zoom |
マイナビ将棋BOOKS 角交換四間飛車の新常識 最強△3三角型 |
[総合評価] B+ 難易度:★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)B+ レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 上級〜有段向き |
||
【著 者】 古森悠太 | ||||
【出版社】 マイナビ出版 | ||||
発行:2019年7月 | ISBN:978-4-8399-6998-1 | |||
定価:1,66円(8%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
・【コラム】私と振り飛車と奨励会 |
【レビュー】 |
角道オープン四間飛車△3三角型の戦術書。 従来の角交換四間飛車は、▲6八玉のタイミングで△8八角成と後手から角交換するのが定跡。先手の対応を▲8八同銀に限定させ(▲7八玉と寄ってから△8八角成は、▲同玉があり得る)、居飛穴や左美濃などの堅い玉型にさせないのが狙いの一つだった。ただし、後手番でさらに手損することと、居飛車の対策が進歩するなど、以前よりも勝ちづらくなっているようだ。(さらに、ここ数年で、居飛車がバランス型の陣形に慣れ、堅く組めなくても不満でなくなったのも要因の一つかもしれない) 本書の「△3三角型」では、後手は自分から角交換はせず、角道オープンのまま△3三角と飛先を受ける点が、従来型とは大きく異なる。先手から角交換すれば△3三桂型になるので、一長一短はあるものの、振り飛車の理想の一つである「左桂を捌く」を実現しやすい作戦となっている。 また、先手が角道を止めてくるなら、後手は角道オープンを生かして積極的に戦いやすい。 各章の内容を、チャートを添えながら紹介していこう。 |
まずは「プロローグ」。 ・△3三銀型の角交換振り飛車は、対策が進んできている。 ・角道オープンで△4二飛と振り、自分から角交換して△2二飛と振り直すと2手損。 ・△3三角型は、相手から角交換させて△3三桂型で戦うのが基本で、後手は手損しない。 ・角交換してこない場合は、△2二飛〜△3二金から△2四歩と開戦する。(第1章) ・△4四歩と突いていないので、△4四角〜△3三桂と揺さぶることができる。 ・角交換型(△3三桂型)で、▲5七銀型には△2五桂ポンが有力。(第2章) ・▲4七銀型では、▲5六角で桂頭を狙われるのが強敵。あらかじめ備えた駒組みが必要になる。(第3章) ・▲7七角の自陣角も強敵。(第4章) →本書では、△6二角で桂頭をカバーして、じっくり指す手法を推奨する。 ・△2二飛とせず、△3二金型も有力。(第5章) →2筋歩交換をしてくるなら、△2二銀として歩を打たずに反撃する。 |
本編の前に、「△3三角型角交換四間飛車の大前提 ▲2四歩の対応」という章がある。 序盤の早い段階で▲2四歩と仕掛けてくる場合で、角道オープン系の振り飛車では常に序盤の重要ポイントとなる仕掛け。知らないと潰されてしまうが、本戦法でももちろん対応できている。 ・角道オープンのまま、飛先を△3三角で受ける。 ・角交換から2筋歩交換には、△2二飛と飛をぶつける。 ・▲2三歩〜▲2二角の打ち込みには、△4四角!が軸となる一着で、切り返せる。 |
第1章は、「▲5六歩型」。 ・先手がすぐに角交換せずに、▲5六歩と突く場合。 ・後手はすぐに向かい飛車に転回する。 ・▲6六歩と角道を止めてくるなら、△3二金から急戦向かい飛車で仕掛ける。 ・飛交換拒否には、先手の形を見ながら、△4四角と△4四歩を使い分けよう。 ・2筋を警戒する▲3六歩には、△4四銀から3筋で仕掛ける。 ・▲5六歩〜▲5七銀型には、△3九角と打ち込んで強襲する筋を意識しておきたい。 |
第2章は、「角交換▲5七銀型」。 ・先手から角交換し、△3三桂型に限定して、▲5七銀型に組む場合。 ・玉を固め、右銀を▲6六銀と中央に使っていく含みがある。 ・後手は逆棒銀はなくなったが、△2五桂ポンは有力。 |
第3章は、「角交換▲4七銀型」。 ・先手から角交換して、△3三桂型に対して▲4六歩〜▲4七銀と組む場合。 ・先手陣の角の打ち込みを減らしていて、さらに将来の▲3七桂の桂頭をカバーしている。 ・また、5筋の歩を突かないことで、▲5六角で浮いている△3四歩を狙うのが有力手段。後手は手をこまねいているとすぐに局面が悪化してしまう。 ・後手は早めに△3二金と備えておけば大丈夫。▲5六角から▲3四角と歩を取られる手は防げないが、▲5六角に△4四歩▲3四角△4三金▲5六角△5四歩と角を圧迫していけば、桂頭を狙われる前に局面をリードできる。 ・積極的に行くなら、△4四歩〜△5四銀で「角交換の相腰掛け銀−対抗形」にする。 |
第4章は、「角交換▲7七角型」。 ・角交換後に、先手が▲7七角と自陣角を打つ型。 ・△4四歩〜△4三銀の阻止が狙いの一つ。よって、△3三桂の桂頭を直接守るのは難しく、本戦法の強敵の一つ。 ・後手は△5四歩〜△3二金で3筋攻めに備える。 ・桂頭を際どいタイミングで明け渡したり、飛を差し出したりなど、かなり難しい指し回しも必要とされるが、後手も指せているようだ。 |
第5章は、「角交換△3二金型」。本書全体では△2二飛型がメインで、本章の△3二金型は変化球扱いではあるが、「有力な作戦と言える」(p166)と結論付けられている。 ・△2二飛の前に、△3二金を決めておく。 ・△4一飛と引いて、次に△5一飛か△2一飛を選べる。△5一飛を選んだ場合は、△2二飛〜△2一飛〜△5一飛と展開するよりも1手早い。 ・2筋歩交換には、歩を謝らない。 |
〔総評〕 角道オープン型振り飛車は、「最強」かどうかはちょっと分からないが、近年じわじわと増えている戦型。従来の角交換四間飛車とは似て非なる部分も多い。従来型を得意としている人は、裏芸として読んでおくのも良いだろう。 また、角道オープン型の振り飛車全般に応用が利きそうな筋も多く解説されていた。角道オープン型で△3三桂型になりやすいタイプの振り飛車は、最近でも自分で指しているので、とても参考になった。特に、△3四歩を筋違い角で狙われそうなときの対応は、載っていたのはわずかではあったものの、以前から困っていたところにヒントをもらえた感じなので、応用していきたい。 さらに、後手が上手くいく例ばかりではなく、失敗例も散りばめられているのは隠れた特徴。まだ発展途上中で、今後増えつつある戦型なので、先手の居飛車側も大いに参考になるだろう。例えば、「先手の駒組みのここを改良すれば、この変化は覆るはず」など、工夫ができる箇所も多そう。 もうちょっと実戦例がたくさん欲しいところなので、総合評価B+にとどめたが、十分読む価値のある一冊。(2019Jul21) ※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): p48タイトル 「銀損の攻めで後手良し」がゴシック体になっていない p64上段 ×「▲3六桂にはすぐ△2六歩…」 ○「▲6六歩にはすぐ△2六歩…」 p89上段 ×「5五の地手に争点を…」 ○「5五の地点に争点を…」 p136上段 ×「4六銀型を維持しものの、」 ○「4六銀型を維持したものの、」 p147タイトル 「持ち駒を消費させて後手よし」がゴシック体になっていない p164下段 ×「▲4六銀に変えて」 ○「▲4六銀に替えて」 |