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マイナビ将棋BOOKS すぐ勝てる!矢倉崩し |
[総合評価] B 難易度:★★★☆ 図面:見開き4枚 内容:(質)B(量)B レイアウト:A 解説:B 読みやすさ:B 中級〜有段向き |
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【著 者】 中川大輔 | ||||
【出版社】 マイナビ | ||||
発行:2013年3月 | ISBN:978-4-8399-4640-1 | |||
定価:1,575円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
対居飛車の右四間飛車の定跡書。 右四間飛車は、得意戦法を一つ持ちたい人にはウッテツケの戦法である。 〔利点〕 ・対振飛車、対居飛車の両方で使える。(相手が角道を止めていれば) ・ほぼ確実に仕掛けの権利を握ることができる。 ・仕掛けを見せつつ、玉を堅くすることもできる。 ∴初段くらいまでは圧倒的に勝ちやすく、有段〜高段でも十分に通用する。 〔欠点(?)〕 ・歩を使える筋が少なく、細かい攻めは難しい。 ・仕掛けるタイミングを正確に見極めるには、経験値が必要。 ・嫌われやすい(汗) 本書は、右四間飛車の対居飛車での戦い方を解説した本である。なお、対振飛車の右四間飛車は『すぐ勝てる!右四間飛車』を参照のこと。 一見、「右四間飛車は必勝戦法」であることを喧伝した本であるかのように見える。これまでの右四間を解説した本はそういうものが多かったし、「すぐ勝てる!」シリーズのタイトルからもそのように感じるだろう。実際、第1章・第2章の前半はそういう流れなのだが、全体を通して読んでいくと、「本書の本質は“右四間対策のヒントが分かる本”なのでは?」と感じた。 【各章の内容】(チャート付き) 第1章は、▲右四間飛車。後手が角道を止めて、ウソ矢倉を目指してきた場合に有効だ。 後手が4手目に角道を止めたら、すぐに▲4六歩と右四間を表明する。なお、この時点では後手が居飛車から振飛車かは分からないので、相手が振飛車で来ても右四間を指すことになる。 第1節は、素直にウソ矢倉を許すと先手があまり面白くないという例。 第2節は、△ウソ矢倉に対し、▲右四間の猛攻が炸裂する展開。後手が漫然と矢倉に組んでくる場合は、本節を参考にして攻め潰そう。なお、14手目の△3三銀が緩手で、急戦矢倉に少し心得がある相手なら△5三銀-4二銀型で受けてくるはず。その場合は、第2章-第2節を参考にして攻めよう。 第3節は、後手が飛先を伸ばし、すばやい引き角から8六での角交換を狙ってくる場合。角を交換してしまえば、右四間の攻めを緩和できるという考え方だ。本節での推奨は、▲9八銀の悪形に甘んじてでも角交換は避けること。この感覚は、知らなければ指せない。知っていても指せないかも?納得できれば指してみよう。逆に、後手としてはここに右四間封じのヒントがありそうなので、研究してみるとよいだろう。 第4節は、後手が雁木で右四間を受ける形。アマでは多いと思う。4筋から一気に攻め倒すのは難しいが、本節では左右の桂を跳ねる形や、1筋・3筋の突き捨てを絡める形が紹介されている。後手としては、飛先を決めない(▲7七角と交換すると、角交換時に▲7七同桂と活用される)とか、△6四歩を早めに突いておくとか、工夫ができそうだ。 第2章は、△右四間飛車。先手が矢倉を志向してきたとき(5手目▲6六歩)に有効な急戦だ。2手目△8四歩がマストとなるので、角換わり模様や▲中飛車への対策は別途必要。 第1節は、△右四間の概要。 第2節は、△右四間で持久戦になる展開。かつては△右四間は急戦が難しく、持久戦になりやすかった。また、急戦を受ける形(下記チャートの右上図)から▲4六銀〜▲5七銀上と対応するのが優秀で、右四間は互角以下の戦いしかできなかった。p81に「右四間難局の理由」がコンパクトにまとめられている。その状況を打開したのが、次節の「中川新手△4二金」である。 第3節は、△右四間の急戦。従来は無理と思われていたが、「中川新手△4二金」(2001年10月)により仕掛けが成立するようになった。なお、第3章の実戦譜4(vs飯塚戦)がこの形の第1号局である。△4二金の意味は、p85に書かれている。この展開については、『矢倉急戦道場 棒銀&右四間』(所司和晴,MYCOM,2002)の第2章-第2節では詳しく述べられていない展開(▲5八飛など)も解説されている。 第4節は、▲6七銀型。いわゆる「居玉雁木」で、△6六歩の取り込みに▲同銀直!(形の良い▲同銀右ではない)と取る。6七に金銀を置かないのが最大のポイントだ。後手にも用意の一手「宮田流△6五銀」があるが、一気に攻め潰すことはできず、いい勝負。 △右四間に困っている人は、この変化を研究しよう。本節の結論は「後手勝勢」になっているが、途中の手(例えばp135▲6七金右など)はマストではなく、変化の余地は十分ありそうだ。 また、第5節のように、右金を動かさずにすばやく雁木に組むのも有力。急所の▲7五歩などを知っていれば、潰されずに済むし、左桂を押さえ込めるのは大きい。第二次駒組みになりやすいので、作戦負けにならないように、互いに急所をつかんでおこう。 【総評】 本書は『すぐ勝てる!右四間飛車』(対△四間飛車の▲右四間)の続編。 今回も、全体的な文体が古風で、最近の棋書とは違う雰囲気が漂っている。やはり、『将棋大観』など昭和前半の棋書の影響を受けているようだ。なぜか、稀に常用漢字でない漢字も使われていたりする。 (剥の旧字体) (解説:三省堂ワードワイズ・ウェブ) まぁ、慣れてしまえばどうということはなく、わずかに読みづらいだけだ。 有力な指し方(例えば囲いを左美濃/カニ囲いのどちらにするか)をサラッと流しているのはマイナスポイント。流すなら流すで、せめて長所と短所を書いたり、どういう展開になるかは書いてほしい。 ただ、前作に見られた「理屈抜きでそういうものと覚えてほしい」というような、ぞんざいな解説はあまり見られなかった。また、あからさまなココセは少なく(成功例を示すための緩手はあるが)、個人的には改善されていると思う。 形勢判断はやや右四間側に肩入れしている一方、右四間側にとって結構大変そうな作戦も隠さず書いたのは大きなプラスポイント。有力な対策があることが知られていれば、逆に「右四間を受けてみよう」という人が多くなり、結果としてこの戦型が多く指され、戦型自体が愛されることにつながると思う。 「右四間必勝」的な空気を保ちながら、よく見るといい勝負という、ある意味で特殊な雰囲気をまとった一冊だ。(2013Jun21) ※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): p75 ×「△2二角が世に出られれば」 ○「△3三角が世に出られれば」 この時点では角は3三にいる。 ※形勢判断でちょっと引っかかったところを、激指8で検討してみました。参考程度に。 p34結果図はホントに先手優勢?△4四角とすると?→激指8六段の評価値=+520(先手有利) p40第5図▲9八銀の形勢判断は?→激指8六段の評価値=-21(互角) p86▲5七金…は「悪形、覇気がない」と断じられているが、右四間側の具体的な方針に解説はなく、案外有力かも?→激指8六段の評価値=-40(互角) p103結果図は後手勝勢とあるが、▲3八銀で受かりそうに見えるが?→激指8六段の評価値=-423(後手有利) 最善手は▲3八銀だが△3九金で先手苦戦。 |