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マイナビ将棋BOOKS 誰も言わなかった居飛車穴熊撃滅戦法 |
[総合評価] B 難易度:★★★☆ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:B+ 読みやすさ:A 中上級〜有段向き |
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【著 者】 武者野勝巳 | ||||
【出版社】 マイナビ | ||||
発行:2015年8月 | ISBN:978-4-8399-5472-7 | |||
定価:1,663円 | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
・【コラム】(1)ストーブ小屋の将棋 (2)クラスの将棋大会
(3)将棋大会で得た親友 (4)高校生活を思い切り楽しむ
(5)将棋に飢えて (6)花村師匠と父の問答 (7)塾生時代
(8)塾生部屋 (9)塾生の悲哀 |
【レビュー】 |
▲四間飛車穴熊・相穴熊での「マリオ式居飛穴撃滅法」戦法の解説書。 「マリオ式居飛穴撃滅法」(以下「マリオ式」)は、武者野七段が開発した作戦。「マリオ式」の名は、武者野が任天堂キャラクタのマリオに似ていることに由来する。 従来は、対抗形の相穴熊は「居飛穴有利」とされてきた。近年は「広瀬流振り穴」の登場で少し振り穴が盛り返した感があったが、それでも趨勢を覆すまでには至っていない。 そこで、本書の「マリオ式」である。 そもそも居飛穴有利の根拠は、「飛先の歩が伸びている」ということにあった。しかし、「マリオ式」では、振飛車側が4筋を攻める。振飛車の攻めの方が囲いに近く、4筋にと金ができやすく、歩が利きやすいのが大きい。プロでの評価はともかく、少なくともアマでは振飛車側が勝ちやすい戦法と言えそうだ。 マリオ式の基本的な流れは、以下のようになる。 ・普通に四間飛車穴熊を目指す。 ・相手が左美濃か居飛穴の動きを見せたら、すぐに▲6七銀と上がる。 ・△1二香の瞬間に▲5六銀と出る。 ├△4四銀なら、▲4六歩から銀交換を目指す。 └△4四歩なら、▲4六歩〜▲4八飛から4筋を攻める。 各章の内容を、チャートを添えながら紹介していこう。 第1章は、△4四銀型。後手は四枚穴熊を目指している。 4五で銀交換を挑み、▲6四歩から飛交換を挑む。銀が手持ちなので、後手は飛交換を回避しづらい。振り穴の方が先に陣形が安定しているので、飛交換が実現すれば優勢というわけである。なお、本章では「マリオ式」の特徴である▲4八飛型は出てこない。 △5二金型と△6一金型で飛交換後の飛の打ち場所が変わることに注意しよう。 第2章は、△4四歩・4三金型。第1章の△4四銀型を破られ、居飛車側が四枚穴熊を断念すると出てくる形だ。 ▲5六銀と出るところまでは第1章と同じ。△4四歩には▲4六歩と突いて、争点を確保しておく。△1一玉にはすぐ▲4八飛と転回する。玉を固めてから▲6五歩と角筋を通しておく。 ここから5通りに分岐する。 (1)△8六歩〜△4五歩の決戦: 先手から角交換し、相手の取り方によって角の打ち込み場所を変える。 (2)△7二飛: 7筋歩交換狙い。⇒▲4五歩とすぐ仕掛ける。 (3)△5一角: 次の△9五角から角交換の狙い。⇒▲9八香!が地味な好手。将来▲4四飛となった時の、角による飛香両取りを避ける。 (4)△7三桂: ▲5六銀の動きを牽制。⇒実はこのパターンのみ、4筋攻めが難しい。▲9六歩が地味な好手で、将来桂頭を狙う時に歩の好手を図る。展開によっては、かなり激しくなる。 (5)△2四角: 角を5七に間接的に利かせて先手の攻めを牽制。⇒本書では、2筋の歩を伸ばして角をどかす。隙にならないように注意。終盤は伸ばした歩を生かす。▲2六歩に△3二金と来た場合は、落ち着いて▲3六歩と突いておく。5七は▲4七飛で受ける。 第3章は、△4三金・3二金型。中央に厚い構えである。先手も▲5八金と中央を厚くしておくと、早い決戦が可能で、柔軟性がある。ただし、玉の堅さは犠牲になっている。 (1)△8六歩〜△4五歩の決戦: 第2章との違いに注意。先手から角交換すると、後手の金銀の連結が良いので苦労する。じっと▲4五同歩と取ることで、▲5八金を生かせる。 (2)△4二銀: 松尾流穴熊狙い。ただし4筋は手薄になる。⇒すぐに▲4五歩と仕掛けて良い。 (3)△9四歩: 4筋の勢力を保ったまま待機する。⇒それでもすぐに▲4五歩でよい。決戦なら強く戦って良し、△4四歩と謝るなら1歩手持ちが生きる。 第4章は、△4二飛型。先手の右四間飛車に対して、飛を向い合せて対抗してくる形。これはアマではよくありそうだ。 対して、△2四角で5七を狙う手を未然に防ぐ▲5八金型が本書のオススメ。いつでも戦いにできるのは第3章と同様。△4二飛と備えられていても、▲4五歩と仕掛けることができる。 第5章は、中盤の戦い方。居飛穴の崩し方講座となる。本戦法の特徴である「4筋に歩が立つ」を最大限に生かす指し方を実例で示す。 第6章は、終盤の戦い方。汎用的な「速度計算」や、相穴熊ならではテクニックを解説する。 第7章は、復習問題。おおむね第1章〜第4章の復習そのままで、新しい内容はほとんどないが、間違いやすい部分が取り上げられているので、全問正解できるまで何度もやり込むとよい。解答図の下に、本文の該当ページが書かれているので、正解/不正解にかかわらず、見直しておこう。 本書の「マリオ式」は、穴熊の勝ちパターンである「堅い・攻めてる・切れない」を具現化しており、本書を読む限りは勝ちやすいと思う。 ただし、わずかな違いで攻め方を変えるべき局面も多く(決戦時にどちらから角交換するか、など)、使いこなすまでにはある程度の局数が必要かもしれない。個人的なイメージとしては、「飛香落ち▲右四間定跡」のような感じ。逆に言えば、ある程度の局数をこなしてコツを掴めば、ドル箱戦法になる可能性は高そうだ。 本書で唯一残念な点は、後手番の四間穴熊でも通用するかどうかについては、ほぼ書かれていないこと。1手の違いで通用しないのか、それとも逆に居飛車が1手多く指してしまうことで、より振飛車側の条件が良くなるのか…? もしかして、それは続編の「マリオ式・後手編」で登場したりして?(2015Sep06) ※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): p156上段棋譜 ×「▲3三角成△同金△7一角」 ○「▲3三角成△同金▲7一角」 |