一二三の玉手箱 | [総合評価] B? 難易度:★★★☆ (自戦記部) 図面:随時 内容:(質)B(量)A? レイアウト:B 解説:B 読みやすさ:A? 加藤一二三ファン向き |
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【著 者】 加藤一二三 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:2007年1月 | ISBN:978-4-8399-2277-1 | |||
定価:1,575円(5%税込) | 222ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||
参考資料:「近代将棋」ナイタイ出版/「NHK将棋講座」日本放送出版教会/「将棋年鑑」日本将棋連盟
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
加藤一二三九段のトリビュート本。といっても9割は本人自身の文章で、どちらかといえばエッセイ本に近いかもしれない。 巻頭特集の「ザ・加藤一二三伝説」は、NECビッグローブ配信の将棋ニュースプラス「ザ・加藤一二三伝説」を文章化したもの。短いエピソードに、長い「本人の証言」を追加して紹介。人によっては奇行とも受け取れる加藤一二三の行動が、実は(本人的には)実に論理性に満ちたものであったことが分かる!(笑)少なくとも本人は信念を貫いているのである。 第1回 対局中に滝を止めさせた伝説 第2回 勝手に電気ストーブ伝説 第3回 食事は必ずうな重伝説 第4回 「あと何分?」伝説 第5回 長いネクタイ伝説 第6回 対局中に聖歌伝説 第7回 板チョコ大好き伝説 第8回 一手に7時間伝説 第9回 棒銀大好き伝説 第10回 将棋盤の位置にはこだわる伝説 第11回 空ぜき伝説 最終回 加藤一二三自身こそが真の伝説 個人的にはこの特集が一番面白かった。できれば、「先後同形の局面でも相手側から眺める伝説」も欲しかったなぁ(笑) 第1章は、加藤の名局、というよりは加藤の思い出の対局を、部分的な自戦記+エッセイで紹介。解説の仕方はさまざまで、第3章に棋譜が添付されているもの、図面付きで解説されているもの、符号で流れのみを紹介するものなどがある。棋譜付きのものを紹介しておくと、 (1)1968/12/03 vs大山康晴,△四間飛車▲5筋位取り,第7期十段戦第4局 (2)1969/01/06 vs大山康晴,▲四間飛車△右6四銀,第7期十段戦第7局 (3)1979/02/07 vs中原誠,△中飛車▲3八飛,第28期王将戦第5局 (4)1982/06/01 vs中原誠,相矢倉▲スズメ刺し△棒銀,第40期名人戦第5局 (5)1982/07/30 vs中原誠,相矢倉,第40期名人戦第8局千日手指し直し (6)1995/03/03 vs島朗,相矢倉▲早囲い,第53期A級順位戦 (7)1996/10/15 vs中原誠,相掛かり▲ヒネリ飛車,第54期A級順位戦 (8)1999/12/24 vs郷田真隆,相矢倉▲3七銀,第58期A級順位戦 (9)2001/03/02 vs森下卓,相矢倉,第59期A級順位戦 (10)2002/11/01 vs近藤正和,▲ゴキゲン中飛車,第74期棋聖戦 (11)2005/11/30 vs村山慈明,△一手損角換わり,第54期王座戦 (12)2005/12/07 vs前田祐司,▲四間飛車△棒銀,第19期竜王戦 (13)2006/03/02 vs佐藤和俊,△四間飛車▲右4六銀,第56回NHK杯戦 ※vs櫛田陽一,vs室岡克彦は『加藤流振り飛車撃破』(加藤一二三,MYCOM,2003.09)に自戦記がある。 ※(4)(5)のvs中原2局は『加藤流最新棒銀の極意』(加藤一二三,MYCOM,2003.11)に自戦記がある。 できれば登場した将棋にはすべて棋譜を付けてほしかった。エッセイの中で、「絵画や音楽と違って、将棋の名局のすばらしさを知ってもらうには、自戦記や棋譜解説が必要である」という持論が繰り返し出てくるだけに、かなり残念。特に「(第16期十段戦の)第6局は名局中の名局である。」(p103)と書かれていながら、棋譜も自戦記もないのはとても残念だった。加藤がせっかく熱い解説をしていても、魅力半減である。 また、第1章の本文中には第3章に棋譜があるかどうか書かれていないし、第3章の棋譜の方にも第1章のどこに該当するのか書かれていない。私の場合は、第3章の棋譜をすべて並べてから第1章を読んだので、少しは理解しやすかったようだ。 第2章はエッセイ。本当に、「書きたいことを好きなだけ書いている」という感じだ。たびたび見られるキーワードは「精神の充実」で、加藤の行動はすべてこのためにあるのだと思えば、少しは理解できる。また第2章の大半(7〜8割)はキリスト教とミサとモーツァルトの話。 「本書を読めば、今まで知らなかった加藤一二三九段の生の姿が感じられると思います。」(内容紹介)は確かにその通りで、「僕らのヒフミン」・加藤一二三に少しでも近づきたい人は必読で読み応えたっぷり。ただ、それ以外の人には……どうかなぁ。全部棋譜付きだったなら、確実に好著といえたんだけど。(2010Feb13) |
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