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マイナビ将棋BOOKS 横歩取りマップ |
[総合評価] A 難易度:★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:A- 読みやすさ:A 上級〜有段向き |
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【著 者】 瀬川晶司 | ||||
【出版社】 マイナビ | ||||
発行:2013年12月 | ISBN:978-4-8399-5000-2 | |||
定価:1,575円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 |
第1章 横歩取りの変遷を知る 第2章 △8五飛・4一玉型 第3章 △8五飛・5二玉型 第4章 △8四飛・5二玉型 第5章 青野流 ・【コラム】横歩取りのこと ◆内容紹介 「本書は横歩取りの変遷が分かるような構成になっています。まずは横歩取りの通史を知り、それから現在流行形の解説に入ります」(まえがきより) 現在タイトル戦等で大流行している横歩取り戦法。日々新しい形が現れ、進化を続けています。 しかし、飛車の位置、玉の位置など、そのバリエーションは多岐にわたり、現在プロ棋士の間で何がテーマになっているのか、理解できている方はかなり少ないのではないでしょうか? そこで、最高の道案内役になるのが本書です。本戦法を得意とする瀬川五段が人柄そのままに、横歩取りの歴史から最新形まで丁寧に解説しています。 現在主流の△3三角戦法に至るまでの話が第1章で語られ、そこから△8五飛・4一玉型、△8五飛・5二玉型、△8四飛・5二玉型、そして青野流と横歩取りの今を網羅的に解説します。 本書を読めば「横歩取り」の町で道に迷うことはありません。 自信を持って横歩取りを指し、勝利するにあたり、大変役立つ一冊です。 |
【レビュー】 |
横歩取り△3三角戦法の定跡書。 横歩取り△3三角戦法は進化してきた。約50年前の内藤流(△8四飛+中住まい)から中原流(△8四飛+中原囲い)へ、そして中座流△8五飛戦法(△8五飛+中原囲い)でその進化はピークを迎えたに見えた。 ところが現在は、中座流も指されてはいるものの、内藤流のテーマ図が流行している。なぜか?一度は否定された戦型ではないのか?その疑問に答えるのが本書である。 本書は、横歩取り△3三角戦法の歴史を追いながら、最新流行形を解説した本である。 本書の内容をチャートを添えながら紹介していこう。 第1章は、横歩取りの歴史と変遷について。 横歩取りは江戸時代にはすでに指されており、特に△4五角戦法のような激しい戦型は研究書も出版されているが、△3三角戦法のようないったん流れを緩やかにして盤面全体の駒を使って戦う戦型が指されるようになったのは昭和中期。そこから飛の位置や玉型の工夫が行われるようになって現在に至る。 p6〜p11の「マップ」@〜Bは秀逸。超急戦、△3三角戦法などの各戦型の代表的な図面にショートコメントが添えられているが、△3三角戦法がグルリと一周して、元の内藤流が最新テーマになっているのがひと目でわかる。 ただし、完全に元の位置に戻ってきたわけではない。当時とは考え方が大きく異なっているし、玉型に工夫が加えられたことで、一段階上のステージに上がったと言えるだろう。トラックを一周してきたわけではなく、大きなラセン階段を回ってきたイメージである。残念ながら、これを書籍で表示するのは難しいかもしれない… 第2章は、△8五飛・4一玉型。いわゆる「ノーマル△8五飛」である。 ノーマル△8五飛は、いったん新山ア流に駆逐されかけているが、新手△6二角(p39第53図)によって互角に戻している。横歩取りの研究対象が広がっている現状では、すぐに潰されることはなさそうだ。 新山ア流がトップではなくなり、現在は▲6八玉型が最有力ポジションに再昇格してきた。△8五飛戦法の初期から指されている形だが、互いに力を出し合える戦型ということで、これからしばらく指されていくだろう。 また、セカンドポジションとして▲7七角も有力。「先手も玉を固めて堅さで対抗」という思想である。実はこちらも△8五飛戦法の比較的初期から指されていたが、あまり注目はされておらず、2003年にいったん消滅している。それが△5二玉型(第3章以降)への対策として復活し、ノーマル△8五飛に対する作戦としてもクローズアップ。2013年から流行している。 「ノーマル△8五飛を指す場合は、▲6八玉型と▲7七角型への対策を持っておく必要がある」(p99)とのこと。もちろん、アマチュアは全ての戦型への対策が必要である… ![]() 第3章は、△8五飛・5二玉型。 新山ア流が猛威を振るい、閉塞しかけていた横歩取りに風穴を開けたのが△5二玉型中原囲いだ。新山ア流の3筋攻めから遠ざかっているため、先手のさまざまな攻め筋が無効になったのが大きい。また、1手損にはなるが、先手の形次第で△4一玉型に戻すこともできるのだ。もちろん利点ばかりではなく、△3二金が浮いているという欠点がある。 先手の有力な作戦は、▲5八玉型(中住まい)と▲7七角。第2章でトップだった▲6八玉型は3筋攻め志向なので、△5二玉型に対向するには不向きなため、選択されない。 ▲7七角型が優秀なため、この戦型は減少傾向とのこと。先手も玉を固めやすいし、△8五飛型で後手から角交換すると▲7七同桂が飛に当たるのが痛いのだ。 ![]() 第4章は、△8四飛・5二玉型。現在最も流行している。 途中までは内藤流と同じなのだが、右金を△5一金と使うのが改良点。中原囲いの堅さを装備しているため、守備力が高い。また、最近現れた△2三銀と立つ筋との相性が良い。△8四飛と先に引いているため、第3章で強かった▲7七角型に対して相性が悪くないのも好まれている。 現在は、先手が駒組みをいろいろ工夫している状態である。 ![]() 第5章は、青野流。通常、先手の飛車は▲3四飛〜▲3六飛〜▲2六飛と形を整えて使うが、青野流は▲3四飛のまま▲3六歩から右桂の活用を図る。 青野流も△8五飛の登場から比較的初期に指されていた(と記憶している)が、当時はさほど流行しなかった。ここ数年で、後手の飛・玉の位置でさまざまなバリエーションが増えたため、それらを全て回避して先手の思惑範囲に進めることができる青野流が注目されているのである。 ![]() 一つの文章内で同じ言葉が重複して使われたり、「後手は○○としてきた」という“創元社”ライクな言い回しが気になる方もいるかもしれないが、それらは些末なこと。 この一冊で、現在プロで指されている横歩取りを一通り理解することができるだろう。全体像を把握できて、「現在プロはこういう思想で戦型を選んでいるのだな」ということがわかるという利点が非常に大きい。 横歩取りファンと、プロ将棋観戦ファンはチェックしておくべき一冊である。(2014Jun13) ※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): p66 ×「桂にヒモを付けつつ」 ○「桂でヒモを付けつつ」 |