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■振り飛車を一刀両断!右四間飛車エルモ囲い

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振り飛車を一刀両断!右四間飛車エルモ囲い
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マイナビ将棋BOOKS
振り飛車を一刀両断!右四間飛車エルモ囲い
[総合評価]
A

難易度:★★★★

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)B+
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
上級〜有段向き

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【著 者】 鈴木肇
【出版社】 マイナビ出版
発行:2020年6月 ISBN:978-4-8399-7354-4
定価:1,694円(10%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
序章 本書の概要   12p
第1章 対石田流   42p
第2章 対三間飛車   30p
第3章 対四間飛車   36p
第4章 序盤徹底考察編
−序盤で研究勝ちを目指す−
第1局 ▲大橋貴洸四段 対 △渡辺正和五段
第2局 ▲藤倉勇樹五段 対 △本田奎四段
第3局 ▲矢倉規広七段 対 △黒田尭之四段
第4局 ▲出口若武四段 対 △杉本和陽四段
第5局 ▲宮本広志五段 対 △澤田真吾六段
第6局 ▲安用寺孝功六段 対 △船江恒平六段
20p
第5章 実戦編 第1局 ▲森村賢平アマ王将 対 △鈴木肇アマ名人
第2局 対教え子三番勝負 第1局
第3局 対教え子三番勝負 第2局
第4局 対教え子三番勝負 第3局
第5局 ▲竹内貴浩 対 △鈴木肇(竹内自戦記)
36p
第6章 右四間飛車の宿命 第1節 「4→3戦法」
第2節 角道を止めない石田流・△4五角を巡る攻防
38p

・【コラム】(1)将棋との決別 (2)はじめ将棋教室 (3)将棋道場 (4)将棋仲間 (5)リボーンの棋士 (6)勉強方法

◆内容紹介
本書は右四間飛車エルモ囲いの戦術書です。

右四間飛車エルモ囲いは名前の通り、右四間飛車とエルモ囲いを組み合わせた戦法で、対振り飛車戦における有力な急戦策です。

現在では、大橋六段や本田五段ら若手棋士の間でも多く採用されており、その優秀性はお墨付き。本書ではテーマを「対▲石田流」「対▲三間飛車」「対▲四間飛車」や、相手が右四間飛車を警戒する指し方「対4→3戦法」「対いきなり△8八角成からの△4五角戦法」に絞り、徹底解説しました。

トマホークや三間飛車藤井システムの台頭により、対振りには堅さが正義の居飛穴時代は終わりました。新時代の新急戦、右四間飛車エルモ囲いを習得しましょう。


【レビュー】
対角道クローズ振り飛車の、右四間飛車+エルモ囲いの戦術書。

右四間飛車は、昔からある有力な振り飛車破りの作戦であり、その破壊力は魅力的で、現在もアマでは大人気である。一方、プロでは採用が限られていた。原因の一つが、▲7五歩と突く石田流の形の攻略が難しかったことだ。(わたしも1998年竜王戦七番勝負での藤井猛vs谷川浩司で右四間が苦しくなった印象がある)

右四間側も囲いをいろいろ工夫し、舟囲い、天守閣美濃、銀冠米長玉、居飛穴などが試された。どれも有力ではあるものの、主流の座をつかむには至っていない。そんな中、近年の対振り飛車急戦で注目されている「エルモ囲い」と「右四間飛車」との組み合わせが良く、対石田流で戦えることが分かってきたのだという。


各章の内容をチャートを添えながら紹介していこう。



序章は、「本書の概要」
。[右四間飛車+エルモ囲い]はどんな戦法か、を概説する。

・エルモ囲いは、舟囲いと同じ手数で組めて、横からの攻めに強い。2三の地点は弱いが、逃げ道がある。船囲いでは急所になる[▲2二X]や[▲3三X]が致命傷になりにくい。
・右四間飛車は、攻撃力が強いが、対石田流が苦手。右桂が使いにくいのが一因。
・[右四間飛車+エルモ囲い]なら、対石田流も戦えることが分かった。
⇒第1章で詳しく触れる。
・局面評価は、ソフトと「はじめ」(著者)の見立てを併用。優劣を示すイラストには、著者が監修を務める『リボーンの棋士』の主人公が使われている。



第1章は、「対石田流」

・3手目▲7五歩の石田流から角道を止めてくる作戦に対し、△右四間に構える。
 (※4手目△8四歩以外なら、先手は角道を止めることが多い)
・ただし、もし1筋の位が取れたなら、右四間にこだわらず、[△3一玉型左美濃+居飛車]がオススメ。
・エルモ囲いに組む前に、いくつかのハードルがあるのでマスターしよう。
・エルモ囲いに組んだら、時機を見て△6五歩と仕掛けて捌きを狙う。
・エルモ囲いなら、▲5五角のラインがあまり厳しくないので、強気に捌いていこう。
・また、「▲6七銀を見たら△6五歩(と仕掛ける)」が合言葉。持久戦にはしないように。
 (ただし、仕掛けは成立するが、変化は膨大で難しい)
・△6五飛や△7一金という符号が好手になりやすいので、覚えておこう。



第2章は、「対三間飛車」。▲ノーマル三間飛車に対する戦い方を解説する。

・▲ノーマル三間飛車は最近増えている。トマホークによって、5筋不突き居飛穴に対策ができたのが大きい。
・▲ノーマル三間飛車にも、[△右四間+エルモ囲い]は有力。
・早めの▲5七銀型には、居玉でガンガン攻めるのもあり。ただし、簡単には良くならないので、やはりエルモ囲いまで組みたい。



第3章は、「対四間飛車」。▲ノーマル四間飛車に対する戦い方を解説する。

・対▲四間飛車では、△6四歩にいきなり▲6五歩と仕掛けられることがあるが、正しく対応すれば互角。
 (※どうしても右四間がイヤな四間飛車党は試す価値がありそう)
・舟囲い+△9三桂の右四間は、条件が良ければ優秀だが、振り飛車側が▲7七角と上がっていないと不発。
・[右四間+エルモ囲い]は、囲いの堅さを生かせる転回もあるが、四間側が正しく対応すると、なかなか攻略が難しい。
・「はじめ流」の推奨策は、天守閣美濃から銀冠米長玉への組み替え。(エルモ囲いの本なのに(笑))



第4章は、「序盤徹底考察編 −序盤で研究勝ちを目指す−」。プロの実戦の序中盤を題材にして、定跡編とは少し異なる工夫や、実戦のアヤも含めて解説していく。

・1局につき3ページのコンパクトスタイル。
・[右四間+エルモ囲い]は比較的新しい指し方なので、直近2年間の若手棋士の対局が多い。

(1) ▲大橋貴洸四段 △渡辺正和五段,2018.07.12
・▲右四間+エルモ囲いの1号局。
・△三間飛車から四間への振り直し。後手の待ち方として、△1二香+△5四歩の組み合わせは良くなさそう。

(2) ▲藤倉勇樹五段 △本田奎四段,2019.11.01
・▲三間飛車vs△右四間+エルモ囲い
・△6三銀型で待機して、▲7五歩には△7二飛から反撃する余地を残しているのが序盤の工夫。

(3) ▲矢倉規広七段 △黒田尭之四段,2020.01.09
・▲三間飛車vs△右四間+エルモ囲い
・▲6八銀+▲7五歩+▲5六歩型に対する仕掛け。
・途中までは、第5章の竹内戦と同一局面。本局はエルモ側が負けている。

(4) ▲出口若武四段 △杉本和陽四段,2020.01.30
・▲石田流vs△右四間+エルモ囲い
・▲7九銀保留+▲9六歩が先手の工夫。角にヒモを付けて、飛を動きやすくしている。
・ただし、7筋歩交換で後手に1歩渡すと、△6五歩▲同歩△6六歩と垂らす仕掛けが生じる。

(5) ▲宮本広志五段 △澤田信吾六段,2020.02.12
・▲石田流vs△右四間+エルモ囲い
・△3一金寄△3三角を優先させたのが後手の序盤の工夫。

(6) ▲安用寺孝功六段 △船江恒平六段,2019.11.05
・▲三間飛車vs△右四間+エルモ囲い
・先手の7筋歩交換に対し、本書推奨の△7二金ではなく、△7四同歩と取る形。
・カウンターで△6五歩と仕掛けるのも有力。



第5章は、「実戦編」。著者の実戦解説で、第4章と同様に、実戦ならではの工夫やアヤ、疑問手・悪手も含めて解説していく。

(1) ▲森村賢平アマ王将 △鈴木肇アマ名人,2019.03.31
・▲石田流vs△右四間+エルモ囲い
・中盤でエルモ囲いの堅さを生かした捌きが出た。

(2) ▲教え子 △鈴木肇 #1
・▲石田流vs△右四間+エルモ囲い
・美濃囲いの発展を保留して、▲7七角〜▲8六歩が先手の工夫。

(3) ▲教え子 △鈴木肇 #2
・▲石田流vs△右四間模様
・玉の囲いを保留して▲7六飛〜▲7七桂を急いだのが先手の工夫。6五の地点が堅く、△右四間飛車は非推奨。△7二飛から仕掛けたい。

(4) ▲教え子 △鈴木肇 #3
・#2と同じ序盤、仕掛け。
・#2では後手は△7二飛から棒金で抑え尾込みを図ったが、本譜では飛切りを決行。

(5) ▲竹内貴浩(指導棋士四段) △鈴木肇 (竹内の自戦解説)
・▲三間飛車vs△右四間+エルモ囲い
・▲6八銀+▲7五歩+▲5六歩型に対する仕掛け。
・途中までは、第4章第3局と同一局面。

なお、「あとがき」には、2020年5月2日の▲阿部光瑠六段△佐々木大地五段戦(AbemaTVトーナメント)も追記で解説されている。




第6章は、「右四間の宿命」。角道を止めない振り飛車に対しては、右四間飛車にできない(争点がない)。その場合の戦い方を解説する。なお、振り飛車が角道を止めたら右四間にシフトできるような駒組みを前提としている。

第6章第1部は、「4→3戦法」
・後手が、角道オープン四間飛車から△3五歩として升田式石田流に振り直そうとする作戦。
・対して、先手は▲2六歩-▲4八銀-▲4六歩型で駒組みするのを推奨。あとは後手の指し手によって変化する。


第6章第2部は、「角道を止めない石田流・△4五角を巡る攻防」
・3手目▲7五歩〜4手目△4二玉に対して、多い手は5手目▲6六歩で、これなら△右四間飛車ができるが、5手目▲7八飛もある。
・5手目▲7八飛には、角交換から△4五角の変化で居飛車良しとされてきたが、再検証を行う。
・なかなか居飛車を持ちづらい変化もあるようだ。
・▲5五角に対する△3二玉!!は、広瀬章人八段の三段時代の秘手だそうだが、従来の棋書ではほとんど見た記憶がない。その是非はいかに?
・「はじめ流」の結論としては、角交換〜△4五角はリスクが高く、非推奨。△6二銀から駒組みを進め、△4二玉型で角交換して△3一玉型左美濃に組みたい。



【総評】
本書はタイトルで「右四間飛車エルモ囲い」と銘打っているが、右四間側に肩入れしすぎず、割と公平な視点で解説されている。

単にエルモ囲いでの戦いだけでなく、その周辺の戦いや、エルモ囲いとは相性が悪い形での対策まで書かれているのは◎。右四間側が不利になる変化も正直に書かれており(▲四間飛車が△エルモ囲いで攻略しづらいのは意外だったが)、振り飛車党が読んでも大いに参考になりそうだ。

筆者が奨励会とアマ棋戦の両方を経験しているため、アマで出やすい形もしっかり書かれており、実戦で即戦力となりそう&これからしばらく流行しそう。

第6章では「右四間では戦いにくい角道オープン振り飛車」に対して、右四間党がどう戦えばよいかが書かれているのも◎。

右四間党にとって、総合的な視点で書かれた一冊といえる。半面、エルモ囲いの変化を徹底的に極めたかった人にとっては、やや物足りない印象があるかもしれない。

(2020Jul27)


※誤字・誤植等(初版第1刷・電子版ver1.00で確認):
p70下図面 ×「図は▲1一角成まで」 ○「参考図は▲1一角成まで」 (本文と合わせるため)
p84下段 ×「△5五桂と打ったは、…」 ○「△5五桂と打った結果図は、…」
p118下段 ×「△8五飛と展開し」 ○「△8五飛と転回し」



【関連書籍】

[ジャンル] 振り飛車総合
[シリーズ] マイナビ将棋BOOKS
[著者] 鈴木肇
[発行年] 2020年

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