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振り飛車新世紀(3) 久保流四間飛車(下) ──居飛穴粉砕! |
[総合評価] B 難易度:★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)B+ レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 有段向き |
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【著 者】 久保利明 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:1997年12月 | ISBN:4-89563-692-5 | |||
定価:1,200円 | 222ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||
◆内容紹介(前書きより抜粋) |
【レビュー】 |
四間飛車vs居飛車穴熊の定跡書。 四間飛車が居飛車穴熊に押され始めてから十数年、小林健二の「スーパー四間飛車」で命をつないだ四間飛車は、藤井猛や久保利明らの若手によって、再興が始まっていた。 本書は、若手時代の久保が、四間飛車の居飛車穴熊対策を書いた本である。 本書の内容は、簡単にいうと次のようになる。 ・▲四間飛車での「▲4八玉型急戦」をやめた。 ・▲四間飛車での「藤井システム(居玉急戦)」を始めた。 ・△四間飛車での「角交換挑戦〜浮き飛車作戦」をやめた。 ・△四間飛車での「銀冠作戦」を始めた。 これだけでは不十分なので、各章の内容をチャートを添えながら紹介していこう。 |
第1部の第1章は、▲4八玉型急戦。 四間飛車側は、相手に居飛穴に組ませないように、△2二銀と締まられる前に戦いを起こしたい。そのために、玉の囲いを▲4八玉型で止めて、その分の手数を攻撃形に回そうとしている。 居飛車は、さらに早く囲おうとする手がある。△5四歩保留の場合、居飛車は1手早く玉を囲えて、△8四飛の横利きで受ける手ができる。振飛車は、角交換を挑戦できる形にして▲6五歩と突けば、6筋歩交換ができる。 四間側は、▲3六歩すら省略して、1七桂型で攻める手がある。△1二香の瞬間に▲1七桂と跳ねる。ただし、この▲1七桂戦法は、△1一玉と潜ってくれれば振飛車が面白いが、△3二玉と手損覚悟で戻されると良くならないことが分かってきた。 結論として、▲4八玉型で攻め形を作ったとしても、居飛穴を完璧に阻止することはできなかった。そして、四間側はさらに玉の囲いを省略する「居玉急戦」に向かっていく。 |
第2章は、居玉急戦。いわゆる「藤井システム」として認知されている形だ。第1章の▲4八玉急戦よりも攻め形が1手早いため、少なくともこの当時は居飛穴に対して相当な威力を誇った。 ただし、四間側の囲いは遅れているので、居飛車からの急戦が来る。一つは鷺宮定跡型の△7二飛〜△7五歩、もう一つはこの形特有の「△5五角急戦」だ。 鷺宮型に対し、▲4七銀〜▲5六銀右は、▲雁木+右四間になる。居飛穴に囲った後手よりも先手のバランスが良く、作戦勝ちと言えるが、美濃囲いが好きな人には不満。 △5五角に対し、4六歩を守るために▲4七金と上がるのは、居飛車に△7五歩の急戦を仕掛けられてしまう。▲4七銀なら急戦を仕掛けられても大丈夫。 美濃囲いにこだわらない手法は、このころには出始めていた。この先、藤井システムはどんどん進化していくので、本書の形は初期のものとして捉えておこう。 |
第3章は、△飛先不突き型。 後手は飛先の歩を突く1手を玉の囲いに回し、早く穴熊に組もうとしている。先手は、▲3六歩〜▲3七桂と右桂の活用を急ぐ指し方と、▲6七銀〜▲5六銀と角頭を脅かす指し方の両方が有力。 |
第4章は、△四間飛車での作戦。 居玉急戦は先手番でもかなり難しいので、後手番では無理、と当時の久保は考えていた。そこで、久保は後手番の時には浮き飛車作戦を採用していた。 浮き飛車作戦は、無事に組むことができれば有力。ただし、角交換拒否に△4四飛と浮いたときに▲6五歩があり、久保はこの手が気になって浮き飛車作戦を使わなくなった。また、▲2五歩〜▲3八飛という浮き飛車阻止作戦もある。 代わりに普通に銀冠に組んで居飛車の攻めを待つ指し方を採用。後手番なので千日手でもよい。銀冠を急ぐ、といっても、片銀冠を先に構築するのがポイント。高美濃を経由すると、銀を上がった瞬間のリスクが大きすぎる。 |
第2部は実戦編で、久保の実戦3局を自戦記形式で解説。 1局目は、▲四間飛車▲3九玉-▲5六銀型から▲4五歩の仕掛け。2局目は、▲四間飛車▲4八玉-▲5六銀型から▲4五歩の仕掛け。ここで▲4八玉型での穴熊封じに限界を感じた久保は、藤井システム(居玉型)にスイッチしていった。 3局目は、△四間飛車角交換挑戦〜▲角交換拒否〜△浮き飛車。定跡編では、角交換拒否後の△4四飛に▲6五歩が懸念されているが、本局は浮き飛車作戦が上手くいった将棋。 本書は、四間飛車の指し方が「スーパー四間飛車」から「藤井システム」への移行期をつなぐ本といえる。藤井システムが突如出現したように捉えている方には、参考となる一冊だ。(2016Sep03) ※誤字・脱字等(第1刷で確認): 特に見つかりませんでした。 |