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■鉄壁!トーチカ戦法

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パワーアップシリーズ
鉄壁!トーチカ戦法
[総合評価] B

難易度:★★★★

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)B
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
上級〜有段向き

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【著 者】 三浦弘行
【出版社】 日本将棋連盟
発行:2003年10月 ISBN:4-8197-371-4
定価:1,365円(5%税込) 223ページ/19cm


【本の内容】
第1章 ▲6六角型トーチカ (1)△6三金型対策
(2)△5四銀型対策
(3)△5二飛型対策
108p
第2章 ▲6七金型トーチカ (1)△5四歩型銀冠対策
(2)△5四銀型銀冠対策
(3)後手・穴熊型対策
44p

・実戦次の一手20問 問題と解答=42p
・参考棋譜10局=21p

◆内容紹介
藤井システムなど最新の振り飛車に苦しむ居飛車党に朗報。“トーチカ戦法”は金銀4枚でガチガチに玉を固めてから、敵陣を歩で揺さぶり、大駒の交換を狙って強く決戦を挑む、新時代の振り飛車撃退作戦。本書ではこの戦法を▲6六角型トーチカと▲6七金型トーチカとの2章に分け、その戦い方のコツをすべて伝授。トーチカ戦法で高い勝率を挙げた著者には第28回将棋大賞の「升田幸三賞」が贈られた。


【レビュー】
トーチカ戦法の解説書。

四間飛車藤井システムが居飛穴に対して猛威を振るったとき、▲8九玉という囲い方が提案された。確か、最初はアマチュア発の「西田スペシャル」だったと思う。玉が相手の角筋に入らないため、比較的安全に堅く囲うことができるのが特徴だ。

その後、▲8九玉型はいくつかのバリエーションが出現し、名称も「ミレニアム」や「かまくら」、そして本書の「トーチカ」などが提案されてきた。「▲8九玉型で角筋を避けて堅く囲う」ということさえ満たせば、広義では「菊水矢倉」さえもこのカテゴリーに含まれることがある。

本書では▲8九玉型を「トーチカ」と名付け、△四間飛車vs▲トーチカの戦いを主に解説している。


本書で解説しているトーチカの組み方は2種類。

第1章では、▲6六角型トーチカを解説。舟囲いの形から、▲6六角〜▲7七桂〜▲8八銀〜▲6八金寄〜▲8九玉〜▲7八金寄〜▲5九銀〜▲6八銀と組み上げる。途中では、地下鉄飛車への変化も考えられる形だ。

参考棋譜10局のうち、6局はこの形で、本書では本筋扱いと言ってよい。

また、第2章では、▲6七金型トーチカを解説。舟囲いの形から、▲7七角〜▲6八角〜▲6六歩〜▲6七金〜▲7七桂〜▲8九玉〜▲7八金〜▲5七角〜▲5九銀〜▲6八銀右〜▲8八銀〜▲7九銀右で完成形となる。組み上げるまで手数がかかるが、途中の▲6八角で△2二飛を強要しており、振飛車からは動きにくい。「厚いトーチカ」なので、桂頭の不安も緩和されているし、6七金が攻めにも役立つ。



振飛車側の対策は、大きく分けて以下の4つ。

(1)△6三金型
 普通に高美濃に組み、居飛車の動きを待つ。やや受け身。△5四歩を保留し、▲3七桂〜▲4六角には△5四銀〜△4五歩の含みを残す場合もある。

(2)△5四銀型
 やや積極的。攻めるというよりは、ダイヤモンド美濃に構えて強く戦う。また、振飛車が後手ならば、玉の堅さを同等に保つことで、先手に無理な仕掛けか千日手の二択を迫る指し方もある。

(3)△5二飛型
 中飛車に振り直す。一時は「トーチカ対策の決定版」と言われたこともあったような。バランス重視の構えで、△5五歩を見 せつつ、角交換に強いので、「▲6六角型トーチカの有力な狙い筋▲5七角〜▲2四歩を二重に封じようとしている」(p97)。強敵なので、心してかかりたい。

(4)△銀冠or穴熊で待機
 主に▲6七金型に対して。厚さ負けしないように銀冠に組んで待つ。穴熊への組み替えも有力で、こちらも「トーチカ対策の決定版」と言われたことがあったような。


一方、居飛車の攻め方は、大きく分けて以下の2つ。

(1)▲2四歩△同歩▲3五歩△同歩▲同角
 本編で多く現れる仕掛け方。居飛穴戦でも同じような仕掛けがあるので、応用できる。▲3五歩△同歩▲同角だと仕掛けにならない場合がほとんどなので、▲2四歩をしっかりマスターしよう。

(2)▲2四歩△同歩▲2六飛〜▲3五歩
 参考棋譜で何回か現れる仕掛け方。やや曲線的。本編では▲2六飛〜▲2四歩△同歩▲3五歩を中心に解説している。



巻末には参考棋譜が10局あるが、本編と直接つながるものはない。▲6七金型が1局と、▲6六角型(△4四角型)が6局あるので、指し方の参考としてほしい。三浦が負けたものが3局掲載されているので、トーチカの失敗例としても有用となる。

また、10局のうち、後半の3局は特殊なもので、▲矢倉vs△右玉からのトーチカ(菊水矢倉を経由)、△六間飛車(!)に対抗したトーチカ、△4四角型での△2一玉+左美濃の形の3つ。代表的な局面を下図に挙げておく。



現在、トーチカは「先手番で千日手模様になりやすく、あまり面白くない」とされ、また「後手番では藤井システムに対し居飛穴に組める方法が発見された」ということで、プロではほとんど指されていないようだ。

しかしアマチュアではもちろんまだまだ有効。角筋や端攻めをほとんど気にしなくてよいのは実戦的にも大きく、また居飛穴の時と同じような攻め筋が使えるのもありがたい。囲いの特性上、桂頭に不安はあるものの、相手の距離感を狂わせやすいし、場合によっては左の桂を捨てても(時には右の桂も)大駒が働けばよいケースもあるなど、自分だけの感覚を作りやすい。いまさらながら、得意戦法として検討してみてはいかがだろうか。


なお、本編のチャートを添えておくので、参考にしてほしい。特に第1章は非常に長くてごちゃごちゃしているように見えるが、駒組み・仕掛け・中終盤と意識すればそれほど難しくない。(2016Jun14)



※誤字・誤植等(第1刷で確認):
特に見つかりませんでした。



【関連書籍】

[ジャンル] 
四間飛車vs持久戦系
[シリーズ] 
パワーアップシリーズ
[著者] 
三浦弘行
[発行年] 
2003年

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