東大将棋ブックス 矢倉道場 第五巻 森下システム |
[総合評価] A 難易度:★★★★☆ 図面:見開き6枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:B 有段向き |
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【著 者】 所司和晴 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:2003年9月 | ISBN:4-8399-1209-2 | |||
定価:1,260(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||||||
◆内容紹介(MYCOMホームページより) |
【レビュー】 |
矢倉▲森下システムvs△スズメ刺しの定跡書。 森下システムは、淡路や青野がポツポツ指していた▲6八角作戦を、約20年前に森下卓が連採してシステム化し、大流行した戦法である。先手の攻撃形を決めずに玉を早く囲い、後手の動きに対応して戦い方を変えていく思想で、プロで高い先手勝率を誇った時期がある。 ただし、玉を早く囲うのがアダになった。当時、先手番の戦法としてはすでに廃れていたスズメ刺しが、▲森下システムに対して通用することが判明し、森下システムは「消えた戦法」になった。 しかし、△スズメ刺しに対し、早めに中央から動く「深浦流」が1997年2月に登場し、先手も十分に戦えることが分かると、森下システムは息を吹き返した。 本書は、▲森下システムvs△スズメ刺し(またはスズメ刺し模様)について、(1)深浦流の戦い、(2)その他の攻め合いを目指す戦い、を詳しく解説したものである。 各章の内容をチャートを交えながら簡単に紹介していこう。 第1章は、矢倉の序盤変化の概要。チャート(下図)にあるように、個別に章や節が立っている変化は本章では紹介のみにとどめ、それ以外の変化については少し詳しく書かれている。▲森下システム以外の展開についても少し触れている。 第2章は、いわゆる「深浦流」。先手が玉を入城せずに、▲7九玉型のまま▲3七銀〜▲4六銀を急ぐのが、本命の第1節の形。中央から素早く動いて△5二金右型を咎めようというのだ。また、第2節は▲8八銀といったん端を受け止めておいて、右桂を▲3七桂と活用しておいてく形。第3節は、先に▲3五歩とちょっかいを出しておく形だ。 本章については、『佐藤康光の矢倉』(佐藤康光,日本将棋連盟発行,MYCOM販売,2011.03)で最新の変化が解説されているが、基本となる変化はほとんど本章に書かれている。 第3章は、後手が深浦流を警戒してスズメ刺しに行かず、△7三桂と活用しておく形。先手は▲4六銀-3七桂型に組むのが第1節、▲2六歩〜▲2五歩から▲3五歩の仕掛けを狙っていくのが第2節だ。 第4章は、▲8八玉と入城してスズメ刺しの仕掛けを真っ向から受ける形。先手は飛車先を伸ばしておいて、終盤の反撃を作っておく。受けに自信のある人向けだ。 第5章は、第3章の類型で、後手が△7三桂と活用しておく手に対し、▲3八飛と寄っておく。後手は△4三金右と矢倉を作っておくか、△6四角と先手の攻めをけん制する。 第6章も、第3章・第5章と似た形で、後手はスズメ刺しに行かず△7三桂と活用しておく。先手は▲3五歩と素早く歩交換を狙う。 『佐藤康光の矢倉』で深浦流が気になった人は、本書の変化をしっかり学習しておきたい。もちろん、森下システムを主力にしている人には必須アイテムだ。森下システムの進化は比較的ゆっくりしているので、出版から8年経った現在でも十分参考になると思う。(というか、他に参考になる本が少ない)(2011May03) |