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■将棋−負けない指し方

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将棋−負けない指し方
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将棋−負けない指し方
本気で強くなりたい人のための
格言で覚える実戦手筋のすべて
[総合評価] B

難易度:★★★

図面:見開き3〜4枚
内容:(質)A(量)B
レイアウト:A
解説:B
読みやすさ:A
中級〜上級向き

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【著 者】 天狗太郎
【出版社】 日本文芸社
発行:1985年7月 ISBN:4-537-00216-6
定価:750円 214ページ/19cm


【本の内容】
・格言テーマ数=52

・【コラム】会心の一手(1)〜(4)/うっかり集(1)〜(7)/トン死集(1)〜(5)/痛恨の一手(1)〜(3)/詰めろのがれ(1)〜(2)/駒不足で負け

◆内容紹介(まえがきより抜粋)
上達の近道は将棋の格言を知ることです。プロの対戦は、よくよく観察すれば、格言の積み重ねであり、繰り返しであることがわかります。
(中略)長い歳月をかけてコツコツと格言の手筋を集め、数ある実戦譜のなかからアマチュアの方にピッタシという教材を選びました。同時に少し欲ばって、プロの将棋で一番おもしろい局面を鑑賞してもらう工夫をしました。


【レビュー】
格言を解説した本。

天狗太郎(山本亨介)は出版時点(1985年)で観戦記者歴40年のベテラン記者。将棋史や名棋士列伝の本を多数著している。山本は、特に級位者が強くなるための近道は「格言を知ること」だと考えた。本書は、山本がこれまで観戦してきたプロの実戦から、格言に合致するものを解説した本である。

1テーマにつき3〜4pで、実戦例1〜2つで解説。実戦例でよく名前が挙がっているのは、大山、中原、米長、大内、二上、内藤、桐山ら。加藤一がいないのは、格言の逆を行くような手が多いから?!

全体的に、とにかく読みやすいと感じた。特別な工夫があるわけでないが、行間が適切で、盤面が薄オレンジで塗ってあることで図面が見やすく、本文中の格言や指し手は太ゴシックで強調してあるなど、細かい部分が行き届いている。

載っている格言は以下の通り。(緑字)はわたしが注釈したもの。なお、本文中にもいくつもの格言が登場するが、それらは割愛した。

01. 先手必勝のウソ(相掛かりの序盤で、金を締まらずに仕掛けると失敗する例)
02. アマチュア将棋は新手の宝庫(タテ歩取りの角田新手▲9七角)
03. ハメ手にはまるな(鬼殺しの成功例。「はまるな」といいつつ、対策が載っていないが…)
04. 端の歩は心して突け(「手のないときは端歩を突け」に異を唱えた格言。)
05. ▲7八金には△3二金(相掛かりの序盤で、互いに角頭の備えが必要という意味。)
06. 両取り逃げるべからず
07. 攻めの火だねを絶やすな
08. 桂馬の高とび歩のえじき(1)
09. 桂馬の高とび歩のえじき(2)
10. つるし桂に力あり(=「桂は控えて打て」)
11. 一手早く守るのが受けのコツ
12. 自陣のキズを消して戦え
13. 玉は下段に落とせ
14. 玉の早逃げ八手の得
15. やたらと王手をかけるな
16. 必死で勝とう
(格言とは直接関係ないが、「詰めろ」という将棋用語について、著者の私案が主張されている。著者は「詰めろ」よりも「一手すき」の方が後世に残すにはよい、という持論。p188やp207にも関連した内容があり、「だんだん「詰めろ」の方が多く使われるようになってしまった」とのこと。)
17. 遊び駒は作るな作らせよ(1)
18. 遊び駒は作るな作らせよ(2)
19. 敵の打ちたいところに打て(1)
20. 敵の打ちたいところに打て(2)
21. 端玉には端歩を突け
22. 米長玉は守りに強い
(出版時の1980年代に浸透し始めた「米長玉」の新格言。最初は、中終盤の戦いの最中にスッと8八から▲9八玉と寄って距離感を狂わせるという、米長独特の技だったが、駒組みの手筋として定着した。)
23. 銀は成らずに好手あり
24. 焦点の歩をねらえ(1)
25. 焦点の歩をねらえ(2)
26. 一手で二つの働きを狙え
27. 一歩に千金の価値あり(1)
28. 一歩に千金の価値あり(2)
29. 飛車は下段に使え(敵陣へ飛を打ち込むときは、なるべく下段に打つことを考えてみる)
30. 馬は自陣の守りに使え
31. 自陣飛車に好手あり
32. 飛車の捨てどころが大事(=「大駒の捨てどころ肝要なり」)
33. 離れ駒に手あり(「離れ駒は必ず遊び駒である」というのはちょっと??)
34. 歩詰めに詰みあり
35. さばきを狙え
36. 俗手に好手あり
37. 自然の手に悪手なし
38. 開戦は歩の突き捨てから
39. 十字飛車で大さばき
40. 美濃囲いは△6一金が急所
41. 攻めるは守るなり
42. と金は引く手に力あり
43. と金のおそ早や
44. 寄せは駒得より速度
45. 歩切れを衝け
46. 垂らしの歩に威力あり
47. すがた形に惚れてみよ
(珍しい格言。「特に序中盤は奇をてらわず、形の美しい自然な手(≒定跡に現れるような定型の形)を選んでみなさい」という意味。)
48. 金は斜めに誘い出せ
49. 二枚換えなら歩とでもせよ
50. 不利なときは戦線の拡大を
51. 重い手を指すな
52. 何でもためしてみよう(アマはいろいろなことをやってみよう。その中で新発見があるかもしれない。格言というより提言。)


惜しいな、と思った点を一つ。格言は主に級位者が有段者を目指すときに有効なので(実際に本書の対象棋力は初段未満くらいである)、各テーマの冒頭に易しい部分図の例があると良かった。また、実戦例が格言とあまり一致していない例がたまに見られた(「48. 金は斜めに誘い出せ」など)。

本書の格言は、大部分が基本的な格言。書名が内容とあまり合致していないので、なかなか食指が伸びなかった本だが、あとちょっとでAでも良かった。基本的な格言は、時代が変わってもそうそう価値が変わるものではないので、機会に恵まれれば読んでおきたい一冊だ。(2011Nov23)

※誤字・誤植:
p23 ×「新手が生まれて瞬間を」 ○「新手が生まれた瞬間を」
p47 ×「△2一飛同」 ○「△2一同飛」
全体 本文中の指し手は太ゴシックだが、なぜか「竜」の字だけは明朝体のまま。



【関連書籍】

[ジャンル] 
格言
[シリーズ] 
[著者] 
天狗太郎
[発行年] 
1985年

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