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富士見ファンタジア文庫
み 2-1-1 MA棋してる!(1) |
[総合評価] B? 難易度:★ 絵:A ストーリー:B 構成:A キャラ:A |
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【著 者】 三浦良 【イラスト】 ぽぽるちゃ | ||||
【出版社】 富士見書房 | ||||
発行:2008年10月 | ISBN:978-4-8291-3338-5 | |||
定価:651円(5%税込) | 301ページ/15cm |
【本の内容】 |
・巻頭カラーイラスト=4p/本文挿入イラスト=10p ・プロローグ=7p 第1章 邂逅、異世界の住人=97p 第2章 発動、将棋魔法=73p 第3章 激突、異種魔法=65p 第4章 暴走、時空の穴=41p ・エピローグ=4p ・あとがき=10p ◆内容紹介 魔法のルールは自分次第! 将棋大好き少女・奏、将棋で参戦!? 異界グノスから落ちてきたオカメインコ(実は魔法学院生ソフィー)と魔法の杖を拾った小学5年生・奏。なし崩し的にグノスの王位継承権争いに巻き込まれた彼女がとっさに発動した魔法、それは「将棋魔法」だった! ※ライトノベルです。 (シアワセノウソツキ−ぽぽるちゃHP) |
【レビュー】 |
“将棋魔法”を使う魔法少女が主人公のライトノベル。 初めに言っておこう、思っていたよりもずっと面白かった。 〔世界観〕 魔法を中心とした世界「グノス」にて、王位継承争奪戦が始まった。グノスでは王位は世襲ではなく、「ただ王にふさわしい徳を備えた者」が王として選ばれる。グノスとこの世界は、「時空の穴」によってつながることがある。グノスとこの世界は社会構成に大きな違いはないが、“異国”なので一部の社会常識がずれている。たとえば、グノスでは塩は国家の専売であり、“塩賊”といわれる闇商人が存在する。 〔アイテム〕 魔法の杖…指揮棒のような、あまり飾り気のない白い棒。魔法を使うには、この杖が必須となる。こする(振動を与える)ことでスタンバイ状態になる。設定をリセットし(今までの魔法は使えなくなる)、使用者が思い浮かべた新たな設定を加えることで新しいオリジナル魔法が使えるようになる。ただし、魔法のルールは自分で決められるが、そのルールには後々まで従わなければならない。また、思い浮かべたものによってさまざまな制限がかかることがある。 〔登場人物〕 奏はもちろんのこと、ややウザ系のソフィーも、超クールな咲も、基本的に憎めないキャラ。 ・奏(かな)…主人公。小学5年生の女の子。性格は比較的まじめで、コツコツタイプ。小学5年にしては小柄。髪型は赤い大きなリボンとショートポニーテール。べったら漬けが好物。ソフィーをグノスに帰してあげたいという思いから、“将棋魔法”を使えるようになった。父の影響から将棋を覚えた。どちらかといえば守りの棋風のようだ。自分は将棋が楽しいと思っているが、「将棋って子どもにはそんなに人気ないんだよ」と、将棋の魅力を人に伝えることが難しいことも承知している。 ・ソフィー…時空の穴から落ちてきたオカメインコ。正体はグノス魔法学院の学生。なぜこの世界に落ちてきたかは不明。金にがめつく、さらに騒がしい。いろいろな知識を持っていて、この世界のことも本を読めばかなり解読できてしまうが、もともと魔法は使えない。一応、グノスに帰りたがっているようだ。 ・咲(さき)…謎の美少女。クールで口数も少なく、無愛想。ツン。なぜか奏たちを魔法で攻撃してくる。髪型はサラサラ黒髪ロングヘア。魔法を使うときは猫耳になる。 ・ノイア…咲と行動をともにしている黒猫。ある程度の魔法を使える。 ・奏の父…棋士(棋聖)で、タイトルを数年保持し続けているらしい。口数は少ないが奏がちゃんと覚悟を決めている場合はあまり口出しせずに認める。 ・奏の母…史学家で、語尾を伸ばす癖があり、やや天然気味。 〔魔法〕 ・奏の魔法…ベースは将棋。「新規…対局」で盤の升目が展開し、自分を玉に見立てて、まわりに19個の球が配置される。棋譜をスペル(呪文)として詠唱することで、球が移動する。球は一つずつしか動かせない。ターン制ではないので棋譜は連続で詠唱できるが、多少時間がかかる。駒が連結すると防御力がアップ。さらに「穴熊」などを完成させると防御力が大幅アップする。また、盤を2つ出すことはできないが、部分図を出すことはできる。「投了」で盤や球をしまえる。「5一ひー!」がよかったです(笑) ・咲の魔法…ベースはC++(プログラミング言語)。たとえば「インクルード <MIOストリーム> スタンダード::Mアウト << 直射 フラッシュ」と唱えると、杖の先から魔法弾が発射される。 将棋関係の推理小説や時代小説はそれなりに数があるものの、将棋が中心に据えられたライトノベルは、おそらく史上初。あまりライトノベルを読んだことない人(ていうか私も初めて読みましたが)には、ちょっと表紙で引くかもしれないが、ライトノベルとはこういうものです。 合計14pのイラスト(可愛い…)が挿入されているので、それで大体のキャラクター像をつかみ、あとは読みながら頭の中でマンガかアニメーションを動かしながら読んでいくとよいと思う。私はそうしてました。ボイスも勝手につけてました(笑) ストーリーは、最初に奏とソフィーが出会い、お互いの認識のずれ・世界観のずれをすり合わせていくところから始まる。出版社の内容紹介には「なし崩し的にグノスの王位継承権争いに巻き込まれた彼女がとっさに発動した魔法、それは「将棋魔法」だった!」とあるが、実際は順番が違っていて、(1)咲に魔法で攻撃される→(2)自衛のため、奏が魔法を発動させることをソフィーに提案される→(3)思いついたのが「将棋魔法」→(4)何度か戦ううちに、誤解が解ける→(5)実はソフィーとノイアは…→(6)ソフィーはグノスに帰れるか? という流れ。物語としてはこの1巻の中でちゃんと出来上がっていて、十分面白かった。その上で続きも気になるので、第2巻もきっと買うと思います。 作者の棋力は「将棋ソフトに二枚落ちで勝てないくらいです」とのこと。まだまだ強いとはいえないが、十分「将棋好き」のレベルだと思う。作中では、奏にいろんな将棋用語や将棋の考え方を使わせているが、将棋を知らない人にも分かるように説明されているし、将棋ファンにもさらっと受け入れられる感じである。 例:p34 「(棒銀覚えてそればっかり使っている時の感じがする) 棒銀戦法とは飛車の先に銀を持ってくる戦法で、覚えやすい上に使い勝手が良いので、初心者に好まれる戦法だ。対戦相手が将棋のルールを覚えたばかりというのなら、まずこれで勝てる。 だけど、棒銀は攻めの戦法だ。守りの構えもきっちり組み上げられないと、不意打ちを喰らってあっさり負ける。どれだけ相手の駒をとって相手の陣地を荒らそうと、こちらの玉が詰んだら負けというのが将棋なのだ。 ソフィーの説明は、どうも守りの方を疎かにしている気がしてならない。」 ただし、ところどころに誤用(「将棋を打つ」など。ただし「指す」になっている箇所もある)や棋譜の間違い(味方の駒(球)が手前にあるはずなのに「3二銀」など)が見受けられるが、“ご愛嬌”レベルであろう。 タイトルの「MA棋してる!」は「マギしてる!」と読む。これは作品中ではまだ明らかにされてないが、将棋用語で「マギれる」「マギれてる」という言葉があり、これに魔法の「MA」と将棋の「棋」をかけたものだと思う。(ただし、将棋に「マギしてる」という言葉はありません(笑))ひょっとしたらもっと深い意味があるかも? 一応評価はBとしたが、個人的にはかなりAに近いと思っている。将棋のことをあまり知らなくても楽しく読めるが、多少人を選ぶとは思う。将棋ファンにとっては新しい世界だと思うので、ぜひ一度は体験してみてほしい。 ただし、30代♂が電車の中で読むのはちょっと恥ずかしいので、カバーをかけましょう。わたしはカバーを取ってました(汗)。(2008Nov22) |
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