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坂口流の将棋観 | [総合評価] − | ||
【著 者】 坂口安吾 | ||||
【出版社】 青空文庫 | ||||
発行:2012年10月 | ISBN:---------- | |||
定価:0円 | 23KB,Kindle用電子書籍 |
【本の内容】 |
本文=約2500字(500字/頁で5p) 〔出典〕 出版年月不明、神港夕刊新聞・九州タイムズのコラム 1948-04 教祖の文学 1998-07 坂口安吾全集06,筑摩書房 |
【レビュー】 |
作家・坂口安吾による、升田幸三についてのコラム。Kindle用電子書籍として無料配布されており、Kindle端末や、KindleアプリをDLしたiPhone、Android、iPadで読むことができる。 坂口安吾 − Wikipedia 坂口安吾は、『堕落論』『白痴』などで知られる無頼派。薬物の常用者でもあった。本コラムでは「将棋を知らない」と書かれているが、名人戦の観戦記も多く、Wikipediaによれば、「木村義雄が千日手を回避して敗北したときに木村を厳しく批判した『散る日本』、大山康晴を主人公にした小説『九段』」など将棋関連の作品もある。 1955年2月没で、現在はすべての作品の著作権が切れており、本コラムは青空文庫としてKindle用電子書籍で無料公開されている。 本コラムの内容は、若き日(20代後半)の升田幸三論。木村名人を倒すのは升田だと言われていたころで、従来の将棋は型にハマっており、升田が型を打ち破ったので、本当の「将棋の勝負」が始まったとのこと。 (※なお、このような論説は後世の観戦記者も用いているが、この当時でも七段以下では型破りな将棋は結構たくさん指されている。現代の高段者の将棋も、革命的な指し方というのはそう多くはなく、後世から見れば型にハマっているように見えるのではないだろうか?) そして、将棋での「木村vs升田」を、文学での「谷崎潤一郎・志賀直哉vs坂口」と比べ、升田・坂口の革新さについて、「升田は強いけれども、たいして強いわけではない、升田や私は当然すぎる出発者というだけのこと」と表現している。つまり、坂口は「自分は升田と同じレベルにある」と述べており、将棋ファンから見れば「すごい自信」だ。 ただし、これらは時代背景によるものであり、木村が(そしておそらく谷崎や志賀が)同世代であればもっとすごいだろう、とフォローも忘れない(笑)。 わたしは現時点で坂口の作品を読んだことがないが、これほど豪胆な語り口であれば、一度は読んでみたいものである。(2013Feb13) |