もちろん不正解手の方に)現れ、読みのトレーニングに相当役立つ。

本書を解く場合は、第2章から始めるのがオススメ。第2章は合駒問題に限定されており、利きのないところに合駒する中合いも2問しか出てこないので、比較的手が狭くて論理的に読みやすい。一方で第1章は、タイトルが「逃げ方を考えよう」なのだが、実際は玉を逃げるだけでなく、合駒・中合い・▲同○と取るなど、手が広いので少し難易度が高くなっている。

合駒を考えるときは、七種類を一つずつ読んでいってもよいが、駒の特性を考えると効率的。例えば、「前に利く駒」を合い駒したときにすべて同じ詰み筋が発生する場合、候補は角桂に絞られる。駒の特性を一覧にしてみたので参考にしてほしい。




本書では基本的に、非常に似た形の2問がワンセットになっている(第2章では3問以上がワンセットになっている場合もある)。ごくわずかな違いで正解手が変わってくるのが、当然とはいえ驚きだ。

下図は第57問と第58問。違いは▲1九香の有無だけだ。一度考えてみてください。

この「2問ワンセット」が個人的にはかなりのヒットだ。1問目が難しくて解けなかった場合でも、解説の詰み手順をしっかり理解すれば、2問目はかなり詰み筋を読みやすくなり、正解率が上がる。答を覚えてしまうのとは違って、改めて読み直しになるので、読みが雑になることもない。ちょっとキツイ難易度でも正解にたどり着けるようになるので、モチベーションを保ちやすく、途中で投げ出しにくくなっている。



解説は、正解手での逃れがハッキリするまでの手順や、不正解手での詰み手順などが精緻に記されている。ただし、「前に利く駒」とか「横に利かない駒」といった、駒の利きでの分類がされていないのが惜しいところ。また、厳密には違う手順の不正解手がまとめられていたり、簡単すぎる(?)応手はときどき省略されていたりするので、自分で補完する必要がある。



「逃れ将棋」が新ジャンルとして定着するか、追従者が出てくるかどうかは未知数だが、少なくとも実戦の棋力を向上させる手段としては大いに有効だと思う。解けなかった問題をチェックしておいて、マスターできるまで頑張れば鬼に金棒。

自玉の頓死をなくし、逆に相手が受け間違えたら頓死を喰わせる力を、ぜひ本書で付けていただきたい。(2014Feb27)



【関連書籍】

[ジャンル] 
受けの手筋
[シリーズ] 
[著者] 
森信雄
[発行年] 
2014年

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