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一手決断・将棋戦法(3) 谷川流 速攻矢倉 |
[総合評価] C 難易度:★★★☆ 図面:見開き4枚 内容:(質)B(量)C レイアウト:A 解説:B+ 読みやすさ:A 中級〜上級向き |
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【著 者】 谷川浩司 | ||||
【出版社】 筑摩書房 | ||||
発行:1986年1月 | 0376-67003-4604 ISBN:4-480-67003-3 |
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定価:780円 | 206ページ/18cm |
【本の内容】 | ||||||||||||
◆内容紹介(「はじめに」より抜粋) |
【レビュー】 |
矢倉▲4六銀戦法の解説書。 本書の「一手決断シリーズ」は、著者の実戦をベースに特定の戦法を詳しく解説していく。本書の場合は谷川の実戦5局。一冊で5局というのはかなり少なめであるが、その分だけ一局ずつ濃密に解説していこうというコンセプトである。 出版当時は、飛先不突き矢倉が指し始められたころで、まだ「好みで使い分ける」という状態だった。よって、本書の▲4六銀戦法は飛先不突き矢倉ではなく、「旧型の24手組」からの派生。現代の形とは途中の手順が異なっており、後手の受け方や反撃筋も違ってくる。 ただし、▲4六銀-3七桂の基本的な攻撃筋はすでにできあがっているので、この戦法を理解するための一助には十分なりそうだ。 各章の内容を、図面を添えて紹介していこう。 第1章は、△6三銀-△7三桂型。1984年6月8日の▲谷川△桐山戦がベース。 現代とは違うところは、 ・5手目は▲7七銀が当たり前。(▲6六歩は変化球扱い) ・7手目で▲2六歩。 ・24手目で「矢倉二十四手組」〔左下図〕になり、ここまではだれが指しても同じ。25手目の選択肢が▲1六歩、▲6七金右、▲4六角、▲3七銀、▲3七桂、▲2五歩、▲6八角など、多岐にわたる。 ・本章では、二十四手組から▲6七金右△4三金右▲3七銀△8五歩▲4六銀〔中下図〕。現代なら、▲3七銀には△6四角がほぼマストで、玉を入城させてから▲4六銀とする。本章では△8五歩なので、入城前に▲4六銀と上がれる。 ・本章では後手の受け方は△6三銀-△7三桂〔右下図〕。バランス重視の形だが、現代では▲4六銀-▲3七桂に対しては消極的とされてあまり採用されない。 |
とはいえ、後手からの△6五歩が気になるので、先手は5筋で歩を交換した後に、1筋を突かずに▲3五歩と仕掛けていく。 本局は、仕掛けが成功しているものの、終盤は入玉された状態で寄せているので、アマ向けの教材としてはイマイチな感じがする。 第2章は、△5三銀型。▲谷川△米長戦(2局とも)がベース。 ・当時は△5三銀型の受け形〔左下図〕は、比較的新しい形だったらしい。 ・△6四角で先手を牽制し、後手の右銀を玉側に近づけていくのは、現代の形に近い。ただし、△6四角のタイミングは▲4六銀と出られてから(後手の立場では、△7四歩と角の退路を確保してから)で、現代と異なる。 ・△6四歩〔右下図〕は後手からの攻め味を見せたもの。角筋を利かせたままの方が先手は仕掛けにくいが、後手はただ待つだけの将棋になるのを避けたと思われる。先手は△6四歩の瞬間に仕掛けたいが、第1章よりも後手の受け力が強いので、攻めが切れないように1筋を絡める。 第3章では、第1章・第2章の内容をベースに、他の実戦2局を解説。 1局目は、△6四銀戦法vs▲4七銀-3七桂型で、▲谷川△青野戦。このころは、後手が4六銀戦法を採用することもあった。第1章では△6三銀型で仕掛けられていたが、先後の1手の違いを利用して受けようというもの。 p143で、後手からの気になる手に対して、先手側の解が書かれていない… 2局目は、「△5三銀型の新しい形」。右銀を△4二銀と引き、▲2五桂に△3三桂とぶつけていく。攻めと桂と守りの桂の交換で玉が薄くなるのを右銀でカバーし、手にした桂で反撃を狙う。似た筋は現代でも見られる。 全体的な分量の少なさと、時代的な考え方の違いが気になるところ。現代矢倉の本を何冊か読んだ上で、参考資料の一つとして読むなら、考え方の幅を広げるという意味では、損のない一冊だと思う。(2017Oct14) |