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初心者が初段になるための将棋学習法 | [総合評価] AorC (人による) 難易度:★ 図面:なし (3章のみあり) 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A (入門〜上級向き?) 有段者のコーチ向き |
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【著 者】 佐藤友康(将Give) | ||||
【出版社】 主婦の友社 | ||||
発行:978-4-07-431786-8 | ISBN:2019年2月 | |||
定価:1,080円(8%税込) | 188ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||
・初段までのタイムスケジュール 〜あとがきにかえて〜 |
【レビュー】 |
大人向けの上達法を解説した本。 一般的に、大人は自由な時間が限られており、将棋が強くなるためにたくさんの時間を割くことができない。また、子どもに比べると吸収もゆっくりなので、上達には時間がかかりやすい。そのため、強くなるためにできるだけ効率の良い方法をやりたくなるだろう。 本書は、大人が効率よく上達するための、最短ルートの学習法を示した本。将棋の学習全体の「工程表」と、各棋力別の課題・学習要素(やるべきこと)をまとめている。 例えば、 入門者⇒初心者: ルールを覚える、将棋の楽しさを理解する 初心者⇒初級者: ルールを完璧にする、将棋の基礎知識を学ぶ、頭金を覚える 初級者⇒中級者: 1手詰はすぐ解ける、序盤の形を作れる、詰み手筋を覚える 中級者⇒上級者: 効果的な手筋を覚える、3手詰が解ける、3手の読みをする 上級者⇒初段: 5手詰を解けるようにする、3手の読みを複数考えて比較する、詰めろを効果的に使える などなど。 各章の内容を抜粋して紹介していこう。 第1章は、「将棋の学び方を体系化する」。 ・大人は時間が限られている ⇒ 効率重視 ・上達ルートの全体像が分かっていれば、成長が実感できる ・[知識を仕入れる]→[実践する]→[振り返り]→…を繰り返す(いわゆる「PDCAを回す」) 偏らないように注意。 ・学習テーマは7つある。 (1) ルール (2) 基礎知識(コツ) (3) 詰み(1手詰) (4) 序盤(棒銀、囲い) (5) 手筋(駒の手筋、垂れ歩、一間竜、底歩) (6) 終盤 (7) 中盤(棋譜並べ) ・自分よりちょっと強い人ができていることを学ぶ。 ・「多読」より「精読」 ・レベルの合う本を選ぶ。 ・10秒将棋は棋力向上が期待できない。 ・考えすぎるのも効果はない。(知らないことは「考える」よりも「知る」「学ぶ」) ・感想戦で、自分にない視点を相手から取り入れる。 第2章は、「各レベルの定義と学習課題」。 棋力レベルを[初心者][初級者][中級者][上級者]と分け、各レベルごとに、 ・ひとつ前のレベルができること ・今のレベルならできること ・ステップアップして何が変わったか ・今のレベルの課題(次のレベルに進むために何をすればよいか) ・課題に取り組むときに気を付けること を紹介していく。 それぞれ具体的な課題は、第3章で詳解。各課題の参照ページが書かれているので、自分の今の棋力とやるべきことが分かったら、すぐに該当ページにジャンプして良い。 第3章は、「学習する内容とコツ」。 第2章で出た各課題を具体例を添えながら説明していく。本章だけは盤面の図面入り。 課題は以下の通り。 ・基本的なゲームのルールを“駒3枚”(玉・飛・角)で覚える ・持駒に金2枚を追加して、“詰み”を覚える ・ほかの駒を覚えて、10枚落ちで始める ・8枚落ちで始める ・3つのあいさつと感想戦 (開始時、投了時、感想戦後) ・ただで駒を取らせない ・ぶつかったら駒を取る ・成れるときには必ず成る ・駒の多いほうが勝つ (数の攻め・守り) ・大駒の利きを生かす ・詰みの6割を占める「頭金」をマスターする ・実戦で1手詰をマスターする ・3手詰(並べ詰み)をマスターする ・詰ませやすい形とは? ・逃げ道封鎖+挟み撃ち+頭金を覚える ・王手より詰めろが重要 ・攻めは飛車角銀桂 ・玉飛接近すべからず ・玉の守りは金銀3枚 ・飛車先の歩の交換3つの得あり ・攻めの銀を守りの銀と交換しよう ・攻め@ 両取り 〜より価値の高い駒を狙う〜 ・攻めA 垂れ歩 〜と金を作って戦力アップ〜 ・攻めB 合わせの歩 〜攻め駒を前に進めろ〜 ・攻めC 二枚替え 〜大駒と金銀2枚の交換は得〜 ・攻めD こびん攻め 〜斜めの利きは守りづらい〜 ・攻めE たたきの歩 〜守り駒を移動させろ〜 ・攻めF 継ぎ歩 〜相手陣に空間を作れ〜 ・終盤の手筋@ 一間竜 ・終盤の手筋A 送りの手筋 ・終盤の手筋B 玉は下段に落とせ ・終盤の手筋C 玉の腹から銀を打て ・守りの手筋@ 金底の歩、岩より堅し ・守りの手筋A 玉の早逃げ八手の得あり 課題は棋力順に並んでいるわけではなく、「ルール」「基礎知識」「詰み・終盤」「序盤」「手筋」でカテゴリー分類されている。前から読んでいっても、棋力によっては「なんか難しい…」と感じるところがあるはずなので、第2章で自分の棋力をだいたいセルフチェックして、該当する部分を選んで読むようにしよう。なお、本項から棋力の逆引きはできない(項目ごとに対象棋力が書いてあるわけではない)。 第4章は、「将棋本の選び方と使い方」。 ○ルール本 or 入門書 自分が「分かりやすい」と直感したものを選ぼう。精読するよりは、分からない部分を調べるのに使おう。 ○詰将棋本 レベルにあったものを。詰め上がり図があるとよい。分からなければ答を見てOK。慣れてきたらタイムアタック。 ○寄せの本 ここだけ具体的な書名が書いてある。『寄せが見える本【基礎編】』と『寄せの手筋200』が推奨。 ○序盤の本(戦法書) 指したい戦法(特に居飛車or振り飛車)を決めて、「○○戦法の基本」「はじめての○○」などと書かれたものを選ぶ。実戦と本を読むを繰り返す。 ○実戦記・棋譜本 少なくとも中級以上になってから。特定の棋士か、特定の戦型のものを。 第5章は、「得意戦法の決め方とおすすめ戦法」。 ・いろいろ試してみる。 ・攻めたいか? 堅くしたいか? ・角換わり棒銀と四間飛車が著者のオススメ。 〔寸評〕 上達法について、全面的に同意できるところが9割くらいあります。特に「レベルに合った勉強法を」というのは激しく同意。 ただし、中には同意できないものもありまして。 ・「(将棋の初段は)英語で言えばTOEIC600点ほどの難易度だろう」 ⇒ごめんなさい、とても同意できません…orz 現在のTOEICは、2010年頃と、2016年の新形式移行でかなり難化したと言われてますので…わたしは2013年に受験したとき、かなり準備万端で挑んだにもかかわらず、前回よりも100点以上落ちていてアヒャー(゚∀゚;)でした。え、点数?言えませんよ!会社の要求レベルは何とかクリアした、とだけは言っておきます(笑) 個人的には、英検3級〜準2級くらいで十分初段クラスだと思います。TOEIC換算すると、377〜402くらいだそうです。(外部リンク:TOEICと英検比較まとめ!) ・「多読」より「精読」 ⇒受験勉強などでもよく言われることですが、「人による」と思います。わたしは複数ソースを比較しながら読みたい派なので、本の購入費や本棚のスペースがOKなら「多読」でもよいかと。ただ、「最短・最速で初段」なら「精読」の方が良いかもしれませんね。でも、自分に合っていると思って買ったら、意外と合ってなかった…(´・ω・`)っていうことも多いので、あまり頑張って精読しなくても良いかと思います。 ・角換わり棒銀と四間飛車がオススメ戦法 ⇒個人的には「なんでも棒銀」or「なんでも中飛車」or「四間飛車」かなぁ。初心者〜中級者では、「角交換の将棋」にはなっても「角換わり」には滅多にならないし、2手目に△8四歩と突いてくる人はかなり強い人なので… 〔総評〕 これまで、「上達するために何をすればよいか」を示した本はいくつかあったが、本書のように「初心から有段者までの、上達のロードマップ」を示した本は珍しい。 各マイルストーン(初級・中級・上級など)での到達レベル感や、やるべきことも明確になっているので、「誰かを有段者まで育てようとしている指導者(コーチ)」には、かなり参考になる一冊だと思う。もしかしたらバイブル級かもしれない。 一方、本書をガチの初心者が読んで上達できるかは未知数だと思う。例えば、算数の足し算や九九を覚えたばかりの子が、数学学習のロードマップを見て、「よーし、因数分解や三角関数をやっていけば、最終的に微分方程式が解けるんだな。やってやるぜ!」とはならず、正直チンプンカンプンだろう。(「順番に積み上げていけば、すごく高度なこともやれるようになるよ」というイメージはできそう) とりあえず、自分自身でのセルフ棋力判定と、自分が次にやると良さそうなことは分かりそうだ。 全部を通して読むと、自分の棋力と合っていないパートでは眠くなっちゃうので、第2章で「あ、自分はこれくらいできるかな」という所を確認して、該当箇所だけつまんで読むのが良い。しばらく置いておいて、「少し強くなったかな」と思ったころに、「次は何をやるといいんだろう」と、また次の該当箇所を読んでいくと良いだろう。 夏休みの宿題を、計画を立てて、その通りに実行できていた人にはオススメ。何か別の分野で成功している人(ビジネス、受験、サークル運営…など)にも良いだろう。または、全体像はともかく、現在の課題や、次のステップに向かってやるべきことを知りたい人にも一読の価値はあると思う。(2019Feb13) |