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■菅井ノート 実戦編

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菅井ノート 実戦編
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菅井ノート 実戦編 [総合評価] B

難易度:★★★★

図面:見開き4〜6枚
内容:(質)A(量)B
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
上級〜有段向き

【著 者】 菅井竜也
【出版社】 マイナビ
発行:2013年11月 ISBN:978-4-8399-4908-2
定価:1,575円(5%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
【構成】池田将之

第1局 中村太地四段戦「順位戦デビュー」
第2局 西尾明五段戦「プロ初黒星」
第3局 中座真七段戦「菅井流△2四歩を初披露」
第4局 大石直嗣四段戦「殴り合いの終盤戦」
第5局 船江恒平四段戦「兄弟子と全勝対決」
第6局 長岡裕也五段戦「菅井流△4四歩、初登場」
第7局 吉田正和四段戦「吉報、届かず」
第8局 牧野光則四段戦「角交換型振り飛車で戦う」
第9局 村中秀史六段戦「昇級に王手」
第10局 松本佳介六段戦「2年越しの昇級」

・【コラム】(1)1期目の順位戦 (2)2期目の順位戦 (3)3期目の順位戦 (4)井上一門との戦い (5)菅井流研究法

◆内容紹介
SUPER自戦記シリーズ、そして菅井ノート、待望の第3弾!

今回の自戦記では、自分がどんな思いで指し手を積み上げてきたのかを、お伝えすることができるまたとないチャンスである」(まえがきより)

若き振り飛車党の旗手、菅井竜也五段の深すぎる研究を惜しげもなく披露し、大好評をいただいた『
菅井ノート 後手編』(2012.09)、『菅井ノート 先手編』(2013.01)。

そして、これら2冊で語られた理論を実戦で使ったのが本書です。

持ち時間各6時間の順位戦で、菅井五段が考え抜いた一手一手の意味が、本人の解説+研究つきで紹介されています。
30戦、26勝4敗。脅威の勝率(.867)を残して駆け抜けた菅井五段の
3期の順位戦から珠玉の10局を取り上げました。

若手棋士のトップランナー菅井五段の指し手、研究、将棋観。すべてが凝縮された一冊。
ぜひ手にとってご堪能ください。


【レビュー】
菅井竜也五段の自戦記本。SUPER自戦記シリーズの第3弾。

菅井は関西注目の若手棋士。17歳でプロ四段になり、1年目から大活躍して、大和証券杯では羽生らを破って優勝。順位戦C級2組でも3期で26勝4敗の超好成績だったが、運に恵まれず、C2を抜けるのに3年かかった。

得意戦法は先手では石田流、後手ではゴキゲン中飛車。研究家としても評価が高く、数々の「菅井新手」を創出。それらを記した「菅井ノート」シリーズの『菅井ノート 後手編』(2012.09)と『菅井ノート 先手編』(2013.01)は弊サイトで2冊ともS評価である。

本書は、菅井のC級2組順位戦の3期を自戦記で振り返る本である。「菅井ノート」シリーズの3冊目であり、同時に「SUPER自戦記シリーズ」の3冊目でもある。(オモテ表紙には「SUPER〜」であることが表示されていないが、背表紙・裏表紙にはちゃんと明記されている)

SUPER自戦記シリーズは、自戦記の途中で「研究」に分岐するのが特徴の一つであるが、3冊目である本書からは、分岐のページは周囲に網掛けが入っており、ひと目で分岐と本編が区別できるようになった。

これまでの『菅井ノート』では書かれなかった新手や新構想も本書で登場する。菅井が数多くの新手を開発できるのは、p180のコラムDにあるように、「初手から研究」(!)を行って、「定跡でも常に何かないかと探」っているためである。また、関西若手としては珍しく、関西将棋会館近辺には居を構えず、岡山から対局のたびに将棋会館に出向いてきているという変わり種。その分、自分だけで考える時間が多いことが、新しい発想に結びついているのだろう。



各局の内容を簡単に紹介していこう。なお、定跡書である「菅井ノート」2冊で書かれたことの原型になる実戦が本書に載っているのかな…と想像していたが、実際は過去2冊に載っている内容はほとんどなかった。むしろ、定跡書には書かなかった(書けなかった?)ような、試行錯誤中の作戦を採用した将棋が多く採り上げられている。



====最初の2局はC級2組の1期目(第69期)====

(1) vs中村太地四段
   中終盤で飛車交換を2度迫ったことが印象に残る一局。
 戦型:▲石田流本組△3一玉型左美濃
  [定跡講座]△1四歩に▲1六歩の変化(1p)
    ・3手目▲7五歩に△1四歩とされたとき、▲1六歩と受けるとどうなるか
  [中盤の急所]作戦勝ちからの方針(1p)
    ・後手(中村)が作戦勝ちになっていたが、本譜は仕掛けが急ぎ過ぎだった。
  [中盤の急所]後手に失着(1p)
  [終盤の解明]決断の▲6二飛成(1p)




(2) vs西尾明五段
 戦型:△ゴキゲン中飛車▲丸山ワクチン
   角交換後の▲9六歩に対して、9筋を受けずに△6二玉と上がり、続いて△3五歩が当時の菅井の研究手。すぐに△3六歩と突っかけていく。〔右図〕
既存の定跡書で見た覚えがなく(『菅井ノート 後手編』にも載っていない)、面白い作戦だが、現在の目ではやや無理筋とのこと。この期の第3局(佐藤慎一戦)でも使ったが、敗北して順位戦2連敗。師匠の井上九段に「普通にやった方がええんとちゃう」(p48)と言われ、現在は封印中。
  [中盤の急所]▲3一龍が最善手(1p)
  [終盤の解明]△2二馬なら後手勝ち(2p)




====ここからC級2組の2期目(第70期)====

(3) vs中座真七段
 戦型:△ゴキゲン中飛車▲超速
   ▲5五銀右〜▲5八飛と押さえ込んできたときに△2四歩と仕掛けるのが菅井新手〔右図〕。詳しくは『菅井ノート 後手編』の第2章第1節のp91以降を参照。2筋に飛車がいないのに、居飛車が切りたい歩を振飛車側から突くので、違和感がある。居飛車の対応によっては千日手含みになるので、後手番ならではの手だ。本譜は居飛車が打開したが、細かい押し引きから丁寧に指して振飛車が制勝。現在では〔右図〕を居飛車が避けているとのこと。
  [定跡講座]従来の定跡(1p)
    ・▲5五銀右に△5四歩▲4六銀△6四歩…
  [中盤の急所]▲3五飛の変化(2p)

攻め将棋と思われているかもしれないが、実はもともと受けるのが苦にならない棋風である」(p70)



(4) vs大石直嗣四段
 戦型:▲升田式石田流
  [序盤の研究]手損の意味(1p)

    ・▲6六飛〜▲7六飛と手損をしての▲6七角〔右図〕が菅井の新構想。第30期名人戦第6局で升田が指した▲6七角と似ているが、▲5七歩型のままなので角筋が通っている。△3四歩を狙うとともに、上手いタイミングで飛を動かして▲8五角が真の狙いとなる。
  [序盤の研究]指したかった▲3四銀(1p)
  [中盤の急所]難解な形勢(1p)




(5) vs船江恒平四段
   第70期での唯一の敗北。この負けが響き、菅井は最終的に9勝1敗でも昇級できなかった。
 戦型:△ゴキゲン中飛車▲超速
  [定跡講座]▲4五銀の変化(2p)
  [中盤の急所]▲5五同銀の変化(1p)
  [中盤の急所]後手の最善手(2p)

    ・感想戦で気づかなかった変化を後日発見して、「思わず(対戦相手の)船江さんに電話してしまった」(p101)とは、兄弟弟子だからできるのか、それとも研究熱心さが由来のものか。(おそらく両方だろう)



(6) vs長岡裕也五段
 戦型:△ゴキゲン中飛車▲超速
   菅井新手△4四歩〔右図〕が初登場した一局。本譜では、先手は1時間半の長考の末に▲3五歩と仕掛けている。定跡書での記述は、『最新定跡村山レポート』(村山慈明,マイナビ,2012.07)p77を参照。
  [定跡講座]菅井流の狙い(1p)
    ・▲4六銀と出させないのが狙い。もし▲4六銀なら△4五歩…本書の解説は簡潔なので、詳しくは『菅井ノート 後手編』の第1章第1節を参照。
  [序盤の研究]帰宅後の好手順(1p)
  [中盤の急所]恐れていた一手(1p)




(7) vs吉田正和四段
  7筋歩交換後に▲7六飛と一旦停車してから▲7八飛と引いた手が印象的。
 戦型:▲石田流
   升田式石田流の出だしから、▲3八玉型で▲9六歩と様子を見る。昔ながらの升田式の狙いである▲9六角は消えるが、9筋を突き越せれば飛が広くなる。本譜は△9四歩に▲7四歩〔右図〕と意欲的に仕掛けた。この時期は、角道オープンの石田流では7筋の歩をいかに交換するかがテーマになっており、その一案である。この変化も従来の定跡書では採り上げられていない。
  [序盤の研究]▲9六歩のもう一つの意味(1p)
  [中盤の急所]後手の駒を上ずらせる(1p)




====ここからC級2組の3期目(第71期)====

(8) vs牧野光則四段
   本書の最長手数156手。
 戦型:△角交換四間飛車+穴熊
   菅井の後手番は通常ゴキゲン中飛車だが、本譜では普段あまり指さない角交換四間飛車を採用。前日の研究会では3戦3敗だった。
  [序盤の研究]9筋のアヤ(1p)
  [序盤の研究]手損で先手に指させる(1p)




(9) vs村中秀史六段
   本局の3日前の朝日杯決勝(渡辺竜王vs菅井)と途中まで同一。
 戦型:△ゴキゲン中飛車▲超速
  [定跡講座]今では突いてはいけない△5六歩(1p)
    ・このタイミング〔右図〕での△5六歩は振飛車不満、が現在の結論。
     ただし、「現在は手損でも飛車先の歩を持つ方が良いと定説が変わっている」(p185)ので、別のタイミングで△5六歩を突くことがある。
     『菅井ノート 後手編』では触れられておらず『ゴキゲン中飛車の急所』(村山慈明,浅川書房,2011.12)の第2章-4に少し載っているくらい。
  [中盤の急所]独特の戦型(1p)
    ・5筋の歩を切る指し方は、「超速の中でも独特な感覚を要求される」(p190)
  [中盤の急所]一路の違い(1p)
    ・角成の升目が一つ違ったのが大差だった。
  [後手の負け筋](1p)



(10) vs松本佳介六段
 戦型:▲中飛車 前田流
  [定跡講座]前田流の思想(2p)
    ・原点は近藤流。△6四銀型を▲6六歩〜▲7七桂で追い返して5筋歩交換する。(2001年)
     →早めに△8五歩の突き越しを急ぐことで、▲7七桂を作らせない型が登場。(2005年)
     →△8五歩▲7七角の交換の後、△3四歩と角道を開けたらすぐに▲2二角成とするのが前田流。手損だが、▲7七銀を間に合わせてから、5筋歩交換が実現する。〔右図〕(2012年)
    ・『菅井ノート 先手編』には載っていない。他にも載っている定跡書は見つけられず。
    ・菅井は「感覚的にはうまくいかない戦法だという気がした」(p210)が、「自分で考えて研究したことでつかんだものを重視しないといけないと思っ」(同)って、この大事な対局で採用してきた。
  [定跡講座]前田流の現状(1p)
    ・当初は良かったが、現状は振飛車が苦しいとのこと。定跡書に載る前に消えた戦法なのか…
  [序盤の研究]用意の▲5五飛(1p)
  [中盤の急所]振り飛車自信ありの理由(1p)




これまでの「SUPER自戦記シリーズ」2冊と比べると、分岐の量は少なめで、自戦記そのものに重きが置かれている。また、本文では長い変化手順は控えめにされており、考え方重視でかなり読みやすい文章になっている。

あなたが△ゴキゲン中飛車と▲石田流を操る現代振飛車党で、実戦からヒントを得たいタイプであれば、即買いの一冊だ。(2014Mar14)



【関連書籍】

[ジャンル] 
自戦記
[シリーズ] 
SUPER自戦記シリーズ
[著者] 
菅井竜也
[発行年] 
2013年

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