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SATO Yasumitsu's SHOGI 佐藤康光の力戦振り飛車 |
[総合評価] B 難易度:★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 上級〜有段向き |
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【著 者】 佐藤康光 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:2010年1月 | ISBN:978-4-8399-3446-0 | |||
定価:1,575円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||
・参考棋譜=8局 |
【レビュー】 |
▲力戦振り飛車の指南書。 「角交換辞さず」の振飛車はプロでもかなり流行しており、ここ数年で解説書もいくつか出版された。ただ、先手中飛車のものを除くと、ほとんどが後手番での角交換振飛車だった。本書は、先手番の角交換振飛車を解説した、現段階では珍しい本とである。 第1章は先手番の1筋位取り・一手損角交換振飛車。後手番の9筋位取り作戦を先手番に応用したもので、微妙な違いがある。後手番では、先手の居飛穴をけん制した意味になるが、先手番では局面の主導権を握れる可能性を追求している。持久戦になると、1筋の位の価値が大きくなってきそう。というわけで、本章では、1筋位取りが生きないように後手が激しい展開に持ち込んだ乱戦定跡を解説している。「三枚換え定跡」や「△4五角対策」などは、知っていないとまず指せないので、この戦型をさすなら必修課題。 第2章は、先手番1筋位取り・一手損角交換振飛車の実戦解説。第1章の解説を補完している場合もある。 第3章は、先手番の角交換向飛車穴熊。いわゆる「レグスペ」と似ているが、先手番で、かつ手損なしで角交換振り穴を指そうという、かなり欲張りな作戦だ。本章では、相穴熊の例と、振り穴vs銀冠の例を紹介。定跡というよりは、展開の一例である。 第4章は、先手番角交換向飛車穴熊の実戦。特に3局目の対羽生戦がこの戦型の必修課題で、後手の構えが講座編では出てこなかった「平矢倉+4筋位取り」になっている。中終盤での筋違い角(△6五角などから4七〜3八をにらむライン)から△4六歩▲同歩△3八角成▲同金△4七歩の攻め筋が、この戦型特有の後手の必殺技となっており、佐藤も対策を示せていない。(※普通の角道を止めた振飛車穴熊では、後手が矢倉から4筋位取りに出ることはほぼないし、筋違い角のラインが通っていることも少ない。)△3八角成(角切り)を防ぐために▲4八金型で戦う方がよいかもしれない、と示唆されているが、その場合は△4六歩▲同歩△4七歩が金当たりになり、これはこれで悩ましい歩となりそうだ。 目次を見ると分かるように、本書の講座部分は全体の1/3程度で、残りの2/3は実戦譜となっている。「佐藤康光の将棋」シリーズの他の本と同様、実戦編で講座部分を補完している面もあるにはある。が、本書の場合は変則的な展開からの中盤のねじり合いにかなりのページ数が割かれており、実戦解説としてはかなり面白いと思うのだが、力戦振り飛車をさす上で参考になるかというと、やや疑問符がつく。 また、第3章の「先手番レグスペ」で、後手がデフォルトで△5四歩型を選んでいるのも気になるところ。早い段階で角交換する「後手番レグスペ」と違って、△6四歩型のときは▲6六歩と角道を止めて戦えることは佐藤も触れているが……(※△6四歩型なら後手は自然な居飛穴に組むのは難しい)。 2010年1月の出版なのに、載っている実戦は2007年ごろのものが多く、佐藤にとっては「終わった戦型」なのかな、と感じた。あまり類書がないのでBとしておくが、ちょっとCに近いイメージ。(2010Oct22) p38 ×「第26図からの指し手@」 ○「第26図からの指し手」 第26図からの分岐は解説されていない。 p197 ×「これで飛車の逃げ場所ない。」 ○「これで飛車の逃げ場所がない。」 |