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■33金型早繰り銀を指しこなす本 基本編

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33金型早繰り銀を指しこなす本 基本編
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33金型早繰り銀を指しこなす本 基本編
(電子書籍)
[総合評価]
A

難易度:★★★☆

図面:見開き2枚
内容:(質)A(量)B+
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
解答の裏透け:-
上級〜有段向き

【著 者】 西村駿
【出版社】 (電子書籍)
発行:2020年10月 ISBN:-
定価:880円(10%税込) 224ページ/約36MB


【本の内容】
第1章 33金型早繰り銀の駒組み 第1問〜第19問
第2章 先手腰掛け銀 第20問〜第56問
第3章 先手37桂型 第57問〜第85問
第4章 先手早繰り銀・棒銀 第86問〜第100問

・【コラム】(1)本書ができるまで (2)将棋ソフトがもたらした革命 (3)33金型早繰り銀の先にあるもの

◆内容紹介
大流行の角換わりに衝撃の新戦術が登場。その名も「33金型早繰り銀」

後手番ながら囲いを最小限に留め、全力の速攻を仕掛けます。仕掛けでリードを奪ったなら、そのまま攻め続けて勝つ。そんな爽快感たっぷりの新戦法です。

本書は33金型早繰り銀を開発し、これまで1000局以上採用してきた筆者が厳選した、一問一答形式の問題集です。初級者でもわかる易しい問題から、33金型早繰り銀特有のあっと驚く手筋まで。とにかく実戦で現れる形を盛り込みました。

これを読めばあなたも今日から立派な33金型早繰り銀マスターです。


【レビュー】
角換わり△3三金型早繰り銀の、戦法習得型・次の一手問題集。

角換わりは居飛車党なら避けては通ることができない戦型の一つ。現在はプロでは先後の勝率はほぼ互角に近くなっているが、過去には先手が圧倒していた時代もあり、基本的には「先手が主導権を握って仕掛ける戦型」だといえる。後手から主導権を取れる作戦はほとんどなかった。

そこで彗星のごとく現れたのが、本書の△3三金型早繰り銀である。

・先手から角交換させることで後手が1手得をし、その分を早繰り銀の攻めに回すことで、後手から先攻できる。
・先手からの角交換は挑発によるものではなく、理論的な裏付けがある。
・△3三金型は一般的には悪形だが、長所を最大限に生かす指し方で従来の感覚を一変させることができる。
・△3三金型早繰り銀の利点は、ひとことで言えば「手得による最速の仕掛けと継ぎ歩への耐性」(p62)となる。

という、一見「B級戦法」のようでいて、もしかしたら角換わりの勢力図を激変させる可能性を持った戦法である。

本書は、この「角換わり△3三金型早繰り銀」を、次の一手形式で、指しこなせるように学んでいく一冊になる。



本作戦の登場のきっかけは、ソフトが「角換わり腰掛銀△3三金型」を指していることを知り、△3三金型が早繰り銀に応用できるのではないかと閃いたとのこと。それが3年前(2017年〜2018年ごろ?)で、そこから1000局以上の実戦と研究を繰り返し、そしてついにプロでの採用が出てきている。

筆者の棋力は、コラムによれば、将棋倶楽部24でR2200前後とのことで、アマ全国クラスではないが、将棋ソフトによって読みを補完させることで、アイデアを具体化させることができたとのことだ。

まえがきによれば、「相居飛車の歴史を変える可能性」があり、プロでの流行やタイトル戦での登場もあり得るとのことだ。

実際に、わたしが知る限りで、以下のようなプロの実戦譜がある。

2018年11月 ▲千葉幸生六段△阿部健治郎七段 棋聖戦一次予選
下記▲中村△千葉戦のコメントにあった対局だが、棋譜中継されていないため、わたしは見られませんでした。m(_ _)m

2020年6月16日 ▲高野智史五段△星野良生四段 竜王戦6組
先手は▲3七桂〜▲4七銀と組んで、△4四歩を突かせている。▲6五角の筋が生じたが(△2一桂は浮いている)、バランスの取れた攻防となった。
棋譜解説の山本博志四段のコメントで、「(33金側が)敗れはしたが、星野四段の本局の作戦は今後注目されると思う」。

2020年8月26日 ▲中村太地七段△千葉幸生七段 王位戦予選
先手が腰掛け銀模様で、銀交換を避ける作戦。第1章後半と似た展開から大熱戦。



レイアウトは、浅川書房の「指しこな」スタイル(右ページ下部に問題図、めくって右ページ上部に解答)ではなく、見開きで右ページに問題図、めくって次の左ページに解答を載せるスタイル。電子書籍なので、2面表示にしておけば問題図と解答を同時に見ることも可能。本文は横書き。

問題の出し方とコメント、解説の進行、文体は、浅川書房「指しこな」シリーズとかなり似た感じになっており、非常に読み進めやすい。空白スペースは多いが、本書のような「指しこな系」の棋書の場合は「必要十分な解説文を載せられるような、余裕のあるレイアウト」と好意的に捉えられる。

なお、本書では棋譜の表記がすべて算用数字(例:「33金」)で書かれている。最初は見づらく感じるかもしれないが、すぐに慣れるだろう。本レビューでは、各章のタイトルや戦法名は算用数字で表記するが、その他の符号や棋譜は通常通りの表記(例:「△3三金」)としておく。


各章の内容を、チャートを添えながら紹介していこう。なおチャートは分岐までとし、今回は本文中の変化については記載していない。



第1章は、「33金型早繰り銀の駒組み」。[駒組みの基本]と、[先手が無策に(自然に)進めてきた場合の早繰り銀の成功例]、[先手の強襲策▲5五角]を解説する。

・通常の角換わりの序盤では、後手から△7七角成と角交換するが、33金型早繰り銀では先手から角交換させるのが基本。
−△7七角成のところで△3三角として、▲同角成△同金で「33金型」になる。
−先手に飛先歩交換をさせないのが「33金型早繰り銀」の特長の一つ。
−ただし、先手が飛先を伸ばしてから△3三角とすることに注意。

・△3三金型のメリットは、先手から角交換させることで後手が手得しており、1手早く攻め形を作れること。
−早繰り銀なので、居玉の解消or端歩突きなど、王手飛車回避のための1手は必要。

・なお、先手から角交換をしない場合は、△4二銀と上がっておく。
−そこで先手が角交換すると純粋な一手損で、「先手角換わりで主導権を握る」ことはできなくなる。
−角交換しない場合は、「角対抗」の力戦調になりそう。

△7四歩に▲5五角が先手の強襲策。角を切って飛先突破を狙っている。
−筆者イメージで10%弱の登場率で、初段前後だともっと多いイメージとのこと。
−後手は、2筋を破られても右辺に逃げだせることを念頭に、先手の飛先が重くなるように受けて、反撃を目指す。
−結論として、この強襲策は無理筋だが、カウンターを知らないと難しい(というより後手が惨敗しかねない)局面もあるので、ここは絶対に要マスター。
−逆にいえば、この作戦は本書の通りの進行になる可能性が非常に高いので、マスターすれば10%弱は確実に勝利をもぎ取れそうだ。



第2章は、「先手腰掛け銀」。先手の作戦として、もっとも採用が多く、筆者イメージでは60%。通常の角換わり早繰り銀では、腰掛け銀で対抗するのは定番なので、もっとも自然に思える作戦である。

・王手飛車を避けるための一手は、先手腰掛け銀模様に対しては△4二玉を推奨。
・1手得の△33金型早繰り銀を生かすため、△4二玉を指したらすぐに△7五歩と仕掛ける。
−さらに1手待つと、△3三金型が裏目に出る。角と桂で△3三金を狙われると厳しい。
−先手の▲6六歩が間に合っていないのが本戦法の急所。早繰り銀の基本的な狙いである銀交換に持ち込みやすく、「角銀歩2」を手持ちにしやすい。
−また△3三金型は、早繰り銀の部分的定跡である「継ぎ歩の反撃」に強い。▲2三銀や▲2三角の打ち込みが脅威ではない。
銀交換後の▲5五角の反撃に対する対抗策も出現確率が高く、絶対に要マスター。
−角切りで△3三玉と引っ張り出されるので、知らなければ非常に危ない。
−「△3三玉型で耐えて、先手が攻め駒を足してきたら逃げる。将来のために攻め駒を配置しておく」という感覚が必要。第1章の▲5五角対策と考え方は似ている。
・△7七歩と金頭を叩く手筋や、△8八歩で金の位置を変える手筋は、常に意識しておこう。

・銀交換にならない場合は、△5四歩が急所の一手。▲6五歩に備え、手薄になった5筋での戦いを狙う。
−5五で銀交換になった局面は後手が勝ちやすい。5筋の歩が先手の玉頭に伸びており、後手陣は角銀の攻めに対して強度がある。
−2020年8月の▲中村太地△千葉幸生戦は、途中の手順は違うが、かなり似た形になっていた。
−▲7五角成は絶対に許すべからず。先手陣の厚みが強大になってしまう。
・△5四角も狙い筋。5四に空間を開けられるかどうか、考えておこう。
−後手陣は角の攻めには強いので、攻めがつながるなら角切りをためらわない。



第3章は、「先手37桂型」。先手の3七桂型の採用は、執筆時点の筆者イメージで25%だが、本戦法に対しては最善とみられ、いずれは▲3七桂型に絞られていくと予想される。2020年6月の▲高野智史△星野良生戦も▲3七桂型で、第81問と同一局面だった。(なお、解説の山本博志四段のコメントでも「3三金型に対してはこの桂(▲3七桂)から4七銀型に組むのが妥当」と書かれている)

・▲3七桂型に対しては、居玉を維持して、先手の桂頭(3筋)を狙って、強く攻め合うのがポイント。
−左辺も右辺も戦場にするので、居玉がもっとも戦場から遠ざかっていることになる。
−そのため、王手飛車を避けるための一手は、▲3七桂型に対しては△9四歩を採用することになる。
・▲4五桂跳ねを直接防ぐ△4四歩は必要な一手。
−▲4五歩△同歩▲同桂と跳ねたくなるが、これは先手のハマり形。あまり他の戦型では見たことがないようなカウンターがある。
・△5四角は急所の位置。左右をにらみ、2一桂にもヒモを付けることができている。
−歩を手持ちにしたら桂頭を狙う。この戦型は、歩を手持ちにしやすい。
−2筋は焦土にするのも一法。▲2三歩成と突破されても、次の▲3三とは駒に当たらずに先手が取れていないのを利用する。

・本章の最終局面は優劣不明だが、後手良しが確立された場合は、角換わりでの先手の主張がなくなり、角換わり自体が指されなくなる可能性すらある。
−その場合は、▲7七角と△3三角が向かい合ったまま互いに角交換せずに駒組みが進む「角対抗」の新世界が広がる。



第4章は、「先手早繰り銀・棒銀」。先手の早繰り銀の採用は、筆者イメージで10%。先手の棒銀の採用は、同3%。どちらも後手のカウンターが確立されている。

・▲早繰り銀には、△4四歩が必須。
−▲4六銀には△5四角で早くも後手優勢。▲3五歩に△4五歩を用意しており、攻め合いは後手の勝ちになる。仕掛けられなければ、先手の早繰り銀は不発。

・▲棒銀にも、△4四歩が柔らかい一手。
−△5四角の安定度を高め、先手の棒銀を引っ張り込む。
−△2二飛と回る手が利くのが、通常の角換わり棒銀と全く違うところ。



〔総評〕
正直言って、「角換わりにこんな戦法があったのか!」と驚くばかり。(※棋譜中継で見たことがあったが、全然記憶になかった…orz)

文章や問題の構成も非常に上手くて、計100問なので、従来の「浅川書房の指しこな本」と比べれば問題数はやや少ないが、ボリュームは気にならないほどのクオリティに大満足。

「角換わり後手番の救世主」という謳い文句も、「角換わりが終焉する可能性」も、どちらも大袈裟ではないように思えた。今後、角換わりだけでなく、いろいろな戦型で△3三金型の検証が始まるのかもしれない。

あとがきに「(本書を読み終えて)今あなたは、きっとうずうずしていますよね? 33金型早繰り銀を試したくてたまらないんじゃないでしょうか。」とあるが、全くその通り。後手側は、これまでに経験のある早繰り銀の攻め手筋が応用できるし、逆に先手側はこれまでの早繰り銀の対抗策が通用しないことも多く、「これは実際に試してみないと」という気持ちが止まらない。追い打ちで「どうぞ行ってらっしゃい」と背中を押されている(笑)

ただ、第1章と第2章にある、二つの「▲5五角への対策」だけはちゃんとマスターしてからやらないと、気持ちがシボんでしまうかもしれないです。


※なお、本書では「3三金型早繰り銀の8割」をカバーできているとのことで、残りの2割は『応用編』に掲載される予定だそうだ。

(2020Nov11)



【関連書籍】

[ジャンル] 次の一手問題集(定跡習得系)
[シリーズ] 
[著者] 西村駿
[発行年] 2020年

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