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■現代三間飛車の定跡(T)

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現代三間飛車の定跡(T)
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現代三間飛車の定跡(T) [総合評価] A

難易度:★★★★

図面:見開き6枚
内容:(質)A(量)B+
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
上級〜有段向き

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【著 者】 中原誠 【編】 東公平
【出版社】 大泉書店
発行:1976年12月 ISBN:4-278-08101-4
0076-8101-0701
定価:700円 124ページ/21cm


【本の内容】
第一章 △5三銀型に対する早仕掛け ・変化ダイアグラム
・駒組みの手順
・幹となる定跡手順
 (変化1)▲2四歩を同角と取る手
 (変化2)▲4五歩を△同銀と取る手
 (変化3)▲3三角に△4六桂の反撃
 (変化4)▲3三角に対して△6四角
 (変化5)後手△3五歩の先制攻撃
 (変化6)▲4五歩に対して△4三金
 (変化7)▲4五歩に対して△2二飛
62p
第二章 △4二銀型に対する早仕掛け ・変化ダイアグラム
・幹となる定跡手順
 (変化1)▲2四歩を△同角と取る手
 (変化2)▲4五歩に△3五歩の反撃
 (変化3)▲4五歩に対して△5三銀
 (変化4)▲4五歩に対して△2二飛
 (変化5)▲2四歩を突かない場合
28p
第三章 新手法△2二飛型の研究 ・変化ダイアグラム
・幹となる定跡手順
 (変化1)△5三銀から△6四銀の対策
 (変化2)▲4六銀に代えて▲6六銀
 (変化3)▲4六銀に対して△4二飛
 (変化4)▲4六銀に対して△5四銀
 (変化5)▲8八角に対して△4三金
 (変化6)▲4七銀に代えて▲3五歩
28p

◆内容紹介(はしがきより抜粋)
三間飛車戦法は、もともと香落ちの上手方の戦法として発達してきたもので、一口に「さばきの作戦」ということができます。(本書では)基本線として、後手方が振るものとし、先手方は早期の角交換をねらって急戦を仕掛ける、いわゆる「早仕掛け」の作戦を採ることにしました。


【レビュー】
△三間飛車vs▲急戦の定跡書。

1970年代、△三間飛車は盛んに指されていた。特に大山康晴は、三間・四間・中飛車をローテーションさせることで、相手に的を絞らせない戦略を採っており、△三間飛車の攻略は居飛車党の大きな課題の一つだった。そして、多くの居飛車党の努力(?)により、現代では△三間飛車への急戦は一応成立することが分かっている。

ただし、「成立する」とは言っても、プロで散々戦われた戦型でもあり、難しいところはたくさんある。現代では、▲4五歩と仕掛けられる前に△2二飛と受けるのがメイン定跡となっているが、その他にも三間飛車らしく捌いて戦おうとする順もある。これらは、現代の定跡書では省略されている部分も多い。

本書は、△三間飛車vs▲急戦の戦いを、△2二飛の対策が現れるまでの定跡をメインに、詳細に解説したものである。


本書は3章に分かれており、根っことなる局面は〔右図〕。両端の突き合いはなく、先手は次に▲4五歩を狙っている。玉の囲いよりも△5二金左が優先されているのは、「三間飛車では相手の出方によって△4三金と角頭を守る手が必要になるので、先に△5二金左がよい」(p12)からである。

〔右図〕から、後手の対応は以下の3つ。
(1)△5三銀 (第1章)
(2)△8二玉▲3七桂△7二銀 (第2章)
(3)△8二玉▲3七桂△2二飛 (第3章)




各章の内容を、簡単に紹介していこう。なお、今回は特に第1章の分岐がかなり多くて長いので、チャートは後でまとめて掲載することにする。


第1章は、△5三銀。

後手の利点は、
 (1)玉がやや堅い、
 (2)(△4二飛と転回した時)飛先が通っている、
 (3)左桂を交換しやすい、
の3つである。

先手は直ちに▲4五歩と仕掛ける。この仕掛けは、古棋書『将棋精選』にすでに見られ、山田道美らが発展させた由緒正しき仕掛け順である。(※山田は対四間飛車の「山田定跡」が有名だが、これは対三間飛車の山田定跡といえる)

先手は、「対四間飛車の▲4五歩早仕掛け」と似た順で仕掛けていく。後手は一瞬のスキをついて△8二玉と寄るが、▲2一飛成と成り込まれたときに△7二銀の一手が必要なのが難点。その瞬間に先手は▲3三角と打つ。ゆっくりできない後手は、ここから猛攻を開始。先手は全力で受けに回り、後手の攻めを指し切らせる。

プロでは、この定跡は先手良し。しかし、受けが苦手な人はこの仕掛けは採用しにくい。逆に言えば、アマで△三間飛車を採用する人は、この形を採用したほうが良いのかもしれない。中盤に攻めまくれるし、現環境では詳しい変化をマスターしている居飛車党は少ないと思われる。


第2章は、△8二玉▲3七桂△7二銀。左銀の動きを保留しているので、「▲3七桂戦法vs△4二銀型」の方が通じやすいかもしれない。

第1章の△5三銀型には▲4五歩で先手有利という研究が進んだので、△4二銀型のまま△8二玉として、▲4五歩なら△同歩▲3三角成△同銀と2筋を守ろうという着想。本美濃囲いが完成しているので、強く戦えるのが特長。

△4二銀型に対しての仕掛けは、2・4・5と歩を突いていく。加藤一二三が開発したとされる仕掛けである。

歩を突く順番は重要で、その意味をできればマスターしておきたいが、最初は暗記でもOK。先に▲4五歩ではダメなのは、△3五歩が来るから。ここは△四間との違いの一つである。また、最後に5筋を突き捨てるのは、角交換を避けて▲4五桂跳ねと▲5四歩の垂れ歩を作るため。仕掛けのメインの目的が角交換ではないことを知っておこう。


第3章は、△8二玉▲3七桂△2二飛。現代ではこの定跡がメインだが、△2二飛型はこの時点では最新形で、未解決だった。

第1章や第2章の仕掛けが成立することが分かったので、△2二飛で仕掛けを完封しようという意図。▲4五歩の仕掛けは無理筋になる。△2二飛はまるで向飛車のようだが、最初から向飛車に振った場合とは異なる。▲3七桂と跳ねさせてから向飛車に振ることで、棒銀の攻めを不能にさせている。

「当時は未解決」とはいっても、幹となる手順はすでにほぼ出来上がっており、例えば『羽生の頭脳 3 急戦、中飛車・三間飛車破り』(羽生善治,日本将棋連盟,1992)にもほとんど同じ手順が載っている。大きな違いは、角交換後に▲8八角と打ったときの対応で、△4三金と△4二金は登場済みなのだが、△4二銀が未発見だったこと。こういった部分については、後発の棋書でアップデートするしかなさそうだ。


1976年の発行と聞くと、古く感じられるが、内容はしっかりしていた。124pと聞くと、分量が少なく感じられるが、A5版であることもあって、よくある四六版の定跡書と比べても量的には遜色ない。

何よりも、後発の本ではあっさり「△三間飛車に対する急戦は先手良し」と書かれている形でも、かなりいい勝負(むしろ実戦的には後手がやれる可能性も)なのが伝わってくる。

ノーマル三間飛車を指しこなしたい人には、スルーできない一冊だと思う。(2016Jul10)


※誤字・誤植等(初版で確認):
特に見つかりませんでした。


※各章のチャートは下記に添えておきます。なお、本書では各章の冒頭に「変化ダイヤグラム」として、ある程度の分岐や形勢判断が記されたチャートが付いています。








【関連書籍】

[ジャンル] 
三間飛車
[シリーズ] 
[著者] 
中原誠 東公平
[発行年] 
1976年

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