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■勝ちやすさNo.1!対振りなんでも居飛車穴熊

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勝ちやすさNo.1!対振りなんでも居飛車穴熊
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マイナビ将棋BOOKS
勝ちやすさNo.1!
対振りなんでも居飛車穴熊
[総合評価]
B

難易度:★★★★☆

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)B+
レイアウト:B+
解説:B+
読みやすさ:B
有段向き

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【著 者】 北島忠雄
【出版社】 マイナビ出版
発行:2019年3月 ISBN:978-4-8399-6812-0
定価:1,663円(8%税込) 232ページ/19cm


【本の内容】
第1章 対向かい飛車 第1節 △3二金・8二玉型
第2節 △3二金・7二玉型
第3節 △3二銀型
第4節 △3一銀型
第5節 △4五歩型
第6節 △5二金左型
第7節 △3五歩型
 
第2章 対三間飛車 第1節 △4三銀型
第2節 △6四銀型石田流
第3節 トマホーク
第4節 真部流
第5節 コーヤン流
44p
第3章 対四間飛車 第1節 ノーマル四間飛車
第2節 △6三歩型△5四銀
第3節 △3二銀型
第4節 藤井システム
50p
第4章 中飛車 第1節 △4三銀型
第2節 矢倉流中飛車
第3節 ゴキゲン中飛車△4五銀型
第4節 ゴキゲン中飛車△4四歩型
第5節 ゴキゲン中飛車△3五歩型
62p
第5章 3手目▲2五歩型 第1節 四間飛車
第2節 中飛車
第3節 △5三銀型中飛車
34p

・【コラム】将棋への取り組み

◆内容紹介
「振り飛車には居飛車穴熊」。

これが居飛車党にとっての対抗形の鉄則です。相手が飛車を振ったらとにかく一目散に玉を囲い、ガチガチにした後でドカン。自玉に王手や詰めろが掛からないのをいいことに、大駒を叩き切り、一手差でゴール。これが勝利の方程式でした。

それが、ここ最近プロ間でノーマル振り飛車が復活傾向にあります。

三間飛車のトマホーク、四間飛車の藤井システムや銀冠から玉頭の厚みを生かす指し方、ゴキゲン中飛車など、居飛車穴熊に対する振り飛車の有力策がここ数年で次々に生み出されました。

しかし、やはり「振り飛車には居飛車穴熊」で行きたいのです。

なぜなら居飛車穴熊は将棋で考えうる最も堅い囲いであり、最も勝ちやすい囲いだから。一手のミスも許されない急戦より、多少悪くなってもリカバリーの効く穴熊はまさにアマチュアにうってつけの戦法といえるでしょう。

本書はそんな居飛車党の願いを叶える一冊です。本書を読んで、対振り飛車には自信を持って穴熊を目指してください。


【レビュー】
▲居飛車穴熊vs△振り飛車の定跡書。

居飛穴が振り飛車対策の主流となって約30年以上が経過した。最近は「堅さ」よりも「バランス重視」の考え方が出てきているものの、勝ちやすさの指標である「堅い・攻めてる・切れない」を追求した居飛穴が、強力な対振り飛車の作戦であることには変わりがない。

ただし、居飛穴を扱った棋書は、対四間飛車・対中飛車のものはいくつも出版されているが、対三間飛車・対向かい飛車のものは少なく、またどちらかといえば振り飛車視点、つまり「居飛穴破り」の本の方が多かったように思う。

本書は、あらゆる△振り飛車の作戦に対し、可能な限り居飛穴を目指す戦い方を定跡としてまとめた本である。


扱う戦型は、基本的にプロが有力と見ている(見ていた)ものとなるため、ほとんどの戦型では容易に優劣が付かず、終盤の入口あたりまで検討して、形勢判断は「これにて一局」「いい勝負」「激戦」「先手(後手)やや良し」くらいになっている。


各章・各節の内容を、チャートを添えながら紹介していこう。


第1章は、「対 向かい飛車」。いつでも後手から△2四歩の仕掛けがあるので、先手は居飛穴を目指すなら▲7八金を優先し、離れ駒がないように駒組みしたい。

第1節 △3二金・8二玉型
▲8六角と出て△5二銀と引かせ、△5四銀〜△6五銀を消すのがよい。

第2節 △3二金・7二玉型
後手が△7二玉型で速攻を狙う場合、▲8六角は利かない。▲3六歩で急戦に備えて、慎重に駒組みする。

第3節 △3二銀型
△3二銀型は低い陣形で捌きを狙い、居飛車急戦には△4三銀型にする狙い。居飛穴にする余裕はないので、▲7八金型で戦う。

第4節 △3一銀型
振り飛車は左辺の金銀の移動を省略して仕掛けを狙いつつ、柔軟性もある。先手はやはり▲7八金で玉型を整えておく。

第5節 △4五歩型
後手は△4二銀型で、飛先逆襲ではなく角交換を挑む。先手は角交換に応じ、バランスを取りながら居飛穴に潜る。

第6節 △5二金左型
後手が急戦を狙わず、守備力重視の作戦。先手は仕掛けを警戒しつつ、やはり▲7八金としてから居飛穴に潜る。

第7節 △3五歩型
△3五歩を突いて石田流を見せ、▲2五歩を突かせる作戦。後手から2筋を仕掛けた後に、△3四飛と飛車を収納したり、△3四銀と進出できたりする。先手は▲4七銀型にして、3筋を触る手を見せるのが急務。居飛穴に潜るよりも、後手が居玉のまま戦いになる状況にするのが良い。



第2章は、「対 三間飛車」

第1節 △4三銀型
△4三銀型は、石田流への組み替えや玉頭銀が主な狙い筋。先手は5筋を後回しにして、▲7八金から居飛穴へ。

第2節 △6四銀型石田流
△6四銀として、▲6六銀を見合いにさせてから石田流に組む。▲4六銀がなくなっているのが後手のメリットだが、5筋の当たりは強くなる。先手は持久戦よりも、二枚穴熊で囲いを済ませて▲5五歩と仕掛けたい。

第3節 トマホーク
▲5筋不突き居飛穴には△トマホークが怖い作戦。玉頭銀と端桂△9三桂で、囲わずに攻めてくる。トマホークの気配を感じたら、▲5六歩から5筋位取りにして、局面を収めてから居飛穴に潜ってどうか。

また、△6四銀型トマホークに対して居飛穴に潜るのはハイリスク。急戦にチェンジしたほうが良い。

第4節 真部流
真部一男が得意とした形。△6四銀型の高美濃で、中央を攻めてくる。まともに喰らえば四枚穴熊でもつらい。

第5節 コーヤン流
中田功が得意とする形。美濃に囲い、早めに△8五桂と跳ねて、角の睨みで居飛穴を攻めてくる。先手は▲4八銀型で駒組みし、端攻めが来る前に戦いを起こしたい。



第3章は、「対 四間飛車」

第1節 ノーマル四間飛車
角道を止め、美濃に囲うオーソドックスな四間飛車。代表的な居飛穴対策は、△4四銀型と△5四銀型。

△4四銀型は攻守兼備で、△5五歩からの仕掛けを狙ってくる。先手は▲7九金型なら角を▲2六角型に配置する。▲7八金型なら松尾流穴熊を狙うか、▲6八角で4筋を狙うか。

△5四銀型は飛角の働きが良く、△6五歩と端を絡めた仕掛けを狙ってくる。ただし角道が通っている分、居飛車から角交換を狙う仕掛けがある。

第2節 △6三歩型△5四銀
△6三歩型と△5四銀の組み合わせが最近現れた形。先手から▲6五歩と仕掛けたときに、歩がぶつからないのが後手の主張。

第3節 △3二銀型
△3二銀型は、松尾流穴熊を牽制し、角交換に△3三同銀と取れるのが長所。半面、左銀を攻撃に参加させるのは難しい。後手から△4五歩と角交換を挑み、先手が拒否すれば、△3五歩から浮き飛車で石田流を狙ってくる。先手は石田流阻止を目指したい。

第4節 藤井システム
藤井猛が開発した戦法。主に居玉で、角筋を生かして縦の攻めを狙ってくる。



第4章は、「対 中飛車」

第1節 △4三銀型
角道を止めた△4三銀型の中飛車は守備的。左金を△3二金とバランス重視で使うか、形を決めずに△4五歩か、高美濃にして堅さを求めるか。居飛穴側は、囲いが整うまでは角交換に応じないように。

第2節 矢倉流中飛車
矢倉規広が得意とする形。△5三銀〜△6四銀型から6筋で銀対抗して、薄くなった4筋に転戦してくる。

第3節 ゴキゲン中飛車△4五銀型
△ゴキゲン中飛車で、先手が角道を止めて持久戦を見せたら、足早に左銀を繰り出して△4五銀まで持ってくる。5六で金銀交換になりそう。

第4節 ゴキゲン中飛車△4五歩型
先手の一直線穴熊に対し、△4五歩と位を取って4筋に転戦する。先手は速めに5筋の位をほぐしておきたい。

第5節 ゴキゲン中飛車△3五歩型
浮き飛車から石田流の形を目指してくる。先手は▲4七銀型を作って安定させておきたい。



第5章は、「3手目▲2五歩型」。ゴキゲン中飛車封じ、横歩取り封じなどで用いられる手法。かつては「(形が保留できるものを決めてしまうのは)志が低い」などと言われていたが、近年は価値が見直されている。後手は向かい飛車や、角道を止めたノーマル振り飛車もできるが、「角道オープン振り飛車」もある。

第1節 四間飛車
角道を止めない四間飛車を扱う。どちらかが角道を止めれば穏やかだが、突っ張った場合は角交換して先手が居飛穴を目指す角交換の前に6筋に金を並べて離れ駒をなくし、後手からの急戦に丁寧に対応しよう。

第2節 中飛車
先手が先に角道を止めると、△4四銀型の中飛車になりそう。後手からの△5五歩の仕掛けが常にあり、また石田流への転戦もある。

第3節 △5三銀型中飛車
角道を止めない△5三銀型もある。居飛穴を牽制しているが、それでも潜ってどうか。



〔総評〕
本書に載っている戦型は、メジャーなものだけでなく、向かい飛車の各種作戦(第1章)や角道オープン振り飛車(第5章)などのようにあまり他書で扱われていない戦型もいろいろあり、「居飛穴カタログ」と言っていいだろう。

ただし、四間飛車△藤井システムや矢倉流中飛車など他の専門書の方が詳しく書かれているものもあるため、すでに居飛穴をある程度指しこなしている人にとっては「知っているものが多い」ということになるかもしれない。逆に、本書の戦型が「新鮮なものばかりだった」という人には、本書の解説では居飛穴を生かした勝ち方までは示されておらず、やや難しすぎるかと思う。そこが評価Bのメイン理由。(※タイトルからは、やや易しめの本のように感じられるが、割と難易度高めの本です)

また、全体的に、本文中の変化の解説について図面が不足しているため、頭の中で動かすのはやや大変で、吸収率も悪くなりそう。できれば盤駒を使うか、将棋ソフトなどで棋譜を並べながら読むのが良い。

本書の戦型が、最後までそのまま我々の実戦でなぞられることはあまりないと思うが、これまで対応策の分からなかった戦型に対して指針が持てるし、変化を並べておくことで「居飛穴の戦いの呼吸」を吸収できるだろう。

居飛穴作戦を総ざらいしたい人や、あまり知らない戦型を少しでも知っておきたい人にはオススメの一冊となる。



※誤字・誤植等(初版第1刷で確認)
p117 第4図 本来の図から5手進んでしまっている。
p135上段 ×「第2図以下の指し手」 ○「第2図以下の指し手A」



【関連書籍】

[ジャンル] 穴熊
[シリーズ] マイナビ将棋BOOKS
[著者] 北島忠雄
[発行年] 2019年

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