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■棒銀と中飛車で駒落ちを勝て!

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棒銀と中飛車で駒落ちを勝て!
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NHK将棋シリーズ
棒銀と中飛車で駒落ちを勝て!
[総合評価] A

難易度:★★
  〜★★★☆

図面:見開き3〜4枚
内容:(質)A(量)B
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
初級〜上級向き

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【著 者】 高橋道雄
【出版社】 NHK出版
発行:2011年8月 ISBN:978-4-14-016192-0
定価:1,260円(5%税込) 256ページ/19cm


【本の内容】
・駒落ちの基礎知識=2p
1章 棒銀戦法で上手に勝て! ・棒銀戦法の基礎知識=4p
・六枚落ち スピードアップの垂れ歩で攻略
・四枚落ち 意表の銀捨てで強行突破
・二枚落ち 矢倉に囲ってガンガン攻めよう
・飛香落ち 銀のドリブルで角を狙おう
・飛落ち 目指すは速攻の金銀交換!
・角落ち 突き捨ての連続で攻めつぶそう
98p
2章 中飛車戦法で上手に勝て! ・中飛車戦法の基礎知識=4p
・六枚落ち タイムリーな角出で端から速攻
・四枚落ち 銀のさばきで堂々と中央突破
・二枚落ち 地下鉄飛車でからめ手から攻略
・二枚落ち 棒銀?の感覚をいかして戦おう
・飛落ち 位取りには穴熊でGO!
・角落ち 継ぎ歩の秘手で桂頭攻めを加速
98p
3章 手筋を応用して平手も勝て!   50p

・【コラム】原始棒銀の使い手/チャレンジャー

◆内容紹介
NHK教育テレビで放送された『高橋道雄の自由に指そう! 楽しい駒落ち』に加筆・再構成。棒銀と中飛車ですべての駒落ちに対応する方法を丁寧に解説。駒落ちだけで通用するのではなく、平手にも応用できる手筋や考え方が満載。


【レビュー】
従来の定跡にとらわれない、新しい駒落ち解説書。NHK将棋講座「高橋道雄の自由に指そう! 楽しい駒落ち」(2010.10〜2011.03)に加筆修正してまとめたもの。

「駒落ちの既存定跡にこだわらず、自由に指そう」──これが本書のテーマである。

駒落ちには、手合いごとにそれぞれ優秀な既存の定跡がある。ここで「既存定跡」とは、『将棋大観』(木村義雄,日本将棋連盟、1976など)や『【決定版】駒落ち定跡』(所司和晴,日本将棋連盟,2000/2010)に載っている定跡だと考えて差し支えない。初めて駒落ちを上手と指すとき、たいてい最初は感覚がつかめずに負けるわけであるが、そうすると「定跡を覚えなさい」ということになる。(※下手が勝った場合は「手合い違いですね」となることが多い)

しかし、駒落ち定跡には大きな違和感を感じるものがいくつもある。例を挙げると、

 ・六枚落ち: 4手目の下手▲6六角、角を切って香〜飛と成っていく
 ・四枚落ち: 下手が角道を開けず、居玉棒銀で攻め切る定跡
 ・二枚落ち: 序盤早々の下手4筋位取り
 ・飛香落ち: 1筋の歩を飛で切ること
 ・飛落ち: 下手右四間で、上手の一番堅いところを攻めること


など。もちろん、これらは先人の知恵の積み重ねで、ちゃんと理屈も通っており、定跡としての価値を否定するものではない。

ただ、「平手に応用できないのではないか」──という感触を多くの人が持っているはずだ。そして、それが「駒落ち定跡を覚えても仕方ない」という一部の意見につながっているのである。

本書では、既存の駒落ち定跡にとらわれず、新しい指し方を提案している。高橋はかつて『駒落ち新定跡』(高橋道雄,創元社,2005)でも同様の提案をしているが、本書のものは『駒落ち新定跡』にも載っていない新しい指し方である。

方針は、大きく2つ。

 ・上手の薄いところを、筋良く攻める。無理攻めと紙一重の攻めはしない。
 ・平手に応用の利く手を本手とする。


これらの方針は、本書で紹介されている戦法すべてに一貫している。


各章の内容と戦法を紹介していこう。

第1章は棒銀。冒頭の「棒銀戦法の基礎知識」では、平手での棒銀の紹介と、その目的(飛先突破、銀交換など)を解説。これは、駒落ちで覚えたことを平手に応用するのを前提としているからだ。
第1章:棒銀
手合い 概要
六枚落ち 棒銀と香で1筋から突破する。既存定跡の角切りと違って、厚い攻めができるので紛れなく勝ちやすい。
四枚落ち 1筋・2筋の攻め方は既存定跡とほぼ同じだが、本書では戦いの前に角の活用と自陣整備を推奨している。
二枚落ち 上手の守備駒が多いので、まずはしっかり矢倉に囲ってから棒銀を繰り出す。1筋〜3筋で上手の金銀をダンゴにして木偶にできれば大成功。
飛香落ち 従来定跡では、下手は1筋の歩を飛で交換して、▲1二歩と垂らして…というのがどの定跡でも共通だった。
本作戦では、違う形で1筋の弱点を衝く。1筋の歩交換はせず、棒銀が1筋に出ようとしたとき、△1四歩と追い返せないのを利用していく。棒銀が捌けないときに引く手も覚えよう。
飛落ち 平手の「対振飛車・5七銀左急戦」と同じような形から棒銀にいく。上手は飛がいない分だけ、カウンターの力が足りない。
角落ち 下手矢倉+棒銀。急戦矢倉風に組んで、上手に歩を持たせないのが本書の工夫。上手から攻められる前に攻め切ってしまう。

第2章は中飛車。第1章と同様に、「中飛車の基礎知識」で平手でのツノ銀中飛車や角交換系中飛車の概要を解説。

第2章:中飛車
手合い 概要
六枚落ち 中飛車に構えて上手の金銀を中央に引き付け、薄くなった9筋を角桂で攻める。従来定跡ではいきなり▲6六角から角を切って、9筋から香〜飛の順で成っていくが、本作戦の方がはるかに筋がよい。
四枚落ち 四枚落ちでは上手の銀が前に出てくるので、位取り中飛車ではなく、5筋歩交換をしておく。そして▲5六銀の好位置につけて、玉型を整備。駒組みが完了したら、平手の▲中飛車と同じような攻めができる。
二枚落ち 銀多伝ではなく、普通の中飛車。上手が中央を厚くしてきたら、下段飛車から上手の薄いところに振り直していく。「薄い位への反発」「歩越し銀には歩で対抗」も忘れずに。
飛香落ち (なし)
飛落ち 下手は5筋位取り中飛車。▲6五銀と出て、上手の6〜7筋の歩を突かせないようにするのが序盤のポイント。すると上手は主張点を求めて3筋方面の位を取ってくるので、それに呼応して振り穴にする。下手の飛を8筋に転戦すれば、相振り風の形になる。
角落ち 30年位前から角落ちでの下手中飛車はスタンダードになっている。序盤で早めに5筋の歩交換をしておき、上手が右桂を跳ねたら、7筋に転戦して桂頭を継ぎ歩で攻める。ここでも「上手の薄いところを攻める」という、本書の一貫した思想が入っている。また、玉の堅さを生かした飛切りも頭に入れておく。

第3章は復習。単なるページ埋めではなく、「駒落ちと平手のリンク」を感じるためには重要な章だ。

次の一手形式の問題が24問あり、復習問題1問と応用問題1問がワンセットになっている。復習問題は第1章・第2章の復習で、応用問題はその筋が平手でどのように使えるかを問う。解説がかなり詳しく、駒落ちと平手がつながっていることがよく理解できる。

なお、最終ページには採点表があり、本文の参照ページも記してある。これにチェックすれば、自分がマスターしていないのはどこか、どのページを見直せばよいのかが、すぐ分かるようになっている。


本書で目からウロコだったのは、「上手はできれば…(中略)…位を取りたい。ひとつの位が取れると、そこを拠りどころとして上手は戦えるからです。逆に位が取れないと、上手としてはけっこう困ります。」(p42)という点。この一文だけではなく、他にも何度か出てくる。

角落ちで位負けしないのは知っていたが、その他の手合いでも上手に位を取らせないほうが手段を消せる、というのはあまり気づいていなかった。最近は上手を持つこともあるので、「位」には気をつけて指してみたい。

なお、本書の作戦の中には、上手の主張である位に反発していく指し方もあるので、参考にしてほしい。


従来の定跡を覚えるのがイヤで駒落ちを指さないという人には、一度手に取っていただきたい一冊。「強い人と駒落ちで指せば、平手の上達も早いよ」という肯定的な意見も、実感できるかと思う。(2011Aug23)



【関連書籍】
 『
駒落ち新定跡
[ジャンル] 
駒落ち定跡
[シリーズ] 
NHK将棋シリーズ
[著者] 
高橋道雄
[発行年] 
2011年

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