|
【第1部−(1)
急戦矢倉】
▲6六歩を突かずに矢倉の駒組みを進め、右銀を早繰り銀風に▲4六銀まですばやく繰り出し、左銀を▲6六銀とすれば【第1図】のような攻撃形が完成。カニカニ銀に似ているが、中央突破を目指すよりは3筋方面の攻略を目指す。▲6六銀は△6四角のけん制。場合によっては左銀の攻撃参加もある。
後手の対策は△4四銀型、△4四歩型など複数あるが、どちらでも先手は同じ形から仕掛けることができるので、得意戦法にするにはもってこいの戦法だと思う。これとセットでカニカニ銀を覚えれば鬼に金棒だ。
ただし、自玉はとてつもなく薄いので、独特の感覚が必要になるし、攻めを切らさない技術も必要だ。たまに仕掛ける奇襲ではなく、徹底的にこれを指すくらいの覚悟を決めたい。
|
|
【第1部−(2) 3七銀戦法】
いわゆる「加藤流」とよばれる型。先に▲2六歩を突く旧型で、【第2図】の局面で▲3七銀と上がる。飛先不突き矢倉▲3七銀戦法から【第2図】に合流することもできるが、飛先不突き矢倉は▲2六歩をできるだけ後回しにしようとしているので、図の局面で突く人はごく少ない。ここからの変化は非常に多岐にわたる。
前半は、▲3五歩△同歩▲同角の歩交換があっさり成立した場合、▲3六銀から▲2六角(または▲4六角)として攻める。基本的な矢倉崩しの陣立てである。
有段者以上では、あっさり3筋歩交換を許さず、△6四角と出てくる人がほとんどだろう。その場合の「野獣流▲3七銀」は、以下の点が特徴。
(1)▲7九玉型(入城しない)→理由は簡単に書かれているが、割愛されている…
(2)▲3七銀型で(棒銀の余地を残しながら)1筋を詰め、その後▲4六銀-▲3七桂型で攻める。ただし飛車は▲2八飛、香は▲1九香のまま(現在主流の▲4六銀-3七桂は、▲3八飛+▲1八香を入れる)。
(3)角は▲5七角
|
|
【第1部−(3)
先後同型矢倉】
矢倉の先後同型というのは何種類かあるが、ここでは双方が加藤流▲3七銀の構えを取り、さらに双方が角による3筋(7筋)歩交換を果たした図。
互いに攻め合う激しい順になりやすい。本書に書かれているのはその一例。
後手の最善と思われる順が割愛されているのはちょっとどうかと……。
|
|
【第1部−(4)
スズメ刺し戦法】
クラシカルなスズメ刺し戦法。【第4図】から次に▲2五桂△2四銀▲1三桂成△同銀▲1四歩△同銀▲同香△同香▲同飛△1一香▲1三歩△同香▲同角成△同桂までが有段者必修の一本道手順。この後スズメ刺し大成功、となるのだが…、この形のスズメ刺しは後手の対策決定版が出ていたはず…。
また、p110で△2四銀▲2五歩△3三銀(▲2五歩を突かせてスズメ刺しを放棄させる)は後手2手損でダメとされているが、現代感覚ならこれは普通にあるのでは?
あとは、後手が7筋歩交換から△7四銀と進出してきた場合、△6四銀と早繰り銀できた場合、△6四歩と受けに重点を置いてきた場合が書かれている。
|
|
【第2部−(1) ウソ矢倉】
▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩から始まる矢倉をウソ矢倉という。△無理矢理矢倉ともいう。通常の矢倉は後手番での悩みが多いので、近年増えてきている形だ。普通に組ませると、逆に後手だけ飛先不突き矢倉になるため、それを阻止する意味で先手は引き角(▲7九角)などから角交換を狙う将棋が多い。
しかし野獣流では、後手には好きなように組ませ、【第5図】のように▲4七銀型から▲5五歩△同歩▲同角と角交換、その後▲5六銀−▲4七金(場合によっては▲5七銀も)と「中原流急戦矢倉」によく似た展開に持ち込む。要は、駒組み勝ちを狙うのでなく、「その構想は欲張りすぎですよ」と急戦で咎めにいくというわけだ。
やや無理気味の攻めでも仕掛けるという「野獣流」がよく現れた一文がこれ。ちょっと笑った(笑)。「チャンスと見れば打って出るのが野獣流の真骨頂。…大山康晴十五世名人がご覧になれば、『そんなに急いでどうするの』と悲しまれるかも。“受けの達人”大山先生は一度目のチャンスを必ず見送り、2、3度目も平然と見送ることが多かった。しかし猛進君には大山流の奥義はとても無理。攻めを捨て受けていたのでは、牙を抜かれた良獣?になってしまうから。」(p163-164)
この章は、後手の指し手に非常に不満あり。後手は飛先交換のためとはいえ、p171第16図の△2二玉は大悪手なのでは?角筋を生かして攻められてるし、結局飛先交換もできない。これを本筋として解説しているのは疑問符。
p175第19図も同様。「△2一玉は不急」とあり、深く掘り下げられていないが、本譜△8四歩よりマシでは?結局△8四歩〜△8五歩は生かせていないし。
|
|
【第2部−(2)
本格的相矢倉】
本格的矢倉といってもいろいろあるが、いわゆる「先後同型▲4七銀−△6三銀型」。20〜30年ほど前によく指されたが、現在でもたまに見かける。端歩の関係などで仕掛けが変わってくるが、基本は
(1)▲4五歩△同歩▲同桂△4四銀▲4六銀
(2)▲4五歩△同歩▲3五歩△同歩▲同角
の2つの筋。
本章では、端歩の突き合いがない形と、互いに端を詰めた形を解説している。▲1七角と引く余地があるかどうかで仕掛けも変わるので注意が必要だ。
|
|
【第2部−(3) 角にらみ合い型】
【第3図】から▲4六角△6四角と角をにらみ合い、そのまま▲8八玉△2二玉まで入城した形。脇システムと似ているが、双方の3筋(7筋)の歩が切れて2歩ずつ持っているため、非常に激しい攻め合いの変化になりがち。
代表的な展開は、先手が▲2六銀と棒銀に出た瞬間、△4六角▲同歩△4七角▲1五歩でどうか。これも脇システムに似ているが、持ち歩で違いが出そう。
ただ、端を破ったあと「△1一歩(の受け)は▲2一飛をうっかり」(p207)うっかりって何よ…定跡書なのに「うっかり」って何なのよ…
|