2.6KB

<< 直前のページへ戻る
 

■盤上の攻防 将棋 王位戦五十年

< | No.0872 | >

トップページ > 棋書ミシュラン! > 盤上の攻防 将棋 王位戦五十年
盤上の攻防 将棋 王位戦五十年
zoom
盤上の攻防 将棋 王位戦五十年 [総合評価] C

難易度:−

図面:ほとんどなし
内容:(質)B(量)B
レイアウト:A
解説:ほとんどなし
読みやすさ:A
王位戦を懐古したい人向き

【著 者】 高林譲司
【出版社】 中日新聞社
発行:2010年8月 ISBN:978-4-8062-0614-9
定価:1,600円(5%税込) 198ページ/19cm/H.C.


【本の内容】
・口絵(カラー写真)
・プロローグ「祝賀会」
前史 幕府保護の「将棋所」/群雄割拠の将棋界/混迷から棋界統一へ/世襲から実力名人へ/東西棋界が和解へ/関西の阪田破れる/焦土からの復興/無敵木村が敗退/刺激的な棋戦を演出 22p
大山時代 戦後の機運の中で/黄白リーグの誕生/第一手は7六歩/乱戦制し四冠に/丸田、端歩突きに動揺/老齢の勝負師/「妖刀使い」の異名も/次世代の足音高く/まき割り大五郎/誕生日に角帯を贈る/新風吹き込む大内/薄らぐ王者の貫禄/ライバル、新旧交代へ/覇者交代、ついに無冠 36p
中原時代 駒飛び交う「空中戦」/新規約で九段昇進/流儀さまざま/将棋の日に土俵対局/カミソリ勝浦の凄み/嘆息する記録係/大山、不屈の挑戦/考慮一分、迷路に誘う/棋史に残る百番指し/巨星落つ 26p
戦国時代 波乱のタイトル戦/棋界も転換期に/小さな駒音ひたひたと/玄人好みの棋風/棋界の新人類たち/一陣の涼風とともに/悪役を買って出る/二十代は許せない/羽生世代の登場/対局の様式美に変化/青磁色の若武者 30p
羽生時代 逆転の“羽生マジック”/郷田のリベンジ/驚異的な短手数/震災後の開幕戦/前人未到の七冠制覇/白熱の接戦で五連覇/「緻密流」の読み/黄金の対局カード/「忍者屋敷」の悔い/王者、四冠に後退/十連覇阻む谷川/失冠から大逆襲へ/炎の十七番勝負/佐藤康光の“悲願”/野に伏し大輪の花を/名手に“幻の名手”/新たな年輪を重ねて 40p
わたしと王位戦 内藤国雄「一本の電話」
中原誠「旅の風情と対局」
米長邦雄「王位戦の思い出」
高橋道雄「育ててくれた王位戦」
加藤一二三「七局戦って王位獲得」
谷川浩司「過酷な戦いに充実感」
森けい二「クラゲの毒で快勝!?」
郷田真隆「二十一歳の夏」
羽生善治「季節とともに転戦」
深浦康市「忘れられぬ一手」
20p

・棋士系統図=4p
・王位戦一覧表=2p
・あとがき=2p/参考文献・編集協力・写真協力=1p

◆内容紹介
将棋七大タイトル戦の一つ、王位戦。半世紀を迎えたのを記念し、王位戦前の将棋の歴史から王位戦五十期の歴史を振り返り、「王位」を獲得した棋士たちの実像を追う。名局、名場面を再現しながら将棋界半世紀の歴史が分かる。中日新聞夕刊で今年(2010年)四月から七月までの連載を単行本化。


【レビュー】
王位戦の歴史をたどった本。本編(p5〜p164)は、2010年4月〜7月に中日新聞夕刊の文化面に掲載された「盤上の攻防 将棋王位戦五十年」を加筆修正したもの。歴代王位が語る「わたしと王位戦」は書き下ろしとみられる。

王位戦は、現在の七大タイトル戦の中では4番目に歴史が長い棋戦である。主催紙は三社連合(北海道新聞社、中日新聞社(中日新聞・東京新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井)、西日本新聞社)で、現在は神戸新聞と徳島新聞も加わっている。なお、中日新聞は名古屋圏では圧倒的なシェア(わたしの住んでいた地域では8割ほど)があり、この地方の人には王位戦は馴染み深い棋戦である。毎年7月〜8月ごろの暑い盛りに七番勝負が開催される。

前身の「早指し王位戦」からタイトル戦に昇格したのが1960年。今年(2010年)で50周年の節目を迎えることになった。それを記念して発行されたのが本書であり、王位戦関連の書籍は初めての出版となる。(※DVDは2009年に発行されている。『王位戦七番勝負 −道新記録映像から−』)

あなたにとっての思い出深い「王位」は誰だろうか?わたしの場合、将棋に興味を持った中学〜高校のころ、高橋・谷川・森が中日新聞の観戦記に載っていた。森のヒネリ飛車を真似て指し、陣形が出来上がったところで「できた!ヒネリ飛車かっこいい」などと言っていた(もちろん後手を持っていた友人も、陣形が出来上がることが第一目的である(笑))。その後の指し方などはまるで分からないレベルだったが、もっとも純粋に将棋を楽しんでいた頃かもしれない。よって、わたしにとっての王位は「森王位」である。(森王位は一期だけなので、こういう人はかなりレアだと思う……)

というわけで、(知っている範囲で)ノスタルジーに浸れそうな期待を持ちながら、本書を開いたのだが……期待は裏切られた。悪い方に

全体的には、各期の挑決から七番勝負の流れに沿って、時代背景、他の棋戦の動向、タイトル戦に登場した棋士の紹介、そして対局の概説をしていく…のだが、「○○が素晴らしい手で制した。」的な表現が多数あっても、棋譜は皆無、図面もほとんどないので、全然伝わってこないのである。

内容紹介に「名局、名場面を再現しながら」と書いてあったので、棋譜や観戦記の掲載もあると思っていたのだが…まったくなかった。orz 局面図の掲載もわずか1枚で、p88にあるのみ。

以下は「これは棋譜or局面図を載せてほしかった」と思った箇所のリストの抜粋。
p44 「ところが大山が土壇場で指した、たった一つの端歩突きが丸田の心を乱した。」
p62 「王位戦史上最も長く激しい一局」
p59 「難解な玉頭戦から、双方の玉がいつ詰まされてもおかしくない壮絶な接近戦となり、最後に勝ち運が転がり込んだのは大山の側だった。」
p67 「内藤は角道を開けずに戦う「鳥刺し戦法」という珍しい形を駆使」
p77 「米長に致命的な受けの失着が出る。」
p78 「両者は自分の持ち味を存分に発揮して、最高峰の戦いに魅了された。」
p86 「大山は…(中略)渋い受けと鋭い攻めの巧手を駆使して」
p88 「王位戦史上に残るといわれる名手である。」(ここだけ図面あり)
p102 「「非常にうまく指された」と内藤に言わせた一局だった。」
p110 「追い込まれた谷川は二者択一の中で玉をわざと危険地帯へ逃がした。それが最善手であり、…」
p113 「森は自陣に攻防兼備の角を放った。…(中略)森一流の奇抜な一手であることは間違いなく、…(中略)今シリーズを支配する一手だったといえる。」
p132 「止まらない汽車に乗ったようなものであり、いわば百b走を二人で一気に駆け抜けるような将棋であった。」
p149 「最終盤まで見越した深い読みには、いま棋譜を並べ返しても驚嘆するほかはない。」
p155 「まれに見る難解な寄せ合いが繰り広げられた。」
p160 「王位戦史上屈指の大激戦」


著者が実際に見聞きしたエピソードがごくまれに挿入されている(p17:木村義雄十四世名人の会話、p156:佐藤康光が七番勝負に敗れた夜に記者控え室に現れたエピソード、など)のは良いが、本当に極まれ(というか、この2つだけ)。全体的に平易すぎて感動があまりなかった。某観戦記のように妄想話や記者の自分話で埋められるよりはマシだが、著者が盤側で見てきたのならもうちょっとドラマティックに書けなかったものかと。

それに比べると、歴代王位のショートエッセイ「わたしと王位戦」は、当事者ならではのエピソードもあって、面白い話も少しあった。特に、内藤の王位戦がらみの運命的なエピソードは少し感動する。森のクラゲの話も面白い。こりゃそのときは言えんわな(笑) 郷田は話よりもp121とp180の写真のギャップがすごい。

しかし、こちらも棋譜や図面はなく、加藤が「話題性抜群の勝局である。」(p175)と語っても、郷田が「二度目の▲3四歩、歩を使った厳しい攻めで…」(p180)と語っても、全然分からないのである。せめて、各歴代王位が思い出の将棋を一局ずつショート自戦記として載せてくれてもいいのではないだろうか?

工夫次第では「こりゃ王位戦のために中日新聞を購読するしかないぜ!」と思えたかもしれないのに……。50年の記念出版にしては、かなり残念な一冊。評価はCとしておきますが、CDの境目くらいです。(2010Sep17)


※与太話:
表紙を見て、10〜20年前の格闘ゲームのポスターかと思った。並べてみても違和感なし!
餓狼伝説2Street FighterStreet Fighter II盤上の攻防



【関連書籍】

[ジャンル] 
その他の棋戦
[シリーズ] 
[著者] 高林譲司
[発行年] 
2010年

< | >

トップページ > 棋書ミシュラン! > 盤上の攻防 将棋 王位戦五十年


Copyright(C) 1999-2017 【将棋 棋書ミシュラン!】 All Right Reserved