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■豊島将之の定跡研究

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豊島将之の定跡研究
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マイコミ将棋BOOKS
豊島将之の定跡研究
[総合評価] B

難易度:★★★★☆

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)B
レイアウト:A
解説:B
読みやすさ:B
有段向き

【著 者】 豊島将之
【出版社】 毎日コミュニケーションズ
発行:2011年1月 ISBN:978-4-8399-3794-2
定価:1,470円(5%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
第1章 ゴキゲン中飛車 (△ゴキゲン中飛車vs▲4六銀「超速」) 34p
第2章 一手損角換わり (△一手損角換わりvs▲早繰り銀) 36p
第3章 横歩取り8五飛 (横歩取り△8五飛vs▲新山ア流) 28p
第4章 横歩取り8五飛△5二玉型   14p
第5章 角換わり腰掛け銀 (富岡流と同型拒否▲右四間) 34p
第6章 実戦編 ・「最新形から力将棋へ」 田中魁秀九段戦
・「競り合いの熱戦」 三浦弘行八段戦
・「幸運な勝利」 阿部隆八段戦
・「研究の勝利」 渡辺明竜王戦
・「新手不発も辛勝」 畠山成幸七段戦
・「スリリングな早指し戦」 谷川浩司九段戦
・「懐かしい一局」 瀬川晶司四段戦
72p

◆内容紹介
流行形の最先端!!
最近はゴキゲン中飛車や一手損角換わり、そして横歩取り8五飛戦法など、後手が主導権を取りにくる戦法が増えました。本書ではこれらの戦法に対して
先手番の策を一つに絞り、優劣がはっきりするところまでを詳しく解説いたしました。
著者の豊島将之六段は棋士になってから各棋戦で勝ちまくり、第60期王将戦ではタイトル初挑戦を決めた期待の新星です。対局には作戦を練り込んで臨むタイプで、その研究を講座と自戦記で紹介しています。
本書の戦型はこれからのタイトル戦でも頻繁に現れます。インターネット中継などをご覧になる際に本書が手元にあれば、よりいっそう楽しむことができるでしょう。


【レビュー】
定跡最前線の解説書。

豊島は「関西若手四天王」の一角(他は村田顕弘、稲葉陽、糸谷哲郎)として知られる若手のホープ。2011年2月現在進行中の第60期王将戦において、A級の錚々たるメンバーがひしめくリーグを5勝1敗で勝ち抜き、久保利明王将に挑戦中である。

初著作(共著)となる『関西新鋭棋士実戦集』(豊島将之,糸谷哲郎,村田智弘,MYCOM,2008.07)では、自戦解説の合間に挿入された「研究」が50手以上も先の局面での成否を検討していて、ものすごく難解に感じられた。

本書は、その豊島が定跡最前線について記した本である。なお、まえがきにあるように、ベースの知識として少なくとも以下の4冊を読んでいる(または相応の知識がある)ことが前提となっている。

 (1) 『遠山流中飛車急戦ガイド』,遠山雄亮,MYCOM,2010.07
 (2) 『佐藤康光の一手損角換わり』,佐藤康光,MYCOM,2010.08
 (3) 『最新の8五飛戦法』,高橋道雄,日本将棋連盟発行,MYCOM販売,2009.12
 (4) 『ライバルに勝つ最新定跡』,村山慈明,MYCOM,2010.09

各章の内容を、チャートと図面を交えながら紹介していこう。

第1章は、△ゴキゲン中飛車vs▲4六銀、通称「超速」2010年2月10日付けの渡辺明ブログによれば、発案は奨励会の星野三段で、初登場からわずか1年で130局も指され、いまやゴキゲン対策の8割がこの作戦とのこと。現在プロでもっともホットな戦型の一つだ。

この戦型では、▲4六銀にガッチリ対抗して後手が△4四銀型にした場合、後手からの早い動きがなくなるので、先手は持久戦にシフトし、▲居飛穴vs△銀冠の構図になる。それも一局だが、本章では後手が持久戦を嫌って動く展開がメイン。後手の懸案としては、「どこまで玉を囲うか」と「負担になりやすい△5五歩をいつ△5六歩と捌いていくか」の2つがポイントとなる。

なお、この戦型は『遠山流中飛車急戦ガイド』の第5章にも詳しく書かれているが、『遠山流〜』では基本的に△3二金型だけだった。また、『ライバルに勝つ最新定跡』の第1章も基本的に△3二金型である。本書では△3二銀型や、美濃囲い保留(△7二玉型)での△3二金型などもガッツリ書かれている。

第1章

第2章は、△一手損角換わりvs▲早繰り銀。基本となる局面は『佐藤康光の一手損角換わり』の第1章(早繰り銀)と同じ。本章の前半では、詰むや詰まざるやの変化を徹底的に検討し、現状の結論としては「後手が少し勝っていそう」となっている。そこで、現在の最新形は、後半の第2図以下となる。『佐藤〜』で検討された変化はサラッと流し、「後手の有力策」とされた「2筋で銀交換後に、単に△4五銀」の変化を深く掘り進めている。

第2章

第3章は、横歩取り△8五飛vs▲新山ア流。テーマや検討している内容は、『ライバルに勝つ最新定跡』とほとんど同じだが、本章では2010年の名人戦第2局(▲羽生vs△三浦)(将棋の棋譜でーたべーす)でも現れた「…△1五角▲2三歩△同金…」(第3章チャートの下の方)の変化について、さらに深掘りを進めている。

第3章

第4章は、横歩取り△8五飛の△5二玉型。わたしが知る限りでは、単行本では初登場の戦型だ。

△8五飛戦法の黎明期には「△4一玉型の中原囲いの方が△8五飛型との相性がいい」と言われ、10年以上ずっと△4一玉型が指されていたが、2010年に△5二玉が明確な意図を持って指されるようになった。プロ公式戦で最初に指したのは、たしか松尾歩七段。△5二玉型は、新山ア流の3筋攻めに対して玉が一路遠いのが利点で、△3二金が浮き駒になっているのが欠点。

また、先手の構えを見てから、手損を顧みず△4一玉型に戻すことも可能だ。従来の定跡と一手違ってくるため、これまで蓄積されたギリギリの変化は大部分がご破算になる可能性がある。そうすると、もともとの強みである「玉の堅さ」が生きてくるというわけだ。

先手はこの構想を咎めたいため、現在は1筋攻めに目が行っている。第4章チャートの中段にある「@▲3二角成△同玉▲3五金」の変化は、2010年の竜王戦第1局(▲渡辺vs△羽生)(将棋の棋譜でーたべーす)が代表局だ。

第4章

第5章は、角換わり腰掛け銀。メインは同型腰掛け銀で猛威を振るう「富岡流」(飛を見捨てて△4四角成から攻める)で、サブは後手が同型を拒否した場合の先手右四間飛車の変化。

猛威を振るう「富岡流」は、「2手目△8四歩問題」(角換わり腰掛銀で後手が互角に戦えなければ、後手が2手目に△8四歩と突くことができない、という問題)にも大きな影響を及ぼしている。本章でも全体的に「先手良し」となっていて、後手の苦しい状況は変わっていないようだ。(ただし、同型以外での新工夫が出始めているので、今後どうなるかは不透明)

富岡流の単行本での最新版は『ライバルに勝つ最新定跡』の第7章。ただし、『ライバル〜』では△2八馬に▲4九飛△3八馬▲6九飛とよろける変化に多くのページを割いていたが、本書ではその変化はばっさりカット。▲4四角成〜▲2二歩の変化に注力している。最近のタイトル戦では、2010年の棋聖戦第1局(▲羽生vs△深浦)(将棋の棋譜でーたべーす)が記憶に新しい。

第5章


全体的に、「ライバルに勝つ最新定跡』(2010.09)の2011年1月時の最新版」という内容だと思ってよい。著者も違うし、出版年月に4ヶ月しか差がないが、それほど現在のプロ将棋は変遷が激しいということの裏返しでもある。

最新の定跡に追随したい人と、プロ将棋の観戦ガイドとしたい人には必携。(2010Feb21)


※週刊将棋2011年2月16日号では、本書に関するエピソードが2つも掲載された。

(1) 佐藤康光九段の第18期銀河戦優勝祝賀会にて。
p7「佐藤は決勝の丸山九段戦に触れ、「自著(『佐藤康光の一手損角換わり』)では有力と書いた手を指したが、研究に穴があった。間違ったことを書いてしまったが(『佐藤〜』p67の「△1五角と打ち、▲2六歩に△2四角が一例だ。」のくだり。▲2六歩で丸山に▲1六歩と突かれ、佐藤は困った。)、もう出版まで修正が間に合わなかった。最近豊島君の書いた『豊島将之の定跡研究』に正しいことが書かれてあった(本書p69〜70)ので良かった…」と語り、ほっと胸をなでおろしていた。
→他の棋士の著書でも、正しいことが書かれているとホッとするものなんですね。

(2) 広瀬王位がC級1組順位戦で、本書に載っている手で勝った件。
p8「…これが最近発行の定跡書に▲6五歩を結果図として載っている(本書p37)という。広瀬は「豊島さんの本(豊島将之の定跡研究)を読んでいたので」。広瀬は4時間余り時間を残し49手の快勝劇。
→出版されてから対局日まで2週間のホヤホヤの新刊とはいえ、プロが本に載っている変化そのままで負けてしまうというのはどうなんでしょうか…



【関連書籍】

[ジャンル] 
総合定跡書
[シリーズ] マイコミ将棋BOOKS
[著者] 
豊島将之
[発行年] 
2011年

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