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第45期王将戦七番勝負 付録:[第44期王将戦/全七局][王将戦物語] |
[総合評価] C 難易度:★★★☆ 図面:見開き1枚 内容:(質)A(量)C レイアウト:A 解説:B 読みやすさ:A 中級以上向き |
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【編 者】 毎日新聞社 | ||||
【出版社】 毎日新聞社 | ||||
発行:1996年4月 | ISBN:4-620-31114-6 | |||
定価:1,262円 | 187ページ/19cm |
【本の内容】 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第45期:【王将】谷川浩司 【挑戦者】羽生善治六冠 (奪取)
・盤側の記(加古明光)9p
・王将戦物語(加古明光)=10p |
【レビュー】 |
第45期王将戦の観戦記+第44期王将戦の棋譜解説の本。 王将戦は名人戦や竜王戦と違って、定期的な観戦記出版はしていない。しかしこの第45期では、羽生が谷川を破って史上初めて七冠を達成したので、特別に出版されている。羽生の七冠達成は大きく報じられたので、ご記憶の方も多いだろう。 しかもこの七冠達成劇は非常にドラマティックだった。第45期だけ見れば、羽生がすんなり達成したようだが、実は前年の第44期も羽生は六冠を持って王将戦に挑戦している。それを神戸・淡路島震災で被災した直後の谷川が4-3で退けたのだ。ここだけでも劇的だが、なんと羽生は、六冠すべてを防衛し、しかも再び王将戦の挑戦者となって戻ってきたのだから凄まじい。2度目はすんなりストレートで七冠達成。 本書では、七冠達成の第45期の4局を観戦記付きで紹介。さらに七冠達成の伏線となった第44期の7局を、プロ棋士の解説付きで紹介している。「第45期王将戦」の本であるにもかかわらず、オモテ表紙は羽生のアップ。谷川の写真はウラ表紙に、半分ほどの大きさで載せられている。この扱い、谷川の心中いかほどのものか。ちなみに名人戦の本では、対局者二人の扱いはほぼ同等である。 王将戦は毎日新聞系のスポニチの主催なので、観戦記者も名人戦でおなじみの井口氏が入っている。個人的には、井口氏は毎日の記者陣の中でも良質な観戦記を書く人だと思う。井口氏の観戦記の一節→「外は雨になった、と思うと薄日がさしてきた。そのとき、取材本部のモニターテレビの画面で不思議なことが起こった。上方の羽生の駒が金色に輝き、下方の谷川の駒が銀色に光っているのだ。対局室に入り込む光線の工合からのようだが、金銀の駒が対峙する神秘的な盤面に、しばし見とれてしまった。」(32p,第2局の第3図)わたしはオカルトは信じない派だが、結果を知っているだけにこの一節には引き込まれてしまった。 社会現象にまでなった“七冠達成”だが、本書の構成自体は名人戦観戦記の本と同じように比較的淡々としていて、特に七冠特集というわけではない。七冠関係の読み物としては普通の出来だが、しっかりした棋譜解説が読めるので、興味のある方はご一読を。(2004Feb06) |