第64期将棋名人戦七番勝負 | [総合評価] C 難易度:★★★☆ 図面:見開き2〜3枚 内容:(質)B(量)C レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 中級以上向き |
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【編】 毎日新聞社 | ||||
【出版社】 毎日新聞社 | ||||
発行:2006年8月 | ISBN:4-620-50484-X | |||
定価:1,890円(5%税込) | 215ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
【名人】森内俊之 (防衛) 【挑戦者】谷川浩司
・第64期A級順位戦星取表=1p |
【レビュー】 |
名人戦の観戦記。 A級順位戦で8勝1敗同士のプレーオフを制し、挑戦者として登場したのは44歳の谷川。前年度(平成16年度)、プロ棋士になって初の年度負け越しを喫したが、平成17年度はかなり復活。「鋼鉄の受け」・森内(本書にはそう書いてある。一般的には「鉄板の受け」か?)vs「光速の攻め」・谷川(これも一般的には「光速の寄せ」だと思う)という、「最強の盾vs最強の矛」の対決となった。 第1局は、先手好調と思われた局面で、森内が△6三銀(5四から引いた)という絶妙な受けを魅せて制勝。また、終盤の実質的なトドメが自陣への銀の並べ打ちというのも森内らしい一局だった。 第2局はゴキゲン中飛車の超急戦。「近代将棋」誌に載っていた若手棋士(確か村山慈明だったか)の研究を「見てきた」のが前提となっている戦型。もちろん、互いにその研究の先を行こうというのである。封じ手で谷川が指した△5四香は結果的に疑問手となり、その後精彩を欠いた谷川を森内が押し切った。 第3局は相矢倉。▲7六歩△3四歩▲6六歩からだったのでやや奇異な感じだが、△8四歩ですぐに通常形に戻った。互いに急所の△6九角、▲4一角を打ち合ったが谷川に分があった。 第4局は△藤井システムに▲3五歩から超急戦を仕掛ける形。3年前の第61期第3局でも現れた形だ。玉から2枚の金が離れていく森内の受けは好手となり、美濃囲いをがっちり固める谷川の金打ちは悪手になるというのだから将棋は難しい。最後は、谷川陣が超堅陣ながら、森内が鉄板の受けを見せて寄せ合いのないまま投了。 第5局は変則的な矢倉から、森内が「放っておけば銀矢倉に組みますよ」という、さらに変則的な駒組みを見せるが、チャンスと見た谷川が機敏の仕掛けから押し切った。谷川の全盛期を見るような将棋だったと思う。 第6局は再び△一手損角換わり、ただし今度は相腰掛銀。中盤で、一見自陣をバラバラにしてしまうような▲7七金と上がった手が見事だった。 全体的には森内が受けの威力を発揮して、谷川の矛をつぶした印象だった。これで森内は名人通算四期を獲得、永世名人資格へあと一期と迫った。 今期はいわゆる「名人戦問題」(Wikipedia)の最中だったため、観戦記中にもこのことに触れる内容が何度も出てくる。ただ、「読者は名人戦問題をある程度知っている」ことを前提に書かれているため、名人戦問題をあまり知らない人が読んだり、また後年になってから読んだ場合は結構意味不明な部分が多い。せめて付録の「名人戦70年の歴史」で、名人戦問題はどういう問題なのか触れてもよかったかと思う(一応の合意がされたのが11月なので難しいか…?) なお、今期からは目次が少し充実し、各譜のサブタイトルも書かれるようになった。(2008Sep19) ※ところで第60期で「名人戦60年史」をやったばっかりなのに、どうして早くも「70年の歴史」なんだろう。 |