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詰めろ将棋 | [総合評価] S 難易度:★★ 〜★★★★☆ 見開き2問 (一部は見開き1問) 内容:(質)A(量)A+ レイアウト:A 解答の裏透け:A 解説:B+ 中級〜高段者向き |
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【著 者】 森信雄 | ||||
【出版社】 実業之日本社 | ||||
発行:2016年5月 | ISBN:978-4-408-11186-5 | |||
定価:1,188円 | 384ページ/15cm |
【本の内容】 |
・この本の特徴=5p PART1 詰めろ 001〜140 PART2 詰めろ逃れ 141〜280 ◆内容紹介 初級・中級者の一番の弱点である終盤力を詰めろ問題に絞って収録し、その強化を目指す。「詰めろ」と「詰めろ逃れ」の2部構成。 |
【レビュー】 |
「詰めろ」と「詰めろ逃れ」の問題集。 「詰めろ」といえば、「(受け方が何もしなければ)次に詰ますぞ」の意味。そして、「これ以上受けようのない詰めろ」が「必至」となる。必至問題集はたくさんあるものの(詰将棋本に比べればずっと少ないが)、必至問題は「受け方の持駒は残り全部」が基本となっているため、駒の配置が実戦的でなかったり、攻め駒が過剰設置されていることも多い。 しかし実戦での詰めろは、受け方に七色の持駒があることはほとんどなく、持駒は限定的だ。ならば、攻め方・受け方ともに持駒が限定された問題があっても良いはず。それが本書の「詰めろ」問題(持駒限定の必至問題)である。 詰めろをかけるといっても、どの問題もたいてい2種類以上の詰めろをかけることができるようになっている。この中で、相手を受けなし(=必至)に追い込むことができる手が正解だ。もちろん実戦では、大駒を王手で切ったりして持ち駒に変化が生まれる(受けが復活する)こともありうるが、とにかく現状で必至になる手を探そう。 例えば、〔右図〕の問題002。難易度★1の易しい問題で、▲3四桂で次の▲2二金を狙う詰めろと、▲2四桂で次の▲1二金を狙う詰めろの2つが考えられる。このうち、▲3四桂が正解で、▲2四桂の方は△2二玉で逃げられてしまう。 「詰めろ逃れ」の方は、出題図では自玉に詰めろがかかっている状態となる。いくつかの受けが考えられるが、受け切りor脱出成功になる手が一つだけある。つまり、現状の詰めろを防ぐだけでなく、次の詰めろも回避できる手を読むこと。こちらも「詰めろ」問題と同様、攻め方・受け方ともに持駒限定の凌ぎである。 例えば、〔右図〕の問題179。シンプルな盤面だが、難易度★4の難問だ。 現状は△2六桂▲2九玉△3八金までの詰めろがかかっている。単に△2六桂を防ぐ▲2七歩は、△3六桂と次の詰めろが来て受けなしになる。また、△3八金を防ぐ▲3九歩も、△3五桂や△3六桂の詰めろを防げない。よって、△2六桂を打たせず、かつ、別の桂打に対して歩を残しておく必要がある。(正解は本書にてどうぞ) 「詰めろ」と「詰めろ逃れ」のいずれも、「勝ちになる詰めろ」と「勝ちになる詰めろ逃れ」が正解というわけだ。 本書の問題は、基本的に2問一組で、一見よく似た問題がセットになっていることがほとんど。わずかな違いで答えが変わってくることがある。後半は見開き1問になって1行ヒントが追加される。 また、難易度は★1〜★5の5段階。★1は3手詰〜5手詰を解く棋力があれば大丈夫だが、槓や直感で取り組んでいると意外とウッカリすることも多い。ナメずに、しっかりと読みを入れよう。 なお、ある棋力の人が、本書の★1〜★5まですべてちょうどよく楽しめる、ということはない。棋力に合った挑戦の仕方が必要である。たとえば級位者はなんとか★1をマスターして★2にチャレンジする。有段者は★3〜★4を読み切れるようにして、★5はなんとか解説を読んで理解できるようにし、★2は対局前のウォーミングアップにする、といった提案ができる。そういう意味では、全280問のうち、ある人が有効活用できるのは100〜200問程度に減ってしまうかもしれない。 一応、解答は1手答えれば正解だが、正解できた時でも解説をしっかり読もう。攻め誤ったときの凌ぎ方、、受け誤った時の必至のかけ方が参考になることも多いし、次問の伏線になっていることもある。 その解説だが、特に「詰めろ逃れ」の方で、少しだけ不満がある。正解手や候補手の変化は必要最低限は書かれているが、「現状はどのような詰めろがかかっている」⇒「だから○○を防ぎたい」⇒「Aは△△があるので、…Bで両方を防ぐ」というような三段論法の書き方や、受けの考え方があまり書かれていないため、正解できなかったときに理解しづらいことがある。 本書では、詰み筋が難しいものはほとんどないので、「実力アップのためにはそのくらいは自力で考えなさい」ということなのかもしれないが、あとちょっとの工夫でもっと神本になったのになぁ、と思うのである。 ところで、実は、この「詰めろ」問題集や「詰めろ逃れ」問題集の分野は、初めてではない。 「受け方の持駒を限定しない詰めろ」は必至問題集そのものだし、本書のような「受け方の持駒限定の詰めろ」は、さまざまな寄せの問題集に現れている。また、『寄せの手筋168』(金子タカシ,高橋書店,1988)という名著もある。ただし、『寄せの手筋168』は、「その局面の最善手」を要求していて、必至をかけて良しと思ったら即詰みがあった、ということもあり、詰めろ専門ではなかった。 また、「詰めろ逃れ」は『凌ぎの手筋186』(金子タカシ,高橋書店,1990)が先駆者。ただし、『凌ぎの手筋186』は「詰み逃れ」と「詰めろ逃れ」のセットだった。 というわけで、「詰めろ将棋」も「詰めろ逃れ将棋」も、森信雄がファーストペンギンというわけではないのだが、再発見・再開拓したといってもいいだろう。この分野を練習することは実戦力向上に大きく役立つので、ぜひとも続けていただきたい。もちろん、他の作者が現れることも期待している。 本書をコンプリートすれば、実戦的に必至をかけたり、頓死や頓必至を防いだりすることで、確実に勝率がアップするだろう。わたしは実際に、本書に取り組んで2週目を試している期間中は丁寧に指すことができ、将棋の内容も勝率も満足いくものだった。多少受け将棋気味になった感じがあるので、もしかしたら超早指しの切れ負けには向かないかもしれないが、寄せも鋭くなった感もある。 いくつかの小さな不満点があるにしても、実用効果を鑑みれば本書の評価Sが落ちるほどではない。「最近見落としが多くて…」と感じている人には超オススメしたい一冊。 ※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): p180 ×「△2二馬なら▲4一金…」 ○「△2二角なら▲4一金…」 p192 ×「▲2二歩は打ち歩詰めになる」 ×「▲2二歩は二歩になる」 |