zoom |
小学館文庫 羽生善治 好機の視点 |
[総合評価] B 難易度:★★★★ 図面:見開き1〜2枚 内容:(質)B(量)A レイアウト:B 解説:B 読みやすさ:B 上級〜有段向き |
||
【著 者】 羽生善治 | ||||
【出版社】 小学館 | ||||
発行:2003年8月 | ISBN:4-09-405751-X | |||
定価:476円 | 215ページ/16cm |
【本の内容】 |
(1)ロンドン対局(1992年9月 1.丸山忠久 2.南芳一 3.谷川浩司) (2)振り飛車の系譜(1992年11月 1.脇謙二 2.神崎健二 3.屋敷伸之) (3)コピー将棋(1992年12月 1.丸山忠久 2.村山聖 3.谷川浩司) (4)見たこともない展開(1993年1月 1.宮坂幸雄 2.青野照市 3.中田宏樹) (5)阪田流向かい飛車(1993年2月 1.加藤一二三 2.森安秀光 3.神崎健二) (6)勝負勘の維持(1993年4月 1.谷川浩司 2.南芳一) (7)薄氷を踏む勝利(1993年5月 1.高橋道雄 2.小野修一 3.福崎文吾) (8)臆病風(1993年6月 1.加藤一二三 2.谷川浩司 3.高橋道雄) (9)チェスのエンドゲーム(1993年7月 1.谷川浩司 2.郷田真隆 3.南芳一) (10)スーパー四間vsイビアナ(1993年8月 1.泉正樹 2.加藤一二三 3.小林健二) (11)優れた新手 (1993年9月 1.伊藤果 2.谷川浩司 3.畠山成幸) (12)好手が潜む(1993年10月 1.郷田真隆 2.中原誠) (13)時代は巡る(1993年11月 1.佐藤康光 2.森内俊之 3.加藤一二三) (14)宗歩に学ぶ(1993年12月 1.米長邦雄 2.谷川浩司 3.塚田泰明) (15)結論が出ない不安(1994年1月 1.谷川浩司 2.田中寅彦 3.谷川浩司) (16)桂の破壊力と意外性(1994年2月 1.青野照市 2.中原誠 3.南芳一) (17)初めて尽くしの名人戦(1994年4月 1.米長邦雄 2.米長邦雄) (18)持久戦調の金と銀 (1994年5月 1.米長邦雄 2.谷川浩司 3.米長邦雄) (19)苦手相手の演じた“趣向” (1994年6月 1.塚田泰明 2.谷川浩司 3.田中寅彦) (20)谷川先生の振り飛車(1994年7月 1.谷川浩司 2.郷田真隆) (21)ひねり飛車の工夫 (1994年8月 1.中村修 2.室岡克彦 3.郷田真隆) (22)飛先交換腰掛け銀(1994年10月 1.森内俊之 2.安西勝一 3.佐藤康光) (23)切れ筋を絶つ (1994年11月 1.村山聖 2.佐藤康光 3.有吉道夫) (24)矢倉模様の出だしから(1994年12月 1.中原誠 2.丸山忠久 3.島朗) (25)カニカニ銀対策 (1995年1月 1.青野照市 2.谷川浩司 3.中原誠) (26)“手抜き”の最善手 (1995年2月 1.谷川浩司 2.森下卓 3.森内俊之) (27)難解な戦い(1995年3月 1.深浦康市 2.森下卓 3.谷川浩司) (28)神様のいたずら (1995年4月 1.森下卓 2.森下卓) (29)名人戦特集(1995年5月 1.森下卓 2.森下卓) ◆内容紹介 本書は、1992年から95年にかけて行われた対局について、羽生善治名人自ら印象的シーンを取り上げ感想を加えたものである。稀代の天才棋士が、谷川浩司(現王位)、佐藤康光(現棋聖)、中原誠永世十段、米長邦雄永世棋聖ほか、宿命のライバルたちと繰り広げた若き日の激闘の軌跡―。 「将棋マガジン」誌に掲載された「ハブの眼」をまとめたもの。 |
【レビュー】 |
羽生の20代前半の頃の自戦解説書。「将棋マガジン」誌に掲載された「ハブの眼」をまとめたもの。(読む前は、よくある口述筆記系のエッセイ集かと思っていました) 期間は1992年9月〜1995年5月。羽生のタイトルが二冠から六冠へと順調に増えていった時期だ。まえがきでは「今、振り返ってみると恥ずかしい部分も多く、封印してしまいたい気持ちです。まず、将棋の内容が若いというか、粗い印象があります。いろいろな作戦・戦法を試している意味もあったのですが、無謀に近い棋譜も数多く見受けられます。」とある。しかし棋界制覇へ邁進していたことは確かであり、もっとも羽生が恐ろしかった時期である。なお、「2手目△6二銀」や「2手目△3二金」など、確かにいろいろな作戦が登場する。 印象的だったのが、「優れた一手の新手は百手の研究より優る」(88p)という言葉。相掛かり▲3七銀戦法に対し、後手の谷川が△6三銀とせずに△8八角成としたのが、手損だが低い構えのまま局面を収めて秀逸、というのを表現したもの。大きな新手一つで既存の定跡がガラリと変わってしまう。ここ数年でも、横歩取り△8五飛・ゴキゲン中飛車・一手損角換わり・角交換振飛車など、さまざまな新発想が出てきているだけに、すごく実感できる言葉だ。 各回の構成は次の通り。最初に時節の挨拶や小ネタを振ったあと、3局のハイライトを4図面で解説し、感想を加える。月によっては2局のときもある。 文庫版のため字が小さく、図面も飛んでいるので若干読みにくい。また、棋譜(総譜)がないのがかなりの残念ポイント。しかしトッププロがナマの感想を書いているのは結構貴重。初出から10年以上経過しているためかなり鮮度が落ちているが、通勤のお供で一読する価値は十分あり。値段も安いし。 なお、なぜタイトルが「好機の視点」なのかはさっぱり分かりませんでした…。(2005Nov18) |