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講談社現代新書(1757) 最強の駒落ち |
[総合評価] S 難易度:★★★★ 図面:見開き2〜6枚 内容:(質)S(量)A レイアウト:B 解説:A 読みやすさ:A 中級〜高段者向き |
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【著 者】 先崎学 | ||||
【出版社】 講談社 | ||||
発行:2004年11月 | ISBN:4-06-149757-X | |||
定価:840円(5%税込) | 304ページ/18cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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【レビュー】 |
二枚落ち以下の駒落ち技術解説書。「将棋世界」誌の連載を加筆修正してまとめたもの。 普通、駒落ち定跡書といえば「下手の勝ち方」が書かれている。もっと極端に言えば「下手の必勝法」である。そのため、上手がやや甘い手を指していたり、筋は良いが含みの少ない手を指していたりする。 しかし本書では、下手の理想的な勝ち手順を示したあと、「上手の工夫」をふんだんに公開している。それは、上手の実戦的な勝負手だったり、序盤での目くらましだったり、著者自身の新研究だったり…とにかく、下手の心理・上手の心理まで考えた指し方がたくさん書かれている。そしてその多くは、既存の定跡書には載っていない話である。 “話”と書いたが、普通の解説書にはない、先崎流の軽妙な文章も本書の魅力。読者をやる気にさせるのが本当に上手い。わたしはプロ相手の二枚落ちを一応卒業しているが、本書を読んでいると「もう一度四枚落ちをいっぱい指してみたい!」とか「二枚落ちで上手をもってゴマかして(笑)みたい!」とか、本当に思えてくる。 個人的には、興味の深い「二枚落ち/銀多伝・5五歩止め」のあたりから読み始めた。「銀多伝愛好者が減ってきているようだ」に愕然。次に「石垣流の華麗な手順が最後までは通用しない(※1)」という事実に再び愕然とした。このように、“定跡書”では味わえない“話”が満載なのである。 もちろん解説も丁寧懇切で申し分ない。辞書的な使い方は難しいが、読み物として読んでいけば非常に理解しやすい。プロ相手に駒落ち指導を受けている人と、道場で上手をよく持つ高段者は必見の一冊である。 なお、本書はなぜか書店の「将棋カテゴリ」には入っていないようだ。AmazonでもES!Booksでも、マナハウスでもキーワード「将棋」では出てこなかった。せっかくの良書なのに、将来埋もれてしまうのでは…とちょっと心配。(2004Nov26追記:Amazonでは「将棋」で出るようになりました) 最後に先崎先生。二枚落ちで△8五金に▲7八飛を推奨している本は(257P)、花村先生の『よくわかる駒落ち』(1970,2001)だけだったと思います。(※2)(2004Nov26) ※1 本書p264では、石垣流で▲6七桂!(右図)は△6六金▲同金△同歩▲同飛△6四歩▲6五歩に△7三桂でダメと書いてある(ここで終わっていて「(旧定跡は)何かの勘違いではないか」と言っている)が、さらに▲6四歩△同銀▲5五桂!△同歩▲同銀△6五歩▲5六飛で攻めきれるはず(参考資料『将棋手筋集(2)』)。先崎八段の方が勘違い?(2005Aug22追記) ※2 ^ 棋書掲示板にて、ゲンリュウさんより。 「△8五金に▲7八飛を推奨している本はもう1冊あります。『駒落ち必勝法 定跡なんかフッとばせ』(湯川博士,MYCOM,1985/2003)で花村流の手として紹介されていました。」(2012Jan15追記) |
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