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マイナビ将棋BOOKS 全戦型対応! 将棋・端の攻め方、受け方 |
[総合評価] A 難易度:★★★☆ 〜★★★★ 図面:見開き3枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:B+ 解説:A 読みやすさ:B 中級〜有段向き |
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【著 者】 安用寺孝功 | ||||
【出版社】 マイナビ出版 | ||||
発行:2016年12月 | ISBN:978-4-8399-6159-6 | |||
定価:1,663円 | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||||||
・【コラム】(1)ご当地グルメ (2)思い出の端攻め (3)時代 (4)小さい子に教える |
【レビュー】 |
端攻めを解説した本。 将棋の囲いは、玉が端に近いものが多い。美濃囲い、矢倉囲い、穴熊囲いは、いずれも端から1〜2マスのところに玉を囲っている。ということは、玉に近い端を攻めることは、当然の理である。 しかし、初級者〜中級者では、端攻めが苦手な方が多いと思う。理由は2つ考えられる。 一つは、端は守りの駒が多く感じられること。上記3つの囲いは、桂・香・玉(or銀)と、いずれも端に3つの利きがある。確かに、やみくもに端を狙っても突破できることは少なく、端攻めが成立する条件を見極め、またその成果を正確に把握した上で、さらに様々なテクニックが必要だ。 もう一つは、端攻めは手数が長いこと。例えば、持ち駒が桂歩三で美濃の端を攻めるとき、▲9五歩△同歩▲9二歩△同歩▲9三歩△同歩▲9四歩△同歩▲8六桂という攻めがあるが、これだけでも9手一組である。 他には、先に歩を何枚も投資する必要があったり、細かい違いで成否が異なってきたりと、級位者が苦手意識を感じる要素はいくつもある。しかし、だからこそ、端攻めができるようになったときには、実際に「勝ち」という成果が得られるだろうし、自分のステージが一段階上がった(まるで少し高級な将棋を指しているような)と感じられるだろう。 本書は、そのような端攻めをマスターするためにはとても良い教材である。 端攻めに特化した本というのは案外少ない。有名なのは『将棋・端攻め全集』(大内延介,日本将棋連盟,1979)で、これは何回も再版された良書である。ただし、時代的な背景から、穴熊の端攻めはほとんど解説がなかった。 他には『将棋・ひと目の端攻め』(週刊将棋編,MYCOM,2008)がある。これは、さまざまな戦型や囲いを網羅していて、かなりの良書。ただし、全体的な難易度が易しめに抑えてあるのと、解説の詳しさがもう一歩足りないところがあった。 本書は、その両方の不足分を補っている。囲いは、矢倉・美濃・穴熊・銀冠・舟囲いと、横歩取り関連まで網羅できている。また、受けの立場で被害を最小限に抑える指し方も多く書かれている。さらに成功例だけでなく、失敗例も書かれていて、解説量としてはボリュームたっぷりで大満足だ。 個人的に気に入っている注目トピックスを列挙しておこう。 ・1-12 矢倉囲いで△1二玉とよろけた時の耐久性について ・1-16 矢倉囲いで、何とか桂を跳ねさせて2一を空けさせる発想 ・2-23 対美濃囲いの定番端攻めで、相手が銀を持っている場合に▲9五歩△同歩▲9三歩△同香に(▲9四歩ではなく)▲8六桂△8五銀▲7七桂という有名な順があり、数多くの本に載っているが、「こちら(先手)も形がかなり変化するので…反動がないか注意が必要」(p67)まで書かれているのは◎。 ・2-24 美濃囲いの受け△8四歩で、矢倉と比較して、利点と欠点が明確に書かれているのが◎。 ・3-54 「穴熊は△1二歩と謝れないので▲1四歩の垂らしが非常に有効」と言語化されているのが◎。 他にも、有段者でも参考にできる解説がたくさんある。もちろん級位者も、端攻めの手順が手に沁み込むまで読み返せば、棋力が飛躍的にUPすることは約束できる。 不満なところは一点だけ。図面が足りない。1テーマは見開き2ページで解説されている〔右図〕のだが、テーマ図を含めて図面が3枚しかない。解説が大ボリュームであるがゆえに、分岐が2〜3回あることもあるが、頭の中で考えていると途中から「あれ、いまどの局面の話だっけ?」となることもちょいちょいあった。 この文章量なら、図面は見開き5枚くらいは必要だろう。多少はスペースに余裕があるので、何とかならなかったのかなぁ。MYCOM/マイナビの棋書では、過去に見開き6枚や8枚の実績もあるのに。そこがSを逃したポイントなのであった。 というわけで、〔右図〕を脳内で読み進めるのがつらく感じるようであれば、多少面倒でも盤駒(または将棋ソフト)を使って、変化を並べていただきたい。実際に並べることで、長い手順も頭に入りやすいと思う。「考えるよりも先に手が動く」ような効果も期待できる。 端攻めは、プロの実戦ではかなりの頻度で出てくる。棋力が低いうちは、せっかく棋譜並べをしていても、「なぜこのタイミングで端?」と思うこともしばしばだろう。本書を読んで端攻めをマスターしておけば、それが「おっ、やっぱりこのタイミングで端だよね!」に変わることは間違いない。そうなれば、どんどん将棋が楽しくなるだろう。ぜひご一読を。 ※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): p131下段 ×?「香をつり上げて▲1六歩や▲1三歩を…」 ○?「香をつり上げて▲1四歩や▲1三歩を…」 p137下段 ×「△3三金は▲3一金と金を取っておき…」 ○「△3三銀は▲3一金と金を取っておき…」 |