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将棋最強ブックス 明快相振り飛車 勝てる!戦法集 |
[総合評価] B 難易度:★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)B(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 中級〜上級向き |
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【著 者】 鈴木大介 | ||||
【出版社】 創元社 | ||||
発行:2010年4月 | ISBN:978-4-422-75131-3 | |||
定価:1,365円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
相振飛車の指南書。 現在、相振飛車で主流の囲いは美濃囲いである。そして飛車の位置は左側ほど良いとされる。これは、多くの棋士の普及によるもの…じゃなくて(笑)、相振飛車の実戦と研究が蓄積されることにより、囲いの優秀性や相性が明らかになってきたことによる。もちろん、「向飛車+美濃」が万能というわけではなく、相手の出方次第で変わってくる。 本書では、自陣の囲い別に戦い方のコツを指南していく本である。扱う囲いは美濃、矢倉、穴熊の3つで、金無双はほぼノータッチ。なお、敵陣の囲いは美濃囲い(高美濃を含む)に固定してある。 また、本書で特徴的なのが、▲6七銀型と▲5七銀型という左銀の使い方の違いを、各囲い別にスポットライトを当てているところ。基本的には、以下のような違いがある。 ▲6七銀型: バランス型、やや攻撃重視。▲5六銀or▲7六銀が主な進路。先に攻められたときは中途半端な駒になる可能性がある。 ▲5七銀型: 守備型、攻めさせて駒を貯めてカウンターを狙う。先攻するのはやや難しい。 各章の内容を説明していこう。 第1章は、相振飛車のイントロダクション。駒組みの理想形と、囲いの特徴を紹介。また、特に左銀の活用(▲6七銀or▲5七銀)に着目している。 第2章〜第4章は、囲い別に初手から理想形までの手順とその後の展開を解説。各戦型の基本図から後手の対応によって2つの展開を用意しており(たまに3つ)、さらに中盤で2〜3に分岐する。 第2章は美濃囲い。(以下サブタイトルはわたしが勝手に付けました) ・美濃囲い▲6七銀型三間飛車(vs△5三銀型向飛車+美濃囲い) ※攻撃重視 ├石田流に組んで後手の高美濃をつぶす → (1)(2) └▲7六銀-▲6八飛-▲8六角-▲7七桂の理想形 → (1)(2) ・美濃囲い▲5七銀型三間飛車(▲石田流vs△向飛車+美濃) ※厚み、駒組み勝ち重視 ├後手、攻撃重視の△2五歩 └後手、先手の駒組みを押さえる△3五歩 第3章は矢倉。 ・矢倉▲6七銀型向かい飛車(vs△向飛車+美濃) ※▲3七銀型を作ってから飛車を振る指し方 ├入城を急ぐ△8二玉 └位を取らせない△6四歩 ・矢倉▲5七銀型三間飛車(vs△向飛車+美濃) ├すぐに攻める△4五歩 └△3五歩から一歩交換して攻め味を広げる → (1)(2)(3) 第4章は穴熊。 ・穴熊▲6七銀型三間飛車(vs△三間飛車+美濃) ※先手危険 ・穴熊先手6七銀型向かい飛車(1)(vs△三間飛車+美濃) ※やはり先手危険 ・穴熊先手6七銀型向かい飛車(2)(vs△向飛車+美濃) ※先攻されると▲6七銀が中途半端 ├駒組み勝ちを目指す△6四歩 └先攻を目指す△1三桂 ・穴熊▲5七銀型向かい飛車(vs△向飛車+美濃) ※穴熊+▲5七銀型は相性が良い ├後手の速攻は難しい ├持久戦なら先手リードの展開 └第3の手段△4四歩 基本的には、本書の手順を暗記するのはあまり意味がない。解説全体を読み通して、「コツ」を習得するのがよい。本書では以下のようなコツを習得できる。 ・左銀の活用の思想 ・端歩を受ける目安 ・攻めるときに▲6五歩〜▲7五歩と突き捨てるリズム ・後手の9筋攻め(▲9七角に対する角頭攻め)に対する反撃法 ((1)角を取らせる、(2)▲8六角△9六歩▲9五歩で端を逆襲、(3)▲8六角△9六歩で手番をもらう) ・p90「「すぐ戦いが起こったとして、玉がこの場所にいてもいいのか」くらいは、いつでも自問自答しておく必要がある。」 ・p104「「あの駒が入ったらこんな反撃がある」というような、前向きな受けが重要なのである」 ・三間飛車相手に穴熊に組むのは危険 以前に同じ著者・出版社から出ていた『相振り飛車の定跡』(鈴木大介,創元社,2002)に比べて、ポイントが明確になっていて、「明快」の名に恥じない出来に仕上がっていると思う。特に、序盤に左銀の位置を漫然と指していて、よく分からないまま作戦負けになっていた人は、本書をよく読みこむといい。ただ、「勝てる!戦法集」というのとはちょっと違うかな、と。(2010May05) ※本書から創元社の棋書は「将棋最強ブックス」という新シリーズになった。従来の「スーパー将棋講座」(2004〜2009)と見た目の変化(装丁、中身とも)はほとんどない。背表紙だけは大きく違っている。復習問題の解説部最下段に本文解説の参照ページが付いたのが新しいかな、と思ったが、確認してみたら前シリーズでも後半の方には付いていた。単に「シリーズが長くなりすぎると書店に置いてもらいにくくなるから」というヤツだろう。 |